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第13話
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「『お坊さんの真似事』とは、手厳しいですな。人間のあなたはご存じないでしょうが、魔物にも信仰は存在します。拙僧は、れっきとした坊主ですよ」
「そ、そうなの。ごめんなさい。……じゃあ、えっと、戦う前の約束通り、教えてもらえるかしら。あなたが何故、私のことを知っているのかを」
魔物は、ほんの少しだけ沈黙し、それから、口を開いた。
「聖女ディーナ様。紅魔騎士ベイロンを覚えていらっしゃいますか?」
紅魔騎士ベイロン……
その名前、覚えがある。
もうずいぶん前に戦ったことのある、魔王軍の将の名前だ。
あの頃はまだ、戦士も離脱しておらず、勇者、魔導師、戦士、私の、ベストメンバーと呼んでもいい4人パーティーで戦って、それでも苦戦した、強力な相手だった。
私は小さく頷き、「覚えているわ」と言った。
それに呼応するように魔物も頷き、滔々と語り始める。
「拙僧は、そのベイロン様の、副官でした。勇者パーティーに敗北したベイロン様は、魔王軍の将としての任を解かれ、失脚。勇者たちにつけられた傷がもとで、数ヶ月後、亡くなりました。その際、拙僧は、魔王軍を去りました。……拙僧が忠誠を誓っていたのは魔王様ではなく、ベイロン様だったからです」
なるほど。元魔王軍で、将の副官を務めるほどの魔物なら、私のことを詳しく知っていても不思議ではない。……しかし、ベイロンが死んでいたとは。彼は魔物でありながら、卑劣な戦法を好まない堂々たる騎士だったので、なんとも複雑な気分である。
私は思わず、問いかけた。
「ベイロンを倒した勇者パーティー……と言うより、私のこと、恨んでる?」
暗闇の中、魔物は首を左右に振った。
「いいえ。死は、真剣勝負の結果にすぎません。敗者が勝者を恨むことほど、見苦しいものはない。高度な戦いであればあるほど、勝敗は紙一重。一歩間違えれば、死んでいたのはあなたたちの方だったのかもしれないのです。あなたたちの戦いぶりを尊敬こそすれ、決して恨んだりなどいたしません。ただ……」
「ただ?」
「ベイロン様にお仕えすることが、拙僧の人生のすべてでした。だから、ベイロン様亡きあと、拙僧にはもう、生きる目的がなくなってしまったのです。それで、各地を放浪し、それにも疲れた結果、最後にたどり着いたのが、この洞穴です。拙僧はここで、余生を送ることに決めました」
「わからないわね。洞穴で静かに余生を送ってるだけのあなたが、どうして賞金首なんかにされてるの?」
「拙僧は魔物ですから、放浪の旅の最中、数多くの冒険者に襲われました。そして拙僧は、その全員を、返り討ちにしました。……別段、命を奪うつもりはありませんでしたが、手加減もしなかった。それ故、少なくない数の人間を、殺してしまっているのです。だから。懸賞首になるのは当然なのですよ」
「そ、そうなの。ごめんなさい。……じゃあ、えっと、戦う前の約束通り、教えてもらえるかしら。あなたが何故、私のことを知っているのかを」
魔物は、ほんの少しだけ沈黙し、それから、口を開いた。
「聖女ディーナ様。紅魔騎士ベイロンを覚えていらっしゃいますか?」
紅魔騎士ベイロン……
その名前、覚えがある。
もうずいぶん前に戦ったことのある、魔王軍の将の名前だ。
あの頃はまだ、戦士も離脱しておらず、勇者、魔導師、戦士、私の、ベストメンバーと呼んでもいい4人パーティーで戦って、それでも苦戦した、強力な相手だった。
私は小さく頷き、「覚えているわ」と言った。
それに呼応するように魔物も頷き、滔々と語り始める。
「拙僧は、そのベイロン様の、副官でした。勇者パーティーに敗北したベイロン様は、魔王軍の将としての任を解かれ、失脚。勇者たちにつけられた傷がもとで、数ヶ月後、亡くなりました。その際、拙僧は、魔王軍を去りました。……拙僧が忠誠を誓っていたのは魔王様ではなく、ベイロン様だったからです」
なるほど。元魔王軍で、将の副官を務めるほどの魔物なら、私のことを詳しく知っていても不思議ではない。……しかし、ベイロンが死んでいたとは。彼は魔物でありながら、卑劣な戦法を好まない堂々たる騎士だったので、なんとも複雑な気分である。
私は思わず、問いかけた。
「ベイロンを倒した勇者パーティー……と言うより、私のこと、恨んでる?」
暗闇の中、魔物は首を左右に振った。
「いいえ。死は、真剣勝負の結果にすぎません。敗者が勝者を恨むことほど、見苦しいものはない。高度な戦いであればあるほど、勝敗は紙一重。一歩間違えれば、死んでいたのはあなたたちの方だったのかもしれないのです。あなたたちの戦いぶりを尊敬こそすれ、決して恨んだりなどいたしません。ただ……」
「ただ?」
「ベイロン様にお仕えすることが、拙僧の人生のすべてでした。だから、ベイロン様亡きあと、拙僧にはもう、生きる目的がなくなってしまったのです。それで、各地を放浪し、それにも疲れた結果、最後にたどり着いたのが、この洞穴です。拙僧はここで、余生を送ることに決めました」
「わからないわね。洞穴で静かに余生を送ってるだけのあなたが、どうして賞金首なんかにされてるの?」
「拙僧は魔物ですから、放浪の旅の最中、数多くの冒険者に襲われました。そして拙僧は、その全員を、返り討ちにしました。……別段、命を奪うつもりはありませんでしたが、手加減もしなかった。それ故、少なくない数の人間を、殺してしまっているのです。だから。懸賞首になるのは当然なのですよ」
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