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第二部 獣人武闘祭
第375話
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ミャオが、タマラに声をかけた。
「タマラちゃん、タマラちゃん。聞いてたと思うけど、僕も行くニャ。これから仲良くしようニャ」
「ちっ」
「うぅっ、だんだん舌打ちされるのに慣れてきてる自分が悲しいニャ……」
私は、すぐにパトリックの部屋に行き、話を受けることを説明した。
彼は、喜びのためか、少し目を潤ませ、私の手を取った。
「ディーナさん、まさか、こんなに早く決断していただけるとは……これで、我々は、いえ、タマラは救われます。本当に、本当に、ありがとうございます……」
この人、本当に、心の底から、タマラのことを気にかけているのね……
彼となら、上手くやっていける。そう思った。
それから身支度をして、一度カーベルの町に帰ろうと思った(これから長い間留守にするのだから、一応、ミャオの道場の戸締りをキッチリしておかなければならない)のだが、タマラたっての願いで、もう一泊し、一日かけてグランディアの町を観光することになった。
「ねえ、ディーナ! 肩車して、肩車!」
「はいはい」
「せんせぇ! 僕もやってほしいニャ!」
「駄目! ディーナの肩は二つともあたしのなの!」
「にゃあぁ……暴君ニャ……でも、舌打ちされずにちゃんとお話しできたニャ」
その日はミャオも、ひさびさに武術のことを忘れ、楽しい休日となった。少しずつだけど、タマラもミャオに慣れてきたような気もする(いまだに返事のほとんどは舌打ちだが、何回かは会話が成立することもあった)。
大いにはしゃいで遊びまわったタマラとミャオは、夕方には寝てしまい、ちょっとだけ自由な時間ができた私は、怪我をしたアニーのお見舞いに行くこともできた(驚いたことに、彼女はすでにトレーニングを再開していた)。
「そっか。なっちゃん、レガリオに行くんだね」
「ええ。……また、お別れね」
「今度は、ちゃんと手紙、書いてよね」
「あなたこそね。レガリオに着いたら、すぐ連絡するわ」
そして私たちは、互いに抱き合った。
……これで、ひとまず心残りはなくなった。
安心して、レガリオに行くことができる。
ふう。
今日は、元気いっぱいな子供二人と一緒に、いろんなところを見て回ったから、ちょっぴり疲れちゃった。ホテルに戻り、時計を見る。まだ午後9時だったが、私はお風呂に入り、早々と眠ることにした。
・
・
・
「ディーナ。ねえ、起きて、ディーナってば」
タマラの声。
ゆさゆさと、揺さぶられている。
私は、目を覚ました。
まず最初に、時計を見る。
深夜2時。
私は、大あくびをかいた。
「んん……どうしたの、タマちゃん?」
トイレにでも行きたいのかしら?
そう思った私に、タマラは意外なことを言った。
「ノエルの匂いがするの」
「タマラちゃん、タマラちゃん。聞いてたと思うけど、僕も行くニャ。これから仲良くしようニャ」
「ちっ」
「うぅっ、だんだん舌打ちされるのに慣れてきてる自分が悲しいニャ……」
私は、すぐにパトリックの部屋に行き、話を受けることを説明した。
彼は、喜びのためか、少し目を潤ませ、私の手を取った。
「ディーナさん、まさか、こんなに早く決断していただけるとは……これで、我々は、いえ、タマラは救われます。本当に、本当に、ありがとうございます……」
この人、本当に、心の底から、タマラのことを気にかけているのね……
彼となら、上手くやっていける。そう思った。
それから身支度をして、一度カーベルの町に帰ろうと思った(これから長い間留守にするのだから、一応、ミャオの道場の戸締りをキッチリしておかなければならない)のだが、タマラたっての願いで、もう一泊し、一日かけてグランディアの町を観光することになった。
「ねえ、ディーナ! 肩車して、肩車!」
「はいはい」
「せんせぇ! 僕もやってほしいニャ!」
「駄目! ディーナの肩は二つともあたしのなの!」
「にゃあぁ……暴君ニャ……でも、舌打ちされずにちゃんとお話しできたニャ」
その日はミャオも、ひさびさに武術のことを忘れ、楽しい休日となった。少しずつだけど、タマラもミャオに慣れてきたような気もする(いまだに返事のほとんどは舌打ちだが、何回かは会話が成立することもあった)。
大いにはしゃいで遊びまわったタマラとミャオは、夕方には寝てしまい、ちょっとだけ自由な時間ができた私は、怪我をしたアニーのお見舞いに行くこともできた(驚いたことに、彼女はすでにトレーニングを再開していた)。
「そっか。なっちゃん、レガリオに行くんだね」
「ええ。……また、お別れね」
「今度は、ちゃんと手紙、書いてよね」
「あなたこそね。レガリオに着いたら、すぐ連絡するわ」
そして私たちは、互いに抱き合った。
……これで、ひとまず心残りはなくなった。
安心して、レガリオに行くことができる。
ふう。
今日は、元気いっぱいな子供二人と一緒に、いろんなところを見て回ったから、ちょっぴり疲れちゃった。ホテルに戻り、時計を見る。まだ午後9時だったが、私はお風呂に入り、早々と眠ることにした。
・
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「ディーナ。ねえ、起きて、ディーナってば」
タマラの声。
ゆさゆさと、揺さぶられている。
私は、目を覚ました。
まず最初に、時計を見る。
深夜2時。
私は、大あくびをかいた。
「んん……どうしたの、タマちゃん?」
トイレにでも行きたいのかしら?
そう思った私に、タマラは意外なことを言った。
「ノエルの匂いがするの」
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