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後日談 アーネスト編 最終話
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俺はいくつもの名前を使って生きてきた。
本当の名前なんて覚えてもいない。
アサシンギルドに入った時は普通の名前だったが、力を付けるとファースト、と呼ばれる様になりその名前が定着した時、新しい名前を付けた。
ダドリー、と言う名前。
この名前には思い入れがある。
生涯かけて守りたい、と思う方がとても大切に呼びかけてくださったから。
そして今はアーネストと呼ばれている。
アーネスト・クリスタル子爵。
貴族になるなんて思ったこともなかった。
だが、今はこの名前が大切だ。
愛する方が愛しげに呼ぶこの名前。
「アーネスト、来週の夜、ちょっと孤児院の掃除をして来ますね」
殺気を漲らせて掃除とは……。
「シルヴィー、それは私の仕事ですよ」
「魔獣や精霊の子供達が闇オークションに掛けられるそうで」
シルヴィーは本当に有能だ。
王太子妃の侍女でありながら、私の仕事も手伝ってくれる。
「そちらの手配は既に終わってますよ」
「知っているわ。でも、私が掃除をするのは別の孤児院なの」
シルヴィーの言葉に思わず殺気が漏れた。
「あの馬鹿共はまだ……」
「そう。次期王太子殿下も誕生されても、現実が見えないのよ」
シルヴィーが掴んだ情報はジルコニア伯爵家を復活させようとする動きがある、と言うものだ。
あの断罪から10年も過ぎているのに、愚か者達はいまだ現実を見ていない。
「オークションの方は任せてくれ。精霊王様や魔獣王様の命を受けたラピスとクースが力を貸してくれるそうだ」
既に成獣になったラピスとクース。
ウォータードラゴンとフェニックスに、人間が勝てるはずもない。
オークション会場の騒ぎをサクッと片付けてシルヴィーの向かった孤児院にラピスとクースを連れて行くと、案の定の状況に笑ってしまった。
「やはり此方にいらしたのですね」
シルヴィーの両脇に立つ、魔獣王様と精霊王様。
「当然だ」
魔獣王様が相変わらず、豪胆な笑みで頷き、精霊王様はニコニコしていた。
あぁ、気の毒に。中にいた奴らはきっとボロボロになっているに違いない。
「ありがとうございます」
中を確認する必要なんてない。
シルヴィーが関与して、お二人が居るなら不備などあり得ない。
「これで随分綺麗になったはずよ」
シルヴィーが微笑みながら腕を絡めてきた。
そうだね。王国は過去の亡霊の憂も無くなり、綺麗になった筈だ。
「ご尽力、感謝致します」
「また今度ね。次はゆっくり遊びに来るよ」
精霊王様は手を振り、クースを連れて空を飛んだ。
「じゃあな」
魔獣王様はラピスの背に乗り颯爽と帰って行く。
「アーネスト、私達も帰りましょ」
愛しい妻、シルヴィーが笑顔で私の名を呼ぶ。
「そうだね。シルヴィー、お疲れ様」
「アーネストもお疲れ様」
あぁ、なんて幸せなんだろう。
私は幸せを噛み締めながら、帰路についた。
fin
本当の名前なんて覚えてもいない。
アサシンギルドに入った時は普通の名前だったが、力を付けるとファースト、と呼ばれる様になりその名前が定着した時、新しい名前を付けた。
ダドリー、と言う名前。
この名前には思い入れがある。
生涯かけて守りたい、と思う方がとても大切に呼びかけてくださったから。
そして今はアーネストと呼ばれている。
アーネスト・クリスタル子爵。
貴族になるなんて思ったこともなかった。
だが、今はこの名前が大切だ。
愛する方が愛しげに呼ぶこの名前。
「アーネスト、来週の夜、ちょっと孤児院の掃除をして来ますね」
殺気を漲らせて掃除とは……。
「シルヴィー、それは私の仕事ですよ」
「魔獣や精霊の子供達が闇オークションに掛けられるそうで」
シルヴィーは本当に有能だ。
王太子妃の侍女でありながら、私の仕事も手伝ってくれる。
「そちらの手配は既に終わってますよ」
「知っているわ。でも、私が掃除をするのは別の孤児院なの」
シルヴィーの言葉に思わず殺気が漏れた。
「あの馬鹿共はまだ……」
「そう。次期王太子殿下も誕生されても、現実が見えないのよ」
シルヴィーが掴んだ情報はジルコニア伯爵家を復活させようとする動きがある、と言うものだ。
あの断罪から10年も過ぎているのに、愚か者達はいまだ現実を見ていない。
「オークションの方は任せてくれ。精霊王様や魔獣王様の命を受けたラピスとクースが力を貸してくれるそうだ」
既に成獣になったラピスとクース。
ウォータードラゴンとフェニックスに、人間が勝てるはずもない。
オークション会場の騒ぎをサクッと片付けてシルヴィーの向かった孤児院にラピスとクースを連れて行くと、案の定の状況に笑ってしまった。
「やはり此方にいらしたのですね」
シルヴィーの両脇に立つ、魔獣王様と精霊王様。
「当然だ」
魔獣王様が相変わらず、豪胆な笑みで頷き、精霊王様はニコニコしていた。
あぁ、気の毒に。中にいた奴らはきっとボロボロになっているに違いない。
「ありがとうございます」
中を確認する必要なんてない。
シルヴィーが関与して、お二人が居るなら不備などあり得ない。
「これで随分綺麗になったはずよ」
シルヴィーが微笑みながら腕を絡めてきた。
そうだね。王国は過去の亡霊の憂も無くなり、綺麗になった筈だ。
「ご尽力、感謝致します」
「また今度ね。次はゆっくり遊びに来るよ」
精霊王様は手を振り、クースを連れて空を飛んだ。
「じゃあな」
魔獣王様はラピスの背に乗り颯爽と帰って行く。
「アーネスト、私達も帰りましょ」
愛しい妻、シルヴィーが笑顔で私の名を呼ぶ。
「そうだね。シルヴィー、お疲れ様」
「アーネストもお疲れ様」
あぁ、なんて幸せなんだろう。
私は幸せを噛み締めながら、帰路についた。
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感想ありがとうございます。
貴重なご意見ありがとうございます。
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