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第二部 獣人武闘祭

第387話

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「心配いらないわ。意識を飛ばしただけよ。頭の中に直接『気』を入れてね」

「そ、そんなこと、できるんですかニャ?」

 呆けたように聞いてくるミャオに、私は頷いた。

「気を練って、入れるだけなら簡単よ。難しかったのは、殺さないように、気の量を加減すること。少なすぎたら意識は飛ばないし、多すぎると、頭が吹っ飛んじゃうからね。ミャオが踏ん張ってくれたおかげで、なんとかうまくいったわ」

「はにゃ~……さすが先生ですニャ。天下一の武芸者ニャ!」

「あらやだ。そんなに褒めても何も出ないわよ、うふふ。……さて、パトリックさん。タマラは渡してもらうわよ」

 私は、パトリックを押しのけるようにして、気絶したタマラを抱きかかえた。パトリックは、うろたえながらも、私に食って掛かる。

「こ、こんなことをして、タダで済むと思うのか? タマラは、デザイナーチャイルド計画の貴重な成功例であり、国の宝だ。そんなタマラを奪ったあなたを、レガリオは決して許さない。社会的にも、物理的にも、あなたを追い詰め、タマラを取り返すぞ!」

「でしょうね。だから、あなたにはレガリオに帰って、こう説明してもらうわ。『薬物のせいで精神的に不安定になったタマラは、レガリオのやり方に不信を抱き、私に襲い掛かって来た。私は自衛のため、最新式の魔導兵器を使い、タマラを殺してしまった。その破壊力は甚大で、死体は完全に消し飛んでしまった』ってね」

「な、なんだと? 私が、そんな嘘を言うと思ってるのか?」

「ええ」

「ふざけるな!」

 私は、激昂するパトリックの前で、人差し指を立てた。
 そこに、先程と同じように、『気』が集まっていく。
 そして、指先をパトリックの胸に押し付けると、『気』を消した。

「な、なんだ? おい、私に何をした!?」

 先ほど、目の前でタマラが意識を失うのを見ていたからだろう。パトリックは哀れなほどに狼狽し、自分の体の状態を確認するように、べたべたとあちこちを触っている。

 私は、事も無げに言った。

「たいしたことじゃないわ。あなたの心臓に、私の気を埋め込んだだけよ。サイコロ一個分くらいの、ちっぽけな気をね」

「し、心臓だと……?」

「気ってやつはね、医術では、発見も除去もできない。だから、お医者さんに相談しても無駄よ。もちろん悪魔祓いもね。んで、私はその気を、いつでも好きな時に爆発させることができる。この意味、わかるかしら?」
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