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第二部 獣人武闘祭

第274話

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 カズネが、静かに語りだす。

「二ヶ月前、ディーナ様の道場を後にしてからも、私は胸の高鳴りを抑えられませんでした。あなたのことを想うと、胸が苦しくなり、気がつくと、私は今の姿に変貌していたのです……」

 熱っぽい瞳でこちらを見つめながら、カズネはそっと私の手を握ってきた。少し前まで、この体育館に集まった強者たちを投げ飛ばしていたとは思えない柔らかさと温もりに、私はドキッとする。

「えっ、なにっ、自分ら、そーいう関係なん? かぁー、ねーさん、純情そうな顔して、なかなかやるやないか。で、どうなん? もう、○○○したん?」

「すいませんシルヴァさん、ちょっと黙っててもらえます?」

「はーい」

 私はシルヴァの下品な質問をシャットアウトすると、カズネをじっと見つめる。
 カズネは二ヶ月前と同じように、恥ずかしがって視線を逸らした。

 風貌は大人びても、内面はそれほど変わっていないようである。色々と話したいことはあったが、とりあえず、今一番気になっていることを、聞いてみることにした。

「確かあなた、一度実家に帰るって言ってた気がするけど、それが、どうしてここに?」

 それも、なぜか狐の仮面をかぶった謎の武道家として。

「順を追って、お話ししますね。一度、実家には帰りました。その時に、ディーナ様との『血の契り』についても、父に話しました」

「血の契り!? なんか、やらしーな! なあなあ、『血の契り』って、なんなん? やっぱり、○○○なん?」

「シルヴァさん、黙って」

「あっ、はい。すんません」

 少しドスをきかせた低い声で私が言うと、シルヴァはすぐに黙った。
 カズネは、咳払いをして話を続ける。

「その……結論から言うと、父は、私とディーナ様との結婚を、認めないそうです」

「そう。まあ、ゾーダンクにとって、私は敵だからね。無理もないわ」

「いえ、そういうことではなく、父は、誰との結婚も認めないそうです」

「はっ?」

「お恥ずかしいのですが、父は私を溺愛しており、『結婚』の二文字を出しただけで、『いやだいやだワシの可愛いカズネちゃんは誰にも渡さない』と駄々をこねられてしまいました」

「あ、あのゾーダンクがそんな態度を……」

「お外では威厳がある立派なお方ですが、家の中では割と残念なお方なのです……」

「うーん、想像もつかないわ……」
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