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第146話(ユーゲンス視点)

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「誰が決めたのかもわからねぇルールを守ることに価値があるなんて、俺にはとても思えないね。血のつながりのあるなしも、男も女も関係ねぇ、技を継ぎたい奴がいるなら、教えてやればいいし、覚えたがる奴が誰もいないってんなら、技はそのまま消えていく。それでいいじゃねぇか」

「ノッドル、貴様……」

「だいたいよ、マッギロウもエリスも、死んだ女房との間に子供が生まれなかった俺にとっちゃ、実の子同然さ。……親父には言ってなかったが、この際だ、伝えておくか。俺はよ、種無しなんだ。昔、医者にそう診断された。だから、親父には悪いが、どうやったって、血のつながりのある子供は、できないんだよ」

「種無し……それはつまり、生殖能力がない……ということか……?」

「ああ。そんな俺に、マッギロウとエリス――二人も、子供ができたんだ、幸せなことだよ。血のつながりなんて、大した問題じゃねぇ。二人とも、可愛い我が子だよ。ふふ、エリスの方は、ちと血の気が多すぎて困るがな。でも、いつかいい師匠に巡りあえば、ちゃんとするさ。あいつは純真で、根が優しいからな」

 ワシはもう、ノッドルの話を聞いていなかった。

 ノッドルに生殖能力がないならば、もはや、ルセイン家の血筋を残していく方法はない。それはつまり、『秘拳』の終焉を意味する。我がルセイン家の誇りが消える――その事実は、ワシの心をぐちゃぐちゃに踏みにじり、破壊した。

 ワシは、うわごとのように、ぶつぶつと呟く。
 いや、それは『うわごとのように』ではなく、うわごとそのものだった。

「ノッドル……貴様……どうするのだ……『エルフ式魔術ボクシング』がスポーツ化し、衰退していく中、我がルセイン家には、最後に残された本物の必殺拳を伝えていく責任があるのに……どうするのだ……どうしてくれるのだ……」

「なあ親父。必殺拳とか、責任とか、もういいじゃねぇか、そんなこと。今、エルフの世界は平和だ。こんな時代に、必殺の拳を磨き続けて、何の意味がある? 『エルフ式魔術ボクシング』のスポーツ化、大いに結構じゃねぇか。『誰でも安全に鍛錬ができるように』って言う、ストッフェン会長の主張は正しいよ。親父には、受け入れがたいだろうけどな」

 何故だ……息子よ……これほど絶望し、打ちひしがれている父に対し、何故そんなことを言う……何故、よりにもよって、あのストッフェンを擁護するのだ……このワシから居場所を奪った、あんな奴を、何故……
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