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後日談 ユーノ編

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カインと結婚して10年の記念の日、あたしは、水晶球が映し出す不鮮明な静止画に唸っていた。

どう見ても、カインとどっかの娘の浮気現場だ。
だけど、徹夜明けで人の膝を枕に、ぐっすり寝ている彼の事だとは思えない。

しかも、この水晶球は今朝、妙な女が無理矢理押し付けたものだ。
怒鳴るべきか、真相を確かめる為探るか考えているとハザックが事務所に入って来た。

「……なんすか、これ?」
「あたしが聞きたい」

信憑性は皆無だが、どう対処するべきか悩みどころだ。

「うーん、よく寝た」

と、呑気に目を覚ましたカインに水晶球を見せると、カインの少し寝ぼけていた目が据わった。

「何これ?」
「あたしが聞きたいんだけど」

水晶球が映す映像を睨みつけていたカインが、魔法陣を書き出し、ブツブツ言い出した。

「こういう事か。流石シルヴィー様」

何に感心しているのか判らないあたしとハザックは首を傾げたが、カインが魔法陣を発動させると、映像が動き出した。

『もうちょっと、踵の高い靴無かったの?』
『お前が屈めばいいだろ。どうせ、ドレスで足、見えねーんだから』
『アンタって最低ね。カイン様とは大違いよ』
『俺が最低?こうやってアイツを嵌めようとしてんのはお前だろうが』
『ふん。嵌めようとしてるんじゃないよ。真実の愛に目覚めさせようとしてんの』
『これがギルドマスターの目に止まりゃ、カインは離婚される。そんでお前が後釜に座り、俺がギルドマスターの夫になってやるって事だ』

映像の人物達が勝手な事を言い合いながら、顔だけはうっとりとした、恋に溺れる表情で抱き合っている。

「舐めた真似を……ユーノ、ちょっと王宮に行ってくるね。大丈夫、すぐに帰ってくるから」

カインが水晶球とハザックの襟首を掴み、にっこりと笑う。
あたしは、いってらっしゃい、と手を振ってみたが、あいつら何がしたいんだ?と疑問だけが残された。

「ユーノ、無事?」

暫く仕事をしていると突然、シルヴィー様がギルド本部のあたしの部屋に駆け込んできた。

「シルヴィー様」

挨拶そっちのけで、シルヴィー様はあたしに抱きつき、ホッとした顔をされた。
既に3人の子供が居るとは思えないシルヴィー様の華奢な姿に、ギルドにいた男達が騒ついた。

「良かった。カインが物凄く怒ってたから、貴女に何かあったのかもって」

シルヴィー様の言葉で、なんとなく状況を理解した。
かくかくしかじか、とさっきの事を説明すると、シルヴィー様がコロコロと笑った。

「何処にでもお花畑さんは居るのね。だから真実の蔦が大暴れしたのね」

思いっきり惨劇が想像できてしまった。

「あ、あのぉ、それで……」
「カインが帰ってきたら聞いて。あ、それから、ユーノは暫く王宮に行かない方が良いかな」

茶目っ気たっぷりの笑顔が眩しいですが、なんだろう、背中がゾクゾクしますけど。

「シルヴィー、ほら大丈夫だっただろ」

アーネスト様まで黒い笑顔で現れた。

「まったく、ユーノ達の結婚10周年の記念日に。お花畑さんは本当、周りを見ないのね」
「ユーノ、問題は解決したし、カインも休暇が取れたみたいだから、のんびりするといい」

万年暇なしの王宮魔術院の長官に休暇?
いったいどんな事したのか物凄く気になった。

「ただいま。あ、シルヴィー様とアーネスト様。先程はありがとうございます。お陰でいい休暇になりそうです」
「お帰り。じゃあ、私達は帰るね」

そう言ってシルヴィー様は何も説明しないで手を振って帰ってしまった。
できれば何があったか教えて欲しかった。

「……お帰り。で、何があったの?」
「お花畑を駆逐して来た」

うん、これは詳しく聞かない方がいい。

「そう。じゃあ、夜は何処かで食事でもしようか」
「2、3日休みが取れたから、ちょっと遠出をしよう。新婚旅行、行けなかったから」

気にしない様にしてたけど、その提案は嬉しい。

「そうね。今から行く?」
「そうしよう。じゃ、皆んな、行ってくる」

カインとあたしは、さっさとギルド本部から出掛けた。

後からハザックに映像の人物達がどうなったか聞いたけど、同情は出来なかった。
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