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第116話(リーゼル視点)

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「『魔法使いにも、優秀なものと、そうでないものがいる。より優れた血統の魔法使いが世界を導くために、劣ったものは排除しなければならない』って。そして、会を二つの派閥に分け、対立を促すの。ふふ、ふふふ、どっちの派閥にも、『あなたたちに期待しているわ』って、甘い言葉を囁いてね」

「…………」

「そうすれば、どちらの派閥も、『自分たちこそが、リーダーから信任を受けた優秀な魔法使いだ』と主張し、すぐに、派閥対派閥の殺し合いが始まるわ。『魔法使い優生思想』なんて、幼稚な選民思想にかぶれてるような馬鹿どもだからね。一度対立したら、行くとこまで行くしかないのよ。あは、あははっ、さあ、第二ラウンドのスタートよ」

 パンッと乾いた音がした。
 フェルヴァが、離していた右手と左手を、軽く叩いて合わせたのだ。

「そして、生き残った優秀な魔法使いたちを、私はしばらくの間、それなりに可愛がってあげるわ。で、ある日突然、こう告げるの。『本当の意味で私の寵愛を受けられるのは、たった一人だけ。残った皆、全員で殺し合いなさい。最終戦争よ。勝ち残った最後の一人を、私は全力で愛してあげる』ってね。ふふふ、第三ラウンド開始ってわけね」

 まだか。
 この狂った話は、まだ続くのか。

 俺は、眩暈がした。

「で、最後の一人を私が殺して、人類絶滅完了。どう? なかなか良い計画でしょ?」

 連休の計画を一生懸命に語った子供のようにニコニコと笑うフェルヴァ。
 俺は、ずっと閉じられていた唇をやっとこさ開き、短く言う。

「そんなバカげた目論見、本当に上手くいくと思ってるのか?」

「もちろん、思ってるわ。姉さんも知ってるでしょ? 『至高なる魔女の会』の、私に対する心酔っぷりを。あいつら、私が戦えって言ったら、皆喜んで、ボロボロになって死ぬまで戦うわ。なんだって、思い通りになる」

「……それは、そうかもしれない。でも、いくら『至高なる魔女の会』の規模を拡大しても、全世界の軍隊に一斉攻撃を仕掛けるなんて、不可能に決まってる。魔法使いの数は、一般人に比べて、はるかに少ないんだからな」

「それが、そうでもないのよね。勉強家の姉さんなら、『一般人を魔法使いにする手術』って、知ってるでしょ? ……私、あれ、できるのよ。しかも、論文に書いてあるような、10パーセント以下の成功率じゃなく、私なら50パーセントの確率で成功させることができるの」

 フェルヴァは左手と右手を小刻みに揺すって、手術をするような身振りをした。
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