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上には上がいるものです

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「なんて素晴らしい令嬢なんだ」

マロウが頬をうっすら赤くしながら、うっとりとした顔で今回の試験の問題用紙を見ている。

「何かあったのか?」

エリンジウムがモルセラに問い掛けると

「アリッサ嬢が全学年の試験を満点で解答したそうです」

と、半信半疑の表情を隠さず答えた。

「学園に通ってないのに全学年の試験を満点?」

流石にエリンジウムもすぐには信用しなかったが、マロウが持っている問題用紙に驚愕した。

全ての学年の模範解答の為、複数写しを作成し欲しい者達に渡したアリッサの綺麗な文字で埋め尽くされた解答用紙。
それをマロウは、うっとりと見ているのだ。

「魔法使いの弟子だと言うのに、剣も使え学力も素晴らしいなんて」

エリンジウムもうっとりした顔で窓の外に目を向けた。



数日後、試験の結果が廊下の掲示板に貼り出されていた。
それぞれの学年のトップは試験の点数も書かれており、新入生の所にはデージー・ランドの名前とともにいくつかの教科には満点の数字があった。

「今年の新入生は優秀だと聞いていたが、満点もあるとは驚きだな」

人混みに紛れ、エリンジウムがモルセラやマロウに声を掛けたが、2人とも頷くだけで何も言わない。
既にもっと優秀な存在を知っているせいなのだが、それを此処で言うのはおかしい。

「やったー。頑張った甲斐があったわ」

ピンクの髪をふわふわさせた少女が掲示板の前で嬉しそうに飛び跳ねた。
見覚えのある髪の色に無意識だがマロウは眉を顰めた。
今日も満開の花畑頭。

「デージーすごい。満点だなんて、友達として鼻が高いわ」

数人の女子生徒がピンクの子、デージーを褒めているが、エリンジウム達はその横をするりと抜けて行く。

挨拶もしたことがない異性に声を掛けるなど、はしたない行為だと彼らは思っていたが

「これでマロウ様に褒めていただけるわ」

と、デージーと呼ばれた女子生徒が言った。

「マロウ、いつの間にあの生徒と親しくなったんだい?」
「冗談じゃないです。僕はあの生徒と話もしたことないですし、名前を呼ぶ許可も出してません」

普通なら親しくない者達は家名で相手を呼ぶ。マロウもエリンジウム達以外には家名のハルキシア侯爵令息、と呼ばれている。

エリンジウムと小声で話していたマロウがデージーと不意に目が合ってしまった。

「素晴らしいですね。これからも頑張りなさい」

マロウは社交辞令も込め、当たり障りのない言葉を掛け、既に先に行ったエリンジウムを追い掛けた。

「やっぱりマロウに褒められたわ。エリン様とマロウのフラグがちゃんと立てられたから、今回は逆ハールートが開放されたのね」

デージーがニマニマしながら呟いた言葉は誰にも聞かれず、消えて行った。
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