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冒頭の叫びをもう一度。

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いつもの姿に戻ったダドリーにホッとしたのか、シルヴィーも自然と笑顔になる。

「ですが、遠慮はしません」

なんの宣言だ、と聞く前にシルヴィーは抱き上げられ、ベッドに押し倒されていた。

「どうして、こうなった」

と、頭を抱えたかったが、ベッドに押し倒されている状況では、出来るわけない。

「ダドリー、貴方、今自分が何をしてるのか分かってるの?」
「当たり前だろ。やっと貴女を独り占めできるんだから」

覆い被さっている男、今は我が家の執事のダドリーが悪い笑みを浮かべ、執拗なほどねっとりしたキスをする。

「考え直して」
「何を?」
「私、ヒロインじゃないですよ」
「関係ないね。ヒロインの意味、解らないが俺はシルヴィー、貴女を独占したい」

何度も舌を絡めるキスに息が上がり、抵抗なんて出来なくなっていた。

「夜は長いんだし、存分に俺に溺れろ」

腹が立つほどイケメンの元暗殺者で、乙女ゲームの攻略対象者は嬉々としてシルヴィーの制服を脱がしていく。

もう一回言う。
どうして、こうなった?
だけど、現実逃避をする訳にはいかない。

「ダドリー、私は結婚する迄、清い身体でいたいの」

必死に、脱がされ掛けている制服を両手で死守し、今は漆黒の瞳になっているダドリーを睨んだ。

「それにヒロインみたいに、結婚する前から体の関係を持つなんて、恥ずかし過ぎて嫌」

真っ赤になって訴えるシルヴィーを押し倒していたダドリーは突然、ゲラゲラと笑い出した。

「ヒロインってそう言う意味なのか。ならば、シルヴィーはヒロインなんかじゃ無い」

違う、と言いたいが乙女と名が付いてても、18禁ゲームのヒロインは、だいたいラブエンドだからと言って、結婚前にキャラと体の関係を持っている。

「キスはお許し願えますか?」

笑いながらいやに丁寧な聞き方をするダドリーの目が見れないけど、小さく頷いた。

「人前は恥ずかしいから……」

ダドリーに触れられるのは嫌じゃ無いが、人前は恥ずかしい。

「シルヴィーは本当に可愛いな」

今度は軽いキスで、押し倒していたシルヴィーをベッドに座らせた。

「じゃあ、幸せな結婚の為にも、本格的にジルコニア一族をぶっ潰していいね」

口調はぞんざいになったが、基本は何一つ変わっていないダドリーにシルヴィーは頷いた。

「何処まで根を張り巡らせているか解らないけど、王国の為にならない物は排除するべきです」
「では、伯爵にそう提言しますか」

一瞬で色っぽい空気が無くなり、強かで冷酷な空気を纏い、シルヴィーに手を差し出した。

「ラスティックの方はウィリアム殿下達が動くので、私達はジルコニア一族の方を請け負いましょう」

シルヴィーもダドリーの手を取り、平然と言う。

「流石、未来のクリスタル子爵夫人だ」
「……クリスタル子爵って、まさか」
「伯爵に聞いてくれ」
「聞かない方がいい気がする」

シルヴィーの返事にまた、ダドリーがゲラゲラと笑った。
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