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第二部 獣人武闘祭
第179話
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犬耳少女は、大きくすぅっと息を吸い、同じリズムで、吐く。
それから、声を張り上げた。
「私、カズネと申します! 一手御指南をお願い致します!」
むっ。
これは。
「こいつ、道場破りニャ!」
そう、『一手御指南をお願い致します』とは、道場破りの常套句だ。
「カーベルの町の掲示板で、こちらの道場の場所を知り、やってまいりました。ディーナ様、若輩の私に、一手御指南をお願い致します!」
うーむ、入門希望者が来るかと思って貼っておいた門下生募集のチラシだが、まさか道場破りがやって来るとは。まあ、せっかく来たのだし、相手をしてあげればいいか。
「わかりました。お相手しま……」
「ちょっと待つニャ! 先生とやりたければ、まずはこの僕を倒してからにするニャ!」
承諾しかけた私をちらりと見て、その言葉を遮るように、ミャオが叫びをあげる。
「あなたは?」
「僕はこの道場の持ち主、ネコカラテ使いのミャオニャ!」
「えっ? ここは、勇者パーティーの一員として、魔王軍獣将隊と戦っておられた、聖女ディーナ様の道場ではないのですか?」
おや、と思う。
聖女ディーナが、勇者ラジアスと共に魔王軍と戦っていたことを知っている人は少なくないだろうが、『魔王軍獣将隊』などと、魔王軍の個別の部隊名をあげる人は相当にめずらしい。この子、勇者パーティーマニアか何かかしら。
「ニャッ。先生は僕の先生ニャ。とっても強いし、尊敬してるニャ。だからここは先生の道場ニャ。でも持ち主は僕ニャ」
「すいません、言ってる意味がよく分からないのですが……」
「ごちゃごちゃうるせーニャ! とにかく先生とやりたいなら僕を倒してからニャ!」
「わ、わかりましたから、そんなに怒鳴らないでください」
「ガルルルルル……!」
ミャオは牙をむき出しにして犬耳少女――カズネを威嚇する。
何をそんなに怒っているのだろう。
元々短気で狂暴なところはあるが、こんなに荒れてるミャオは初めて見た。
カズネがどれだけの腕前か分からない以上、このまま試合をさせては大怪我させてしまうかもしれない。私はミャオをなだめるように、その肩に手を置いた。
「ミャオ、ちょっと落ち着きなさい。なに怒ってるの?」
「別に怒ってないニャ! 悟りを開いた賢者並に落ち着いてるニャ! ガルルルルル!」
「こんな狂暴な賢者は嫌ね……」
それから、声を張り上げた。
「私、カズネと申します! 一手御指南をお願い致します!」
むっ。
これは。
「こいつ、道場破りニャ!」
そう、『一手御指南をお願い致します』とは、道場破りの常套句だ。
「カーベルの町の掲示板で、こちらの道場の場所を知り、やってまいりました。ディーナ様、若輩の私に、一手御指南をお願い致します!」
うーむ、入門希望者が来るかと思って貼っておいた門下生募集のチラシだが、まさか道場破りがやって来るとは。まあ、せっかく来たのだし、相手をしてあげればいいか。
「わかりました。お相手しま……」
「ちょっと待つニャ! 先生とやりたければ、まずはこの僕を倒してからにするニャ!」
承諾しかけた私をちらりと見て、その言葉を遮るように、ミャオが叫びをあげる。
「あなたは?」
「僕はこの道場の持ち主、ネコカラテ使いのミャオニャ!」
「えっ? ここは、勇者パーティーの一員として、魔王軍獣将隊と戦っておられた、聖女ディーナ様の道場ではないのですか?」
おや、と思う。
聖女ディーナが、勇者ラジアスと共に魔王軍と戦っていたことを知っている人は少なくないだろうが、『魔王軍獣将隊』などと、魔王軍の個別の部隊名をあげる人は相当にめずらしい。この子、勇者パーティーマニアか何かかしら。
「ニャッ。先生は僕の先生ニャ。とっても強いし、尊敬してるニャ。だからここは先生の道場ニャ。でも持ち主は僕ニャ」
「すいません、言ってる意味がよく分からないのですが……」
「ごちゃごちゃうるせーニャ! とにかく先生とやりたいなら僕を倒してからニャ!」
「わ、わかりましたから、そんなに怒鳴らないでください」
「ガルルルルル……!」
ミャオは牙をむき出しにして犬耳少女――カズネを威嚇する。
何をそんなに怒っているのだろう。
元々短気で狂暴なところはあるが、こんなに荒れてるミャオは初めて見た。
カズネがどれだけの腕前か分からない以上、このまま試合をさせては大怪我させてしまうかもしれない。私はミャオをなだめるように、その肩に手を置いた。
「ミャオ、ちょっと落ち着きなさい。なに怒ってるの?」
「別に怒ってないニャ! 悟りを開いた賢者並に落ち着いてるニャ! ガルルルルル!」
「こんな狂暴な賢者は嫌ね……」
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