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第二部 獣人武闘祭

第333話(実況席)

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「……今の、テレビで放送してよかったん? ほら、途中で、『しばらくお待ちください』とか、環境映像でも流した方がよかったんちゃう? あかんやろ、これ」

「い、一応、手が千切れたり、足が千切れたりしたわけじゃないですから。それに、過激な打撃戦はJ1グランプリの華ですし……」

「打撃戦っちゅうか、あんなん、一方的な撲殺やん」

「撲殺って……。ドラム選手は、まだ死んでませんよ、たぶん」

「でも、あないな目におうたら、もうファイターとしては終わりやな。たとえ命を拾ったとしても、ドラムの精神はボロボロや。あいつ、もう二度と戦えへんで。聞いたか? あの悲鳴。あのドラムが、赤ん坊みたいに泣き叫びよったんやで。潰れた喉から声を振り絞るようにして」

「凄かったですね。試合開始早々、ギブアップって言えないように、タマラ選手が立てた親指でドラム選手の喉を潰したの。見てるこっちがぐえってなっちゃいました」

「それからは、虐殺タイムの始まりやったな。生かさず殺さず、戦闘不能にならない程度で、殴る蹴る殴る蹴る。とんでもないパワーやったで、あのおちび。たぶん覚醒獣人やな。この目で見るのは、人生で二人目やで」

「ドラム選手が戦意を失って、リングの外に逃げようとするのを、片手で引きずり戻したのには背筋が震えましたよ。それから馬乗りになって、また殴る殴る殴る。ドラム選手が、降参の意思を示すためにタップしようとしてるのに、その手を叩き潰して、ひたすら殴る殴る殴る。ほんと、どんどん激しくなる嵐のような連打でした」

「せやな。もうなんにもできんくなったドラムを戦闘不能と判断して、レフェリーがリングの外から『勝負あり!』っちゅうたのに、あのおちび、聞こえとらんのか、聞こえとって、わざと無視したんか、無表情で攻撃を続けよったもんな。まるで、殺戮機械みたいに」

「レ、レフェリーの声が聞こえてて無視したってことは、さすがにないんじゃないでしょうか? それじゃ完全に、狂人じゃないですか」

「どうかな。あの狂った暴れっぷり、正直まともとは思えんで」

「うーん……」

「最終的には、ゴヘイのおっちゃんが乱入して、返り血で真っ赤になっとるおちびを羽交い締めにして、やっと止められたんやからな。いや、あのおっちゃんがおって良かったわ、あのおちびのパワーを止められるような怪力の持ち主っちゅうたら、ゴヘイのおっちゃんくらいやろ」

「一応お聞きしますが、シルヴァさんなら、あのタマラ選手と、どんなふうに戦います?」

「怖いから、戦いとうない」

「ですよね。それでは、今回の中継はここまで! 明日も熱戦を、見逃すな!」

「無理やりまとめよったな」
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