112 / 114
後日談 ユーノ編
しおりを挟む
カインと結婚して10年の記念の日、あたしは、水晶球が映し出す不鮮明な静止画に唸っていた。
どう見ても、カインとどっかの娘の浮気現場だ。
だけど、徹夜明けで人の膝を枕に、ぐっすり寝ている彼の事だとは思えない。
しかも、この水晶球は今朝、妙な女が無理矢理押し付けたものだ。
怒鳴るべきか、真相を確かめる為探るか考えているとハザックが事務所に入って来た。
「……なんすか、これ?」
「あたしが聞きたい」
信憑性は皆無だが、どう対処するべきか悩みどころだ。
「うーん、よく寝た」
と、呑気に目を覚ましたカインに水晶球を見せると、カインの少し寝ぼけていた目が据わった。
「何これ?」
「あたしが聞きたいんだけど」
水晶球が映す映像を睨みつけていたカインが、魔法陣を書き出し、ブツブツ言い出した。
「こういう事か。流石シルヴィー様」
何に感心しているのか判らないあたしとハザックは首を傾げたが、カインが魔法陣を発動させると、映像が動き出した。
『もうちょっと、踵の高い靴無かったの?』
『お前が屈めばいいだろ。どうせ、ドレスで足、見えねーんだから』
『アンタって最低ね。カイン様とは大違いよ』
『俺が最低?こうやってアイツを嵌めようとしてんのはお前だろうが』
『ふん。嵌めようとしてるんじゃないよ。真実の愛に目覚めさせようとしてんの』
『これがギルドマスターの目に止まりゃ、カインは離婚される。そんでお前が後釜に座り、俺がギルドマスターの夫になってやるって事だ』
映像の人物達が勝手な事を言い合いながら、顔だけはうっとりとした、恋に溺れる表情で抱き合っている。
「舐めた真似を……ユーノ、ちょっと王宮に行ってくるね。大丈夫、すぐに帰ってくるから」
カインが水晶球とハザックの襟首を掴み、にっこりと笑う。
あたしは、いってらっしゃい、と手を振ってみたが、あいつら何がしたいんだ?と疑問だけが残された。
「ユーノ、無事?」
暫く仕事をしていると突然、シルヴィー様がギルド本部のあたしの部屋に駆け込んできた。
「シルヴィー様」
挨拶そっちのけで、シルヴィー様はあたしに抱きつき、ホッとした顔をされた。
既に3人の子供が居るとは思えないシルヴィー様の華奢な姿に、ギルドにいた男達が騒ついた。
「良かった。カインが物凄く怒ってたから、貴女に何かあったのかもって」
シルヴィー様の言葉で、なんとなく状況を理解した。
かくかくしかじか、とさっきの事を説明すると、シルヴィー様がコロコロと笑った。
「何処にでもお花畑さんは居るのね。だから真実の蔦が大暴れしたのね」
思いっきり惨劇が想像できてしまった。
「あ、あのぉ、それで……」
「カインが帰ってきたら聞いて。あ、それから、ユーノは暫く王宮に行かない方が良いかな」
茶目っ気たっぷりの笑顔が眩しいですが、なんだろう、背中がゾクゾクしますけど。
「シルヴィー、ほら大丈夫だっただろ」
アーネスト様まで黒い笑顔で現れた。
「まったく、ユーノ達の結婚10周年の記念日に。お花畑さんは本当、周りを見ないのね」
「ユーノ、問題は解決したし、カインも休暇が取れたみたいだから、のんびりするといい」
万年暇なしの王宮魔術院の長官に休暇?
いったいどんな事したのか物凄く気になった。
「ただいま。あ、シルヴィー様とアーネスト様。先程はありがとうございます。お陰でいい休暇になりそうです」
「お帰り。じゃあ、私達は帰るね」
そう言ってシルヴィー様は何も説明しないで手を振って帰ってしまった。
できれば何があったか教えて欲しかった。
「……お帰り。で、何があったの?」
「お花畑を駆逐して来た」
うん、これは詳しく聞かない方がいい。
「そう。じゃあ、夜は何処かで食事でもしようか」
「2、3日休みが取れたから、ちょっと遠出をしよう。新婚旅行、行けなかったから」
気にしない様にしてたけど、その提案は嬉しい。
「そうね。今から行く?」
「そうしよう。じゃ、皆んな、行ってくる」
カインとあたしは、さっさとギルド本部から出掛けた。
後からハザックに映像の人物達がどうなったか聞いたけど、同情は出来なかった。
どう見ても、カインとどっかの娘の浮気現場だ。
だけど、徹夜明けで人の膝を枕に、ぐっすり寝ている彼の事だとは思えない。
しかも、この水晶球は今朝、妙な女が無理矢理押し付けたものだ。
怒鳴るべきか、真相を確かめる為探るか考えているとハザックが事務所に入って来た。
「……なんすか、これ?」
「あたしが聞きたい」
信憑性は皆無だが、どう対処するべきか悩みどころだ。
「うーん、よく寝た」
と、呑気に目を覚ましたカインに水晶球を見せると、カインの少し寝ぼけていた目が据わった。
「何これ?」
「あたしが聞きたいんだけど」
水晶球が映す映像を睨みつけていたカインが、魔法陣を書き出し、ブツブツ言い出した。
「こういう事か。流石シルヴィー様」
何に感心しているのか判らないあたしとハザックは首を傾げたが、カインが魔法陣を発動させると、映像が動き出した。
『もうちょっと、踵の高い靴無かったの?』
『お前が屈めばいいだろ。どうせ、ドレスで足、見えねーんだから』
『アンタって最低ね。カイン様とは大違いよ』
『俺が最低?こうやってアイツを嵌めようとしてんのはお前だろうが』
『ふん。嵌めようとしてるんじゃないよ。真実の愛に目覚めさせようとしてんの』
『これがギルドマスターの目に止まりゃ、カインは離婚される。そんでお前が後釜に座り、俺がギルドマスターの夫になってやるって事だ』
映像の人物達が勝手な事を言い合いながら、顔だけはうっとりとした、恋に溺れる表情で抱き合っている。
「舐めた真似を……ユーノ、ちょっと王宮に行ってくるね。大丈夫、すぐに帰ってくるから」
カインが水晶球とハザックの襟首を掴み、にっこりと笑う。
あたしは、いってらっしゃい、と手を振ってみたが、あいつら何がしたいんだ?と疑問だけが残された。
「ユーノ、無事?」
暫く仕事をしていると突然、シルヴィー様がギルド本部のあたしの部屋に駆け込んできた。
「シルヴィー様」
挨拶そっちのけで、シルヴィー様はあたしに抱きつき、ホッとした顔をされた。
既に3人の子供が居るとは思えないシルヴィー様の華奢な姿に、ギルドにいた男達が騒ついた。
「良かった。カインが物凄く怒ってたから、貴女に何かあったのかもって」
シルヴィー様の言葉で、なんとなく状況を理解した。
かくかくしかじか、とさっきの事を説明すると、シルヴィー様がコロコロと笑った。
「何処にでもお花畑さんは居るのね。だから真実の蔦が大暴れしたのね」
思いっきり惨劇が想像できてしまった。
「あ、あのぉ、それで……」
「カインが帰ってきたら聞いて。あ、それから、ユーノは暫く王宮に行かない方が良いかな」
茶目っ気たっぷりの笑顔が眩しいですが、なんだろう、背中がゾクゾクしますけど。
「シルヴィー、ほら大丈夫だっただろ」
アーネスト様まで黒い笑顔で現れた。
「まったく、ユーノ達の結婚10周年の記念日に。お花畑さんは本当、周りを見ないのね」
「ユーノ、問題は解決したし、カインも休暇が取れたみたいだから、のんびりするといい」
万年暇なしの王宮魔術院の長官に休暇?
いったいどんな事したのか物凄く気になった。
「ただいま。あ、シルヴィー様とアーネスト様。先程はありがとうございます。お陰でいい休暇になりそうです」
「お帰り。じゃあ、私達は帰るね」
そう言ってシルヴィー様は何も説明しないで手を振って帰ってしまった。
できれば何があったか教えて欲しかった。
「……お帰り。で、何があったの?」
「お花畑を駆逐して来た」
うん、これは詳しく聞かない方がいい。
「そう。じゃあ、夜は何処かで食事でもしようか」
「2、3日休みが取れたから、ちょっと遠出をしよう。新婚旅行、行けなかったから」
気にしない様にしてたけど、その提案は嬉しい。
「そうね。今から行く?」
「そうしよう。じゃ、皆んな、行ってくる」
カインとあたしは、さっさとギルド本部から出掛けた。
後からハザックに映像の人物達がどうなったか聞いたけど、同情は出来なかった。
47
お気に入りに追加
343
あなたにおすすめの小説
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
転生したので、とりあえず最強を目指してみることにしました。
和麻
ファンタジー
俺はある日、村を故郷を喪った。
家族を喪った。
もう二度と、大切なものを失わないためにも俺は、強くなることを決意する。
そのためには、努力を惜しまない!
まあ、面倒なことになりたくないから影の薄いモブでいたいけど。
なにげに最強キャラを目指そうぜ!
地球で生きていた頃の知識と、転生するときに神様から貰ったチートを生かし、最強を目指します。
主人公は、騎士団に入ったり、学園に入学したり、冒険者になったりします。
とにかく、気の向くままに、いきあたりばったりに書いてるので不定期更新です。
最初シリアスだったのにギャグ要素が濃くなって来ました。
というか登場人物たちが暴走しすぎて迷走中です、、、。
もはや、どうなっていくのか作者にも想像がつかない。
1月25日改稿しました!多少表現が追加されていますが、読まなくても問題ありません。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる