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甘く無い関係
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期末試験も無事終わり、明日はサマーパーティ。
アリッサは目の前のドレスにまだ困惑していた。
「どうした?」
「師匠。なんで学生でも無い私までサマーパーティに出なければいけないのですか?」
「元凶を特定する為だ」
のんびりアリッサの淹れた紅茶を飲みながら、当たり前だと言いたげな顔にアリッサが更に困惑する。
「それだけの為なら、裏方で良かったのでは無いですか?」
元凶を特定する為だけなら、その方が動き易い。
「アリッサ。君は、呪いが解かれたら俺の妻になる」
「はい。ですがそれとこれとは……」
「鈍感。学園内でお前を狙う奴がどれだけ居るか知らないのか?」
「えっ?刺客ですか?」
いままで恋愛にうつつを抜かす事なく前だけを見て走っていたアリッサにとって、周りの思惑は正直、意識などしていなかった。
「本気で気が付いていなかったんですね」
ランタナが目を丸くしながらアリッサを見る。
「はい。周りの目を気にする必要がなかったもので」
「そのドレスはファルシオン先生の婚約者と言う証、みたいな物ですわ」
あっさりとしたアリッサの言い分に、ミモザ達女性陣はクスクス笑い出してしまう。
ファルシオンに与えられた部屋はいつの間にか皆の集合場所になり、外では出来ない、気の抜ける場所になっていた。
だから此処に集う者達も、いつの間にか身分の垣根を取り払い、本音で話をする様になっていた。
「学園内では、ファルシオン先生と居るアリッサさんは、どう見ても師匠と弟子にしか見えないから誤解が生まれるんですね」
エニシダがしみじみ言う。
「師匠と弟子でもありますから」
「……誤解は早々に解いておいた方が、生徒達の安全に繋がりますね」
「先生といちゃいちゃしてて欲しいくらいよ」
マロウやランタナも頭を抱えそうな雰囲気で言った。
「師匠といちゃいちゃ……。やった事ない事なので……」
真面目な顔で悩むアリッサを女性陣は困り顔で見つめた。
「いえ、何もしなくて大丈夫だと思います」
意外にも反対意見を口にしたのは、色恋に疎そうなモルセラだった。
「モルセラ、何を見てそう思った?」
エリンジウムも意外だ、と言いたげにモルセラを見る。
「俺は2度、ファルシオン先生とアリッサ嬢の戦う姿を見てます」
この学園の中ではサンキライを除けば、ファルシオンとアリッサが一緒に戦うのを何度か見たのはモルセラだけだ。
「お、良い視野を持っているな」
サンキライも頷き、モルセラに同意した。
「お2人は恋人、と言う関係よりももっと深い、命を共有している様な感じでした」
阿吽の呼吸でお互いをカバーする動きなど、並大抵の関係性ではない、と感じていた。
「つまり、割って入るなんて出来ない、と言うことか」
「はい。そんな事するのは余程の大馬鹿者か、権力を乱用している阿呆です」
どっちも酷いな、とガウラとサンキライが苦笑を浮かべる。
「では、私はいつも通りにしてますね」
「ちょっとはファルシオン先生に甘えたら?」
アリッサの平坦な声にランタナが少し呆れた顔で言えば
「どうすれば甘えているふうに見えるのでしょうか?」
と、真面目に聞き返されランタナがワタワタした。
アリッサは目の前のドレスにまだ困惑していた。
「どうした?」
「師匠。なんで学生でも無い私までサマーパーティに出なければいけないのですか?」
「元凶を特定する為だ」
のんびりアリッサの淹れた紅茶を飲みながら、当たり前だと言いたげな顔にアリッサが更に困惑する。
「それだけの為なら、裏方で良かったのでは無いですか?」
元凶を特定する為だけなら、その方が動き易い。
「アリッサ。君は、呪いが解かれたら俺の妻になる」
「はい。ですがそれとこれとは……」
「鈍感。学園内でお前を狙う奴がどれだけ居るか知らないのか?」
「えっ?刺客ですか?」
いままで恋愛にうつつを抜かす事なく前だけを見て走っていたアリッサにとって、周りの思惑は正直、意識などしていなかった。
「本気で気が付いていなかったんですね」
ランタナが目を丸くしながらアリッサを見る。
「はい。周りの目を気にする必要がなかったもので」
「そのドレスはファルシオン先生の婚約者と言う証、みたいな物ですわ」
あっさりとしたアリッサの言い分に、ミモザ達女性陣はクスクス笑い出してしまう。
ファルシオンに与えられた部屋はいつの間にか皆の集合場所になり、外では出来ない、気の抜ける場所になっていた。
だから此処に集う者達も、いつの間にか身分の垣根を取り払い、本音で話をする様になっていた。
「学園内では、ファルシオン先生と居るアリッサさんは、どう見ても師匠と弟子にしか見えないから誤解が生まれるんですね」
エニシダがしみじみ言う。
「師匠と弟子でもありますから」
「……誤解は早々に解いておいた方が、生徒達の安全に繋がりますね」
「先生といちゃいちゃしてて欲しいくらいよ」
マロウやランタナも頭を抱えそうな雰囲気で言った。
「師匠といちゃいちゃ……。やった事ない事なので……」
真面目な顔で悩むアリッサを女性陣は困り顔で見つめた。
「いえ、何もしなくて大丈夫だと思います」
意外にも反対意見を口にしたのは、色恋に疎そうなモルセラだった。
「モルセラ、何を見てそう思った?」
エリンジウムも意外だ、と言いたげにモルセラを見る。
「俺は2度、ファルシオン先生とアリッサ嬢の戦う姿を見てます」
この学園の中ではサンキライを除けば、ファルシオンとアリッサが一緒に戦うのを何度か見たのはモルセラだけだ。
「お、良い視野を持っているな」
サンキライも頷き、モルセラに同意した。
「お2人は恋人、と言う関係よりももっと深い、命を共有している様な感じでした」
阿吽の呼吸でお互いをカバーする動きなど、並大抵の関係性ではない、と感じていた。
「つまり、割って入るなんて出来ない、と言うことか」
「はい。そんな事するのは余程の大馬鹿者か、権力を乱用している阿呆です」
どっちも酷いな、とガウラとサンキライが苦笑を浮かべる。
「では、私はいつも通りにしてますね」
「ちょっとはファルシオン先生に甘えたら?」
アリッサの平坦な声にランタナが少し呆れた顔で言えば
「どうすれば甘えているふうに見えるのでしょうか?」
と、真面目に聞き返されランタナがワタワタした。
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