113 / 114
後日談 ハロルド編
しおりを挟む
俺は大量の書類を抱え、第一騎士団団長の執務室に居る。
「やっぱり、シルヴィーったら王宮でも走り回っているのね」
目の前にいる、漆黒の髪に琥珀の様な目を持つ美丈夫が、クスクス笑いながら水晶球を覗き込んでいる。
「エイン、口調が……」
「いいじゃない。アンタしか居ないんだから」
完全に女言葉だ。
まぁ、事情を知ってるから強くは言えない。
エイン・アンバー第一騎士団団長は前世の記憶を持っている。
しかも、驚いたことにシルヴィーの職場の先輩だ、と言っている。
「年齢が合わないんだけど」
その事を教えられた時、俺は素直にそう思った。
「あたしもそう思ったけど、細かい事は気にしない。解んないもん」
いや、気にしてくれ、と思ったが無駄だ。
「それにしても良く気が付いたな」
「あの子、約束する時必ず小指を出すのよ。この世界には無いでしょ」
指切りげんまん、とか言うものは確かにこの世界では聞いたことがない。
「あたしは前世であの子を守れなかった。だから、新しい人生では大切に思う子が出来たら守ろうって決めてたの」
そうエインは言って、優しい目をしてた。
「それがあの子だなんて、もう最高」
見た目と言動の落差に、毎回、眩暈を起こしそうになる。
「で、その書類、裏が取れたようね」
口調は変わらないが、目付きは騎士団長のものに変わる。
「シルヴィーに対しての嫌がらせが5件。後はお花畑が1件」
「嫌がらせは放って置いても問題はないだろうけど、お花畑は誰に?」
「シルヴィーに」
俺はうんざりしながら答える。
この手の話、少なく無いんだよ。
「アーネストが自分の運命の恋人でって騒いでたアホ、前にも居たわね」
「今度は逆。シルヴィーが運命の恋人で……」
「……粉砕してくる」
頼むから、理性を蒸発させるなって。
アーネストが殿下と視察で不在だから、これ幸いと噂をばら撒いているが、誰も信じてないから。
「甘いわ。あの子は前世でお花畑にストーカーされて……」
「おい、俺が知ってるって事はあいつも知ってる筈だろ」
「今やるの」
やるが、殺る、に変換されない事を祈るだけだ。一応、高官の息子なんだから手加減してくれ。
バン、とドアを開け騎士団の詰所でエインが自分の補佐官に声を掛けた。
「シン、キー、手が空いてるなら手伝え」
「アンバー団長、何かありましたか?」
走り寄ってくる赤い髪の騎士が首を傾げる。
「シルヴィーに邪な欲望を抱えた奴を駆除する」
「お供します」
途端に、2人の目が据わった。
当然、他の騎士達の目も殺気で鋭くなっている。
シルヴィー至上主義しか居ないのか?此処は。
結果、シルヴィーに横恋慕していた奴はエイン達によって精神がボロボロにされた。
ま、居なくても何の問題もない奴だからどうでもいいかな。
「やっぱり、シルヴィーったら王宮でも走り回っているのね」
目の前にいる、漆黒の髪に琥珀の様な目を持つ美丈夫が、クスクス笑いながら水晶球を覗き込んでいる。
「エイン、口調が……」
「いいじゃない。アンタしか居ないんだから」
完全に女言葉だ。
まぁ、事情を知ってるから強くは言えない。
エイン・アンバー第一騎士団団長は前世の記憶を持っている。
しかも、驚いたことにシルヴィーの職場の先輩だ、と言っている。
「年齢が合わないんだけど」
その事を教えられた時、俺は素直にそう思った。
「あたしもそう思ったけど、細かい事は気にしない。解んないもん」
いや、気にしてくれ、と思ったが無駄だ。
「それにしても良く気が付いたな」
「あの子、約束する時必ず小指を出すのよ。この世界には無いでしょ」
指切りげんまん、とか言うものは確かにこの世界では聞いたことがない。
「あたしは前世であの子を守れなかった。だから、新しい人生では大切に思う子が出来たら守ろうって決めてたの」
そうエインは言って、優しい目をしてた。
「それがあの子だなんて、もう最高」
見た目と言動の落差に、毎回、眩暈を起こしそうになる。
「で、その書類、裏が取れたようね」
口調は変わらないが、目付きは騎士団長のものに変わる。
「シルヴィーに対しての嫌がらせが5件。後はお花畑が1件」
「嫌がらせは放って置いても問題はないだろうけど、お花畑は誰に?」
「シルヴィーに」
俺はうんざりしながら答える。
この手の話、少なく無いんだよ。
「アーネストが自分の運命の恋人でって騒いでたアホ、前にも居たわね」
「今度は逆。シルヴィーが運命の恋人で……」
「……粉砕してくる」
頼むから、理性を蒸発させるなって。
アーネストが殿下と視察で不在だから、これ幸いと噂をばら撒いているが、誰も信じてないから。
「甘いわ。あの子は前世でお花畑にストーカーされて……」
「おい、俺が知ってるって事はあいつも知ってる筈だろ」
「今やるの」
やるが、殺る、に変換されない事を祈るだけだ。一応、高官の息子なんだから手加減してくれ。
バン、とドアを開け騎士団の詰所でエインが自分の補佐官に声を掛けた。
「シン、キー、手が空いてるなら手伝え」
「アンバー団長、何かありましたか?」
走り寄ってくる赤い髪の騎士が首を傾げる。
「シルヴィーに邪な欲望を抱えた奴を駆除する」
「お供します」
途端に、2人の目が据わった。
当然、他の騎士達の目も殺気で鋭くなっている。
シルヴィー至上主義しか居ないのか?此処は。
結果、シルヴィーに横恋慕していた奴はエイン達によって精神がボロボロにされた。
ま、居なくても何の問題もない奴だからどうでもいいかな。
52
お気に入りに追加
369
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。
シナリオ通りなら、死ぬ運命。
だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい!
騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します!
というわけで、私、悪役やりません!
来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。
あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……!
気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。
悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~
翡翠蓮
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……
悪役令嬢エリザベート物語
kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ
公爵令嬢である。
前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。
ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。
父はアフレイド・ノイズ公爵。
ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。
魔法騎士団の総団長でもある。
母はマーガレット。
隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。
兄の名前はリアム。
前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。
そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。
王太子と婚約なんてするものか。
国外追放になどなるものか。
乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。
私は人生をあきらめない。
エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。
⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる