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第二部 獣人武闘祭

第281話

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「良い試合をするためには、良い精神状態を保たねばならない。それも、分かりますニャ?」

「そりゃ、そうでしょうね」

「ここからが重要ですニャ。先生が元カノさんと会うことを考えると、僕はなんだかイライラしますニャ。すると自律神経が乱れ、心身に様々な影響が出ますニャ。よって、先生は元カノさんと会うべきではないと考えますニャ」

「ま、まあ、理論的にはあってるけど、なんでそんなに私が元カノ……まあ、厳密に言うと元カノじゃないんだけど、と会うのが嫌なの?」

「なんででもニャ。まあ、僕も大人になったので、多少言葉を交わすくらいは許してやってもいいニャ。でも肉体的接触は厳禁ニャ。お手を触れないでくださいニャ」

「握手も駄目?」

「握手も駄目ですニャ」

「いつまで、触っちゃ駄目なの?」

「ずっとニャ」

「えぇ~……そんな横暴な……」

 ミャオは、私の胸の中で、唇を尖らせる。

「なんニャ、その態度は。やっぱり先生は、エロ先生ニャ」

「そのエロ先生っていうの、やめてよ……」

「エロい先生をエロ先生って呼んで何が悪いニャ」

 うっ、いけない。このままでは、また険悪な雰囲気になってしまう。
 ここは、私が折れておくべきだろう。

「それじゃ、J1グランプリ大会期間中は、もう、触らないようにする……それなら、さっきのミャオの『良い試合をしなければならない理論』に合致するでしょ?」

「くっ、ロジックを逆手に取られたニャ、こざかしいニャ。……まあ、今回はそれで勘弁してやるニャ」

 ミャオも、これ以上私と言い争いはしたくないようで、渋々ながら、矛を収めてくれた。

「ねえ、ミャオ」

「なんニャ?」

「ご飯、食べに行こっか」

「行くニャ」

「美味しいお店、見つけたんだ」

「へえ」

「居酒屋だけどね、スパゲッティが美味しいのよ」

「そりゃ、楽しみニャ」

 私たちは、そろって部屋を出た。
 隣り合って歩く二人は、いつも通りの距離感に戻っていた。





 そして、とうとう試合当日。

 ミャオは昼の12時に目を覚ました。
 コンディションを整える、計画通りである。

 しっかりと食事をとると、入念にストレッチをして、軽く宿の周りを走る。それから室内に戻り、これまた軽く動きの確認をして、あとはのんびりと過ごした。
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