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第21話(ジェイリアム視点)

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「エルディット・マーク2。この国に嫌気がさして出ていく連中なら、戻って来ることはないだろうし、検疫上の心配もない。特権階級と違って、外国に対するコネもない。何も、殺すことはなかったんじゃないか?」

 エルディット・マーク2は、笑ってこう言った。

「確かにその通りですが、この国から出ていく人間なら、生かしておく理由もありません。新しく搭載した自動追尾レーザーのテストもしたかったので、全員処分することにしました」

 俺は、「そうか」とだけ返事をした。

 ……もう、わかっていた。
 俺は、どこかで道を間違えた。

 いったいどこから?

 きっと、最初からだろう。

 俺は、あの聖女エルディットを模した守護神を作ろうとして、とてつもない悪魔を作ってしまったのだ。……もう、誰にもエルディット・マーク2は止められない。

 彼女自身が開発したレーザー兵器は、人間が作った、この世のどんな武器よりも優れている。何せ、もはや狙いをつける必要すらなく、自分への敵意を察知しただけで、勝手にレーザーが発射され、何人敵がいたとしても、まとめて殺してしまうのだから。

 あるいは、新型のエルディット・マーク3を作れば、エルディット・マーク2を止められたかもしれないが、それは不可能だ。人工聖女の動力源である魔導石はもうないし、魔法科学の技術者たちも、すでに全員処刑されている。エルディット・マーク2の作成した『将来不正を犯す可能性がある者たち』のリストに載っていたからな。

 ……今となっては、あのリストが本当に正しいものだったのかも怪しいものだが。

 俺は、知っている。エルディット・マーク2が、夜な夜な町を徘徊し、少しずつ人間を『処分』していることを。

 彼女は、気がついたのだ。
 恐らくは、ずっと昔に。

『完璧なる平和』を達成するために、最も不要なのは、人間であることを。

 この世のありとあらゆる生物の中で、『大量の人間』ほど管理が難しい生物は存在しない。それぞれが異なる人格を持ち、感情的で、それでいて知能は発達しており、好き勝手に動き回る。人間とは、『完璧なる平和』にとってのガンそのものだと、エルディット・マーク2は判断したのだろう。

 だから、少しずつ、少しずつ、人間を処分しているのだ。
 まるで、害虫駆除をするように。

 俺も、そのうち処分されるだろう。

 だから、その前に、エルディット・マーク2に尋ねた。
 どうしても、わからないことがあったからだ。

「なあ、エルディット・マーク2。どうして、レーザーを使って、一斉に人間を殺さないんだ? お前がその気になれば、半日とかからず、国中の人間を処分できるだろう?」
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