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第二部 獣人武闘祭

第245話

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 普通なら、ニンニクの味とぶつかって、煩わしく感じそうなものだが、それが、見事に調和している。……いや、調和しているという柔和な表現ではなく、無理やり合体してしまったような、乱暴な美味しさと言った方が適切かもしれない。

 いくらでも、食べられる。

 気がつけば、私はお皿まで舐めかねない勢いで、スパゲティ・ナポリタンを完食していた。美味しかった。ごちそうさまでした。

「どうよ。安っぽい店だけど、料理はなかなか美味かっただろ」

「シンさん、絡みすぎだよ。お姉さん、困ってるじゃねーか」

 何度も私に声をかけてきた男性――シンさんが、仲間の一人に窘められる。
 私は、照れたようにはにかんで頭を下げると、会計を済ませ、店の外に出た。

 食後の火照った体に、夜風が気持ちいい。

 実にいいお店だった。
 今度、ミャオも連れてきてあげよう。

 なんだか、歌でも歌いたいような、良い気分である。私は、うろ覚えながら、まだ十代前半の頃に、私の故郷で流行した歌を口ずさむ。そして、飲み屋街のネオンに照らされた、柔らかな夜の闇に、身を溶かすように歩き始めるのだった。





「いい度胸だてめえっ! やんのかオラァッ!」

「てめえこそなんだオラアアァ! 俺が誰だか分かってんのかッ!」

 二人の男が、顔を赤くして怒鳴りあっている。
 いかにも盛り場の若者といった風情の、金髪の男と、長髪の男。
 どちらも、迫力を出すためにやたらとドスをきかせた、嫌な声だった。

 良い気分で飲み屋を出た私は、三十分ほど歩いた先で、酔っ払い同士が口喧嘩をしている場面に遭遇してしまったのだ。……あーあ、先程までの楽しい気分が台無しである。

 いつの間にか、口喧嘩は、互いの胸ぐらをつかみ合う、取っ組み合いに変わっていた。数人の酔っぱらいが、彼らを取り囲み、「やれやれ!」だの「ぶっ殺せ!」だの、無責任に争いを煽っている。

 こういう時間、こういう場所での、こういう男たちの喧嘩は、基本的に、どちらかが良くて、どちらかが悪いということは、ない。

 だいたいの場合、どっちも悪いのだ。しらふなら笑って済ませられるようなくだらないことで、大喧嘩が始まる。酔っ払いの争いなんて、そんなものである。
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