21 / 24
第21話(ジェイリアム視点)
しおりを挟む
「エルディット・マーク2。この国に嫌気がさして出ていく連中なら、戻って来ることはないだろうし、検疫上の心配もない。特権階級と違って、外国に対するコネもない。何も、殺すことはなかったんじゃないか?」
エルディット・マーク2は、笑ってこう言った。
「確かにその通りですが、この国から出ていく人間なら、生かしておく理由もありません。新しく搭載した自動追尾レーザーのテストもしたかったので、全員処分することにしました」
俺は、「そうか」とだけ返事をした。
……もう、わかっていた。
俺は、どこかで道を間違えた。
いったいどこから?
きっと、最初からだろう。
俺は、あの聖女エルディットを模した守護神を作ろうとして、とてつもない悪魔を作ってしまったのだ。……もう、誰にもエルディット・マーク2は止められない。
彼女自身が開発したレーザー兵器は、人間が作った、この世のどんな武器よりも優れている。何せ、もはや狙いをつける必要すらなく、自分への敵意を察知しただけで、勝手にレーザーが発射され、何人敵がいたとしても、まとめて殺してしまうのだから。
あるいは、新型のエルディット・マーク3を作れば、エルディット・マーク2を止められたかもしれないが、それは不可能だ。人工聖女の動力源である魔導石はもうないし、魔法科学の技術者たちも、すでに全員処刑されている。エルディット・マーク2の作成した『将来不正を犯す可能性がある者たち』のリストに載っていたからな。
……今となっては、あのリストが本当に正しいものだったのかも怪しいものだが。
俺は、知っている。エルディット・マーク2が、夜な夜な町を徘徊し、少しずつ人間を『処分』していることを。
彼女は、気がついたのだ。
恐らくは、ずっと昔に。
『完璧なる平和』を達成するために、最も不要なのは、人間であることを。
この世のありとあらゆる生物の中で、『大量の人間』ほど管理が難しい生物は存在しない。それぞれが異なる人格を持ち、感情的で、それでいて知能は発達しており、好き勝手に動き回る。人間とは、『完璧なる平和』にとってのガンそのものだと、エルディット・マーク2は判断したのだろう。
だから、少しずつ、少しずつ、人間を処分しているのだ。
まるで、害虫駆除をするように。
俺も、そのうち処分されるだろう。
だから、その前に、エルディット・マーク2に尋ねた。
どうしても、わからないことがあったからだ。
「なあ、エルディット・マーク2。どうして、レーザーを使って、一斉に人間を殺さないんだ? お前がその気になれば、半日とかからず、国中の人間を処分できるだろう?」
エルディット・マーク2は、笑ってこう言った。
「確かにその通りですが、この国から出ていく人間なら、生かしておく理由もありません。新しく搭載した自動追尾レーザーのテストもしたかったので、全員処分することにしました」
俺は、「そうか」とだけ返事をした。
……もう、わかっていた。
俺は、どこかで道を間違えた。
いったいどこから?
きっと、最初からだろう。
俺は、あの聖女エルディットを模した守護神を作ろうとして、とてつもない悪魔を作ってしまったのだ。……もう、誰にもエルディット・マーク2は止められない。
彼女自身が開発したレーザー兵器は、人間が作った、この世のどんな武器よりも優れている。何せ、もはや狙いをつける必要すらなく、自分への敵意を察知しただけで、勝手にレーザーが発射され、何人敵がいたとしても、まとめて殺してしまうのだから。
あるいは、新型のエルディット・マーク3を作れば、エルディット・マーク2を止められたかもしれないが、それは不可能だ。人工聖女の動力源である魔導石はもうないし、魔法科学の技術者たちも、すでに全員処刑されている。エルディット・マーク2の作成した『将来不正を犯す可能性がある者たち』のリストに載っていたからな。
……今となっては、あのリストが本当に正しいものだったのかも怪しいものだが。
俺は、知っている。エルディット・マーク2が、夜な夜な町を徘徊し、少しずつ人間を『処分』していることを。
彼女は、気がついたのだ。
恐らくは、ずっと昔に。
『完璧なる平和』を達成するために、最も不要なのは、人間であることを。
この世のありとあらゆる生物の中で、『大量の人間』ほど管理が難しい生物は存在しない。それぞれが異なる人格を持ち、感情的で、それでいて知能は発達しており、好き勝手に動き回る。人間とは、『完璧なる平和』にとってのガンそのものだと、エルディット・マーク2は判断したのだろう。
だから、少しずつ、少しずつ、人間を処分しているのだ。
まるで、害虫駆除をするように。
俺も、そのうち処分されるだろう。
だから、その前に、エルディット・マーク2に尋ねた。
どうしても、わからないことがあったからだ。
「なあ、エルディット・マーク2。どうして、レーザーを使って、一斉に人間を殺さないんだ? お前がその気になれば、半日とかからず、国中の人間を処分できるだろう?」
12
お気に入りに追加
221
あなたにおすすめの小説
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
わたくし、お飾り聖女じゃありません!
友坂 悠
ファンタジー
「この私、レムレス・ド・アルメルセデスの名において、アナスターシア・スタンフォード侯爵令嬢との間に結ばれた婚約を破棄することをここに宣言する!」
その声は、よりにもよってこの年に一度の神事、国家の祭祀のうちでもこの国で最も重要とされる聖緑祭の会場で、諸外国からの特使、大勢の来賓客が見守る中、長官不在の聖女宮を預かるレムレス・ド・アルメルセデス王太子によって発せられた。
ここ、アルメルセデスは神に護られた剣と魔法の国。
その聖都アルメリアの中央に位置する聖女宮広場には、荘厳な祭壇と神楽舞台が設置され。
その祭壇の目の前に立つ王太子に向かって、わたくしは真意を正すように詰め寄った。
「理由を。せめて理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「君が下級貴族の令嬢に対していじめ、嫌がらせを行なっていたという悪行は、全て露見しているのだ!」
「何かのお間違いでは? わたくしには全く身に覚えがございませんが……」
いったい全体どういうことでしょう?
殿下の仰っていることが、わたくしにはまったく理解ができなくて。
♢♢♢
この世界を『剣と魔法のヴァルキュリア』のシナリオ通りに進行させようとしたカナリヤ。
そのせいで、わたくしが『悪役令嬢』として断罪されようとしていた、ですって?
それに、わたくしの事を『お飾り聖女』と呼んで蔑んだレムレス王太子。
いいです。百歩譲って婚約破棄されたことは許しましょう。
でもです。
お飾り聖女呼ばわりだけは、許せません!
絶対に許容できません!
聖女を解任されたわたくしは、殿下に一言文句を言って帰ろうと、幼馴染で初恋の人、第二王子のナリス様と共にレムレス様のお部屋に向かうのでした。
でも。
事態はもっと深刻で。
え? 禁忌の魔法陣?
世界を滅ぼすあの危険な魔法陣ですか!?
※アナスターシアはお飾り妻のシルフィーナの娘です。あちらで頂いた感想の中に、シルフィーナの秘密、魔法陣の話、そういたものを気にされていた方が居たのですが、あの話では書ききれなかった部分をこちらで書いたため、けっこうファンタジー寄りなお話になりました。
※楽しんでいただけると嬉しいです。
偽物の女神と陥れられ国を追われることになった聖女が、ざまぁのために虎視眈々と策略を練りながら、辺境の地でゆったり楽しく領地開拓ライフ!!
銀灰
ファンタジー
生まれたときからこの身に宿した聖女の力をもって、私はこの国を守り続けてきた。
人々は、私を女神の代理と呼ぶ。
だが――ふとした拍子に転落する様は、ただの人間と何も変わらないようだ。
ある日、私は悪女ルイーンの陰謀に陥れられ、偽物の女神という烙印を押されて国を追いやられることとなった。
……まあ、いいんだがな。
私が困ることではないのだから。
しかしせっかくだ、辺境の地を切り開いて、のんびりゆったりとするか。
今まで、そういった機会もなかったしな。
……だが、そうだな。
陥れられたこの借りは、返すことにするか。
女神などと呼ばれてはいるが、私も一人の人間だ。
企みの一つも、考えてみたりするさ。
さて、どうなるか――。
孤島送りになった聖女は、新生活を楽しみます
天宮有
恋愛
聖女の私ミレッサは、アールド国を聖女の力で平和にしていた。
それなのに国王は、平和なのは私が人々を生贄に力をつけているからと罪を捏造する。
公爵令嬢リノスを新しい聖女にしたいようで、私は孤島送りとなってしまう。
島から出られない呪いを受けてから、転移魔法で私は孤島に飛ばさていた。
その後――孤島で新しい生活を楽しんでいると、アールド国の惨状を知る。
私の罪が捏造だと判明して国王は苦しんでいるようだけど、戻る気はなかった。
聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです
ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」
宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。
聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。
しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。
冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。
必要なくなったと婚約破棄された聖女は、召喚されて元婚約者たちに仕返ししました
珠宮さくら
ファンタジー
派遣聖女として、ぞんざいに扱われてきたネリネだが、新しい聖女が見つかったとして、婚約者だったスカリ王子から必要ないと追い出されて喜んで帰国しようとした。
だが、ネリネは別の世界に聖女として召喚されてしまう。そこでは今までのぞんざいさの真逆な対応をされて、心が荒んでいた彼女は感激して滅びさせまいと奮闘する。
亀裂の先が、あの国と繋がっていることがわかり、元婚約者たちとぞんざいに扱ってきた国に仕返しをしつつ、ネリネは聖女として力を振るって世界を救うことになる。
※全5話。予約投稿済。
【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!
隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。
※三章からバトル多めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる