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第115話

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 そしてマッギロウは、ファイティングポーズをとる。

 むっ。

 それは、一目でわかる、見事な構えだった。拳を持ち上げ、ファイティングポーズをとった瞬間、マッギロウの巨体が、さらに一回り迫力を増したように見える。

 武術の世界では、相手の構えを見れば、大体の実力が分かるとよく言われるが、それは事実である。実力のない者や、ただ体が大きいだけの者が、上辺だけ格好つけた構えをとっても、今のマッギロウのような迫力は出ない。

 まさしく、堂に入っている。マッギロウはきっと、毎日どこかで、『エルフ式魔術ボクシング』の鍛錬をしているのだろう。……しかし、なんだろう。感心すると同時に、彼の戦闘姿勢には、妙な違和感を覚える。

 その違和感の正体に答えを出せぬまま、スパーリングは始まった。

 ……マッギロウは、強かった。

 パンチのひとつひとつが、凄まじい風切り音を立てて空を切り裂く。
 それはまるで、太い鉄の柱を振り回しているかのようだった。

 私は攻撃をかわしながら、冷静に、マッギロウの実力を測る。

 どうやらマッギロウは、身体能力を強化する『魔闘身』も、拳の威力を高める『魔拳』も、使っていないようだ。いや、あるいは使っているのかもしれないが、魔力の波動は非常に弱い。これではどちらにしろ、使っていないのと同じだろう。

 ……そうか。彼は、オークとの混血だから、きっと、純血のエルフのように魔力が高くないのね。だから、エリスが使っているような、強力な『魔拳』や『魔闘身』は使えないんだ。

 だがそもそも、マッギロウほどの体格があれば、拳の威力を高める必要も、これ以上身体能力を強化する必要も、まったくない。並外れた巨体というものは、それだけで肉の凶器だ。恐らく、マッギロウが軽く平手打ちするだけで、常人なら、体中の骨がグシャグシャになって即死するに違いない。

 しかも、マッギロウは、ただでかいだけの男ではない。動きはきちんとしたボクシングの理にかなっているし、スピードだって相当に素早い。かなり完成度の高いファイターだ。生まれ持った体格の素晴らしさを加味すれば、世界中探しても、これほどの闘士はそういないと思う。

 このエルフの里を出て、格闘技の表舞台に姿をあらわせば、あっという間に何かの競技のチャンピオンになってしまいそうである。
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