[完結]18禁乙女ゲームのモブに転生したら逆ハーのフラグを折ってくれと頼まれた。了解ですが、溺愛は望んでません。

紅月

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神様の会議と波乱含みの舞踏会。

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「さてと、面倒事は終わったな」

転移魔法の光が消えるとハロルドが砕けた口調でダドリーに声を掛けた。

「まだ新年の舞踏会が残ってますよ」
「そっちには俺、顔出さないから」
「おや?シルヴィー様の婚約式に立ち会わないのですか?」

カインが不思議そうにハロルドを見た。

「俺だって立ち会いたかったけど、ラリマーのおっさんが、ジルコニアの家宅捜索の方に組み込みやがったんだよ」
「ラリマー宰相らしいですね。欠片も見逃さず、徹底的に探せ、と」

ダドリーが苦笑いしながら、ポンとハロルドの肩を叩いた。

「エインも立ち会えないみたいだから、しょうがねーよ」

エインの場合、立ち会えない、のではなく立ち会いたくないのだろう。
愛娘を嫁に出す父親の心境だ。

「しかし、良く思い付いたな。あの邪魔者をラスティックに押し付けるなんて」

大した罪状がない為持て余し気味の彼女の処遇にハロルドが頷きながらダドリーを見る。

「いつだったか、シルヴィー様がおかしな夢を見た、と話してましたので」
「おかしな話?なにそれ、すごい知りたい」

ハロルドだけでなく、カインやユーノも頷いている。

ダドリーは掻い摘んでシルヴィーが見た、おかしな夢の話をした。

「何人かの人が書類を見ながら、話をしていて、その書類にお花畑の悲惨な運命、みたいな文字が見えたそうです」

実際は、シルヴィーは、ヒロインざまぁエンドを決める会議を夢で見たらしく、ざまぁの候補に今回の事が書いてあった。

会議ではボツになったが、理由がゲームでは隣国との接点が無いし、醜い男は見たくない、と言う理由らしい。

シルヴィーも夢で見た状況をそのまま伝えるのは不味い、と思った為、其処はぼかしたようだが、ダドリーは使える手段として記憶しており、実行に移した。

「それって神様の会議みたいなものか?」
「それが近いでしょう」

ハロルドとユーノは納得していたが、カインは甘過ぎる、と言った。

「甘くは無いと思うぞ。なにせ、ラスティック王は醜い上、性欲が強いが持ってるものはお粗末らしいし、虐待しないと勃たない、と聞いた」

ハロルドはなんて事ないように言うが、インリンの命運は尽きたようだ。

「それが何か?問題など、無いです」

冷ややかにユーノが答える。
子供の頃から、あのお花畑の対処に走り回っていたシルヴィーの苦労を知っている彼女にとっては、厄介払いができれば、厄介者の末路など欠片も気にしない。

それに、シルヴィーが走り回っていなければ最悪の結果に国が傾いていた可能性がある。

「あいつの事はもう片がついた。残った阿呆一族の処分だけだ」

ダドリーは冷酷な笑みを浮かべ、アメジストのような目をハロルドに向ける。

「欠片も残さないよ」
「それは、良かった。で、側妃の方は?」
「ラリマーのおっさんが、喜んで担当してる」

余程ラリマー宰相は側妃が嫌いだったのだろう。パトリックの出生を知らせると、嬉々として証拠固めに部下を動員していた。

「では、私達はこの辺で」
「手間を掛けたな。カイン、新しい魔法陣、ナタリアがすごく喜んでいた」

別れを告げたカイン達にハロルドが労いの言葉を掛け、学園で使われ始めた魔法陣の礼を言った。

「シルヴィー様が提案して下さったお陰です。お役に立てて、何よりです」

シルヴィーの名を口にする時は、カイン達も柔らかな笑みを浮かべる。

「新年の舞踏会も頼んだぞ」
「お任せ下さい。ヘマなどしませんよ」

腹の読めない笑顔で頷くカインは、強かで王宮魔術院きっての切れ者。数年前まではおどおどしていた者とは思えない。

「シルヴィーは人材発掘の天才だな」
「そして最高の人誑しですよ」

ハロルドとダドリーが、楽しげにシルヴィーの話を始める。

「違いない。だけど、シルヴィーは周りの人間に溺愛されてるの、全く気が付いてないんだろ」
「ええ、びっくりする程。あのジルコン公爵が、自分をユーリファスお爺様と呼んでいい、と言った時、流石に頭を抱えそうになりました」

ダドリーの返事にハロルドは腹を抱えて笑い、カインは呆れたような顔で遠くを見ていた。

「ですが、シルヴィー様がいつだったか、溺愛は遠慮したい、と仰ってました」
「あんだけされてんのに!」

ハロルドだけで無く、ダドリーやカインもユーノの言葉に固まっていた。

「いえ、それが……」

ユーノが簡潔にシルヴィーの言う溺愛を説明すると、その場にいる者達は一様に頭を抱えた。

「それは、溺愛では無く……」
「監禁、薬漬け、精神の束縛は虐待です」
「シルヴィーの思考がたまに解らなくなる」

男性陣の意見はもっともだ。
だが、シルヴィーは前世であらゆるジャンルのゲームをしていたせいか、どれが溺愛なのか解らなくなっているようだ。

「色恋にはかなりポンコツだと思っていたが、そこまで拗らせているとは思わなかったぞ」
「良いんですよ、シルヴィーはそれで。余計なモノに意識を向けないだけですから」

うっとりと微笑むダドリー。
此処まで妙に拗らせているシルヴィーが唯一好きだ、と思い、婚約する時も嬉し涙を流したのだから、問題はないだろう。

「では、新年の舞踏会で」

ハロルドの宣言に皆、一礼をしその場を後にした。
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