40 / 41
[アリッサの奮闘記]青のカーバンクル
しおりを挟む
「モルセラ卿は何故、今回の討伐に同行を?」
副隊長の脇でアリッサ達の剣技に見惚れていた隊員がモルセラに話しかけた。
「司法省からの要請がきちんと遂行されているかの確認を陛下から命じられましたので」
その言葉だけでモルセラがただの護衛官ではない事が判明し、隊員達は改めてモルセラを見た。
モルセラとしては、命令遂行の確認だけのつもりが、アリッサの剣技をまた見れたのは、エリンジウムからだけで無く陛下からの労いの褒美にも感じていた。
2人が話をしていると、騎士崩れの男達は全員捕まっていた。
「呆気ないですね」
モルセラが呆れた顔で戦意喪失している男達を見ている。
いえ、2人が強すぎるだけです。
と、隊員達は腹の中で言ったが、誰も何も言わない。
「さて、隠し部屋の元伯爵達を引っ張り出すか」
ファルシオンが杖を軽く振るうと、壁の一部が消え、部屋の中で喚く男2人と女が2人居た。
夜会の帰りなのか、煌びやか衣装を着ているが、本人達は貧相だ。
前回の人生の時とまるで変わっていないことにアリッサは肩をすくめる。
「おや、元伯爵。ご家族総出で」
クレスト達が笑顔で部屋に入って来た。
「元伯爵だと。吾輩は列記とした……」
年嵩の男が叫んだが、クレストが差し出す書類に絶句する。
「国王陛下のご裁断です」
クレストが差し出す書類は、伯爵の爵位剥奪の命令書。
「我々の召喚に応じていればこの様な手間を陛下にお掛けしないで済んだ事が悔やまれますよ」
ヘナヘナと座り込む男を家族はオロオロ見ているが
「わ、わ、私達は関係無い」
何を思ったのか、くすんだ灰色の髪に銀粉を塗したのか、妙にテカテカした髪の女が突然叫んだ。
「そ、そ、そうよ。わたくしの婚約者は……」
その女によく似た娘が誰かの名を叫ぼうとした時、アリッサが一歩前に出た。
「青のカーバンクルの意味、ご存知ですか?」
一瞬、アリッサが何を言いたいのか理解出来なかった。
「青のカーバンクル?」
エリカが首を傾げながらアリッサを見た。
「その髪飾り、青のカーバンクルですね」
夫人と娘の髪には小粒だが、青い見事な宝石が飾られている。
「だからなんだと言うの!」
娘が噛み付く様に叫ぶのを夫人が止めようとするが、娘はアリッサを罵倒し始めた。
「美しいわたくしの髪を飾れるのだから文句なんてないはずよ」
「知っている様だな」
ファルシオンが不快そうに眉を顰めた。
「そうですか」
アリッサが目を細め、微笑むともの凄い風が吹き、4人が風に煽られた背の高い草の様に後ろにのけぞった。
その場にいた者達は何が起こったか理解できずキョロキョロしたが、ブーっと隣にいるエリカが吹き出した。
皆、エリカを見るとエリカは腹を抱えて笑っている。
「た、隊長?」
副隊長が恐る恐るエリカに声を掛けると笑いが収まらないエリカがプルプル震えながら4人の方を指さした。
「あ……」
唖然、と言うのはこう言うことかもしれない。
エリカの指さした先には4つのこけしが立っている。
「すげ~、もみあげだけ残してるよ」
「全部無いよりマシか?」
「うわ、眉毛も無いぞ」
「こわっ」
「目、ちっさ。俺達の事見えてんのか?」
失礼だが率直な隊員達の言葉に4人は猛然と怒鳴り出したが、大笑いして誰も聞いちゃいない。
「これで青のカーバンクルは不要になりましたね」
アリッサの手の中には青いカーバンクルの髪飾りがあり、切なそうに見つめていた。
「戻る母体がないから復活は出来ないが、アンサシアに託せば綺麗な花になるだろう」
ファルシオンがそっとアリッサの肩に手を置き、ヒョイと抱き上げた。
「し、師匠」
「無理しすぎだ。魔力切れを起こしている」
あれだけ大掛かりの魔法を使ったのだ、よく見ればアリッサの顔色は青を通り越して白くなっている。
副隊長の脇でアリッサ達の剣技に見惚れていた隊員がモルセラに話しかけた。
「司法省からの要請がきちんと遂行されているかの確認を陛下から命じられましたので」
その言葉だけでモルセラがただの護衛官ではない事が判明し、隊員達は改めてモルセラを見た。
モルセラとしては、命令遂行の確認だけのつもりが、アリッサの剣技をまた見れたのは、エリンジウムからだけで無く陛下からの労いの褒美にも感じていた。
2人が話をしていると、騎士崩れの男達は全員捕まっていた。
「呆気ないですね」
モルセラが呆れた顔で戦意喪失している男達を見ている。
いえ、2人が強すぎるだけです。
と、隊員達は腹の中で言ったが、誰も何も言わない。
「さて、隠し部屋の元伯爵達を引っ張り出すか」
ファルシオンが杖を軽く振るうと、壁の一部が消え、部屋の中で喚く男2人と女が2人居た。
夜会の帰りなのか、煌びやか衣装を着ているが、本人達は貧相だ。
前回の人生の時とまるで変わっていないことにアリッサは肩をすくめる。
「おや、元伯爵。ご家族総出で」
クレスト達が笑顔で部屋に入って来た。
「元伯爵だと。吾輩は列記とした……」
年嵩の男が叫んだが、クレストが差し出す書類に絶句する。
「国王陛下のご裁断です」
クレストが差し出す書類は、伯爵の爵位剥奪の命令書。
「我々の召喚に応じていればこの様な手間を陛下にお掛けしないで済んだ事が悔やまれますよ」
ヘナヘナと座り込む男を家族はオロオロ見ているが
「わ、わ、私達は関係無い」
何を思ったのか、くすんだ灰色の髪に銀粉を塗したのか、妙にテカテカした髪の女が突然叫んだ。
「そ、そ、そうよ。わたくしの婚約者は……」
その女によく似た娘が誰かの名を叫ぼうとした時、アリッサが一歩前に出た。
「青のカーバンクルの意味、ご存知ですか?」
一瞬、アリッサが何を言いたいのか理解出来なかった。
「青のカーバンクル?」
エリカが首を傾げながらアリッサを見た。
「その髪飾り、青のカーバンクルですね」
夫人と娘の髪には小粒だが、青い見事な宝石が飾られている。
「だからなんだと言うの!」
娘が噛み付く様に叫ぶのを夫人が止めようとするが、娘はアリッサを罵倒し始めた。
「美しいわたくしの髪を飾れるのだから文句なんてないはずよ」
「知っている様だな」
ファルシオンが不快そうに眉を顰めた。
「そうですか」
アリッサが目を細め、微笑むともの凄い風が吹き、4人が風に煽られた背の高い草の様に後ろにのけぞった。
その場にいた者達は何が起こったか理解できずキョロキョロしたが、ブーっと隣にいるエリカが吹き出した。
皆、エリカを見るとエリカは腹を抱えて笑っている。
「た、隊長?」
副隊長が恐る恐るエリカに声を掛けると笑いが収まらないエリカがプルプル震えながら4人の方を指さした。
「あ……」
唖然、と言うのはこう言うことかもしれない。
エリカの指さした先には4つのこけしが立っている。
「すげ~、もみあげだけ残してるよ」
「全部無いよりマシか?」
「うわ、眉毛も無いぞ」
「こわっ」
「目、ちっさ。俺達の事見えてんのか?」
失礼だが率直な隊員達の言葉に4人は猛然と怒鳴り出したが、大笑いして誰も聞いちゃいない。
「これで青のカーバンクルは不要になりましたね」
アリッサの手の中には青いカーバンクルの髪飾りがあり、切なそうに見つめていた。
「戻る母体がないから復活は出来ないが、アンサシアに託せば綺麗な花になるだろう」
ファルシオンがそっとアリッサの肩に手を置き、ヒョイと抱き上げた。
「し、師匠」
「無理しすぎだ。魔力切れを起こしている」
あれだけ大掛かりの魔法を使ったのだ、よく見ればアリッサの顔色は青を通り越して白くなっている。
112
お気に入りに追加
184
あなたにおすすめの小説
処刑されるくらいなら、平民になって自由に生きる!~最強聖女は女神として降臨する~
あおくん
恋愛
公爵令嬢のエレンは病弱体質だった。
ある日熱で魘されていたエレンは夢を見る。婚約破棄を突き付けられる夢を。
よくわからない罪で断罪されるくらいなら、平民になり冒険者になって自由を掴み取って見せるわ!と行動するお話です。
ゆるゆる設定で、ぬるっと進みます。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
幼馴染が夫を奪った後に時間が戻ったので、婚約を破棄します
天宮有
恋愛
バハムス王子の婚約者になった私ルーミエは、様々な問題を魔法で解決していた。
結婚式で起きた問題を解決した際に、私は全ての魔力を失ってしまう。
中断していた結婚式が再開すると「魔力のない者とは関わりたくない」とバハムスが言い出す。
そしてバハムスは、幼馴染のメリタを妻にしていた。
これはメリタの計画で、私からバハムスを奪うことに成功する。
私は城から追い出されると、今まで力になってくれた魔法使いのジトアがやって来る。
ずっと好きだったと告白されて、私のために時間を戻す魔法を編み出したようだ。
ジトアの魔法により時間を戻すことに成功して、私がバハムスの妻になってない時だった。
幼馴染と婚約者の本心を知ったから、私は婚約を破棄します。
甘やかなティータイム?
ハチ助
恋愛
【あらすじ】
クレイス子爵家の四女ミルティアは、大好きなシャトレイ伯爵家の三男クレオをもてなす為に中庭で茶席の準備を張り切りながら行い、待ち構えていた。そこへ柔らかな笑みを浮かべたクレオがやって来る。和やかな雰囲気で始まった二人だけのティータイムだが、クレオは開始直後から終始ミルティアを甘やかすような言動を繰り返し、遂にはミルティアを自身の膝の上に乗せ始める。
そんなクレオの接し方に淑女としてのプライドを刺激されてしまったミルティアは、抗議した。しかしデレデレ気味のクレオは一向に甘やかす行為をやめてはくれず、遂にはミルティアの口に出された焼き菓子を「あーん」とあてがってきた。流石のミルティアもこれには耐えられず、真っ赤な顔をしながらその膝の上から逃れよう奮闘し始める。
この話は、そんな二人のあるティータイムでのやりとりのお話。
※全二話のサクッと読めるお話です。
転生聖女のなりそこないは、全てを諦めのんびり生きていくことにした。
迎木尚
恋愛
「聖女にはどうせなれないんだし、私はのんびり暮らすわね〜」そう言う私に妹も従者も王子も、残念そうな顔をしている。でも私は前の人生で、自分は聖女になれないってことを知ってしまった。
どんなに努力しても最後には父親に殺されてしまう。だから私は無駄な努力をやめて、好きな人たちとただ平和にのんびり暮らすことを目標に生きることにしたのだ。
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
悪役令嬢がキレる時
リオール
恋愛
この世に悪がはびこるとき
ざまぁしてみせましょ
悪役令嬢の名にかけて!
========
※主人公(ヒロイン)は口が悪いです。
あらかじめご承知おき下さい
突発で書きました。
4話完結です。
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる