14 / 24
第14話(ジェイリアム視点)
しおりを挟む
エルディット・マーク2の言っていることは、正論だった。
当然だ、機械の頭脳が導き出した、完璧な答え。
その答えの中に、間違いなどあるはずがない。
……残念だが、パウレンスの処刑は、おこなわなければならないだろう。
エルディット・マーク2の言う通り、相手によって罰の程度を変えていては、法治国家は成り立たない。俺は『完璧なる国』の王として、国法を曲げるわけにはいかない。
しかし……
「い、一族皆殺しは、いくらなんでも、やりすぎではないか……? パウレンスは少し前に、子供が生まれたばかりだ。俺も抱かせてもらったことがある。とても無垢で、愛らしい赤ん坊だ……。一族皆殺しとなれば、その赤ん坊も殺さなくてはならない。それは、あまりにも……」
エルディット・マーク2は、いつも通りの微笑を浮かべ、理路整然と言葉を述べていく。
「陛下。『赤子がいたので一族は処刑を免れた』という前例を作れば、これから先、悪知恵の回る者は皆、横領をする前に子を成しておくことでしょう。罪人を裁く際、特例があってはなりません。いかなる理由があろうとも罪は罪。いかなる立場であろうとも、罰は罰です。どうか、ご決断を」
「う……うぅ……」
……俺は結局、エルディット・マーク2の言う通りにした。
彼女の言っていることは厳しいが、明らかに、正しい理屈だったからだ。
・
・
・
最近、夢見が悪い。
しばしば、パウレンスの夢を見る。
俺が処刑を決断したときの、絶望した彼の顔を。
夢の中で、赤ん坊の泣き声が聞こえる。
パウレンスの一族が、俺を責めているのか。
それとも、俺の罪悪感が見せている、ただの悪夢に過ぎないのか。
……だが、すべては、仕方なかったことだ。厳しい決断だったが、正しい決断だったと、俺は信じている。パウレンスのことが見せしめとなり、これからは、公金横領のような大罪を犯す者もいなくなるだろう。
・
・
・
しかし、特権階級による不正は、無くならなかった。
頻度こそ少なくなったものの、どうしても、ゼロにはならない。
何故だ。
皆、パウレンスの一族に起きた悲劇を知っているはずなのに。
不正がバレたら、自分たちの一族が地獄を見ると知っていて、何故悪事を犯す?
当然だ、機械の頭脳が導き出した、完璧な答え。
その答えの中に、間違いなどあるはずがない。
……残念だが、パウレンスの処刑は、おこなわなければならないだろう。
エルディット・マーク2の言う通り、相手によって罰の程度を変えていては、法治国家は成り立たない。俺は『完璧なる国』の王として、国法を曲げるわけにはいかない。
しかし……
「い、一族皆殺しは、いくらなんでも、やりすぎではないか……? パウレンスは少し前に、子供が生まれたばかりだ。俺も抱かせてもらったことがある。とても無垢で、愛らしい赤ん坊だ……。一族皆殺しとなれば、その赤ん坊も殺さなくてはならない。それは、あまりにも……」
エルディット・マーク2は、いつも通りの微笑を浮かべ、理路整然と言葉を述べていく。
「陛下。『赤子がいたので一族は処刑を免れた』という前例を作れば、これから先、悪知恵の回る者は皆、横領をする前に子を成しておくことでしょう。罪人を裁く際、特例があってはなりません。いかなる理由があろうとも罪は罪。いかなる立場であろうとも、罰は罰です。どうか、ご決断を」
「う……うぅ……」
……俺は結局、エルディット・マーク2の言う通りにした。
彼女の言っていることは厳しいが、明らかに、正しい理屈だったからだ。
・
・
・
最近、夢見が悪い。
しばしば、パウレンスの夢を見る。
俺が処刑を決断したときの、絶望した彼の顔を。
夢の中で、赤ん坊の泣き声が聞こえる。
パウレンスの一族が、俺を責めているのか。
それとも、俺の罪悪感が見せている、ただの悪夢に過ぎないのか。
……だが、すべては、仕方なかったことだ。厳しい決断だったが、正しい決断だったと、俺は信じている。パウレンスのことが見せしめとなり、これからは、公金横領のような大罪を犯す者もいなくなるだろう。
・
・
・
しかし、特権階級による不正は、無くならなかった。
頻度こそ少なくなったものの、どうしても、ゼロにはならない。
何故だ。
皆、パウレンスの一族に起きた悲劇を知っているはずなのに。
不正がバレたら、自分たちの一族が地獄を見ると知っていて、何故悪事を犯す?
12
お気に入りに追加
224
あなたにおすすめの小説
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
義妹に婚約者を奪われて国外追放された聖女は、国を守護する神獣様に溺愛されて幸せになる
アトハ
恋愛
◆ 国外追放された聖女が、国を守護する神獣に溺愛されて幸せになるお話
※ 他の小説投稿サイトにも投稿しています
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
【完結】慈愛の聖女様は、告げました。
BBやっこ
ファンタジー
1.契約を自分勝手に曲げた王子の誓いは、どうなるのでしょう?
2.非道を働いた者たちへ告げる聖女の言葉は?
3.私は誓い、祈りましょう。
ずっと修行を教えを受けたままに、慈愛を持って。
しかし。、誰のためのものなのでしょう?戸惑いも悲しみも成長の糧に。
後に、慈愛の聖女と言われる少女の羽化の時。
お母さんに捨てられました~私の価値は焼き豚以下だそうです~【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公リネットの暮らすメルブラン侯爵領には、毎年四月になると、領主である『豚侯爵』に豚肉で作った料理を献上する独特の風習があった。
だが今年の四月はいつもと違っていた。リネットの母が作った焼き豚はこれまでで最高の出来栄えであり、それを献上することを惜しんだ母は、なんと焼き豚の代わりにリネットを豚侯爵に差し出すことを思いつくのである。
多大なショックを受けつつも、母に逆らえないリネットは、命令通りに侯爵の館へ行く。だが、実際に相対した豚侯爵は、あだ名とは大違いの美しい青年だった。
悪辣な母親の言いなりになることしかできない、自尊心の低いリネットだったが、侯爵に『ある特技』を見せたことで『遊戯係』として侯爵家で働かせてもらえることになり、日々、様々な出来事を経験して成長していく。
……そして時は流れ、リネットが侯爵家になくてはならない存在になった頃。無慈悲に娘を放り捨てた母親は、その悪行の報いを受けることになるのだった。
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
孤島送りになった聖女は、新生活を楽しみます
天宮有
恋愛
聖女の私ミレッサは、アールド国を聖女の力で平和にしていた。
それなのに国王は、平和なのは私が人々を生贄に力をつけているからと罪を捏造する。
公爵令嬢リノスを新しい聖女にしたいようで、私は孤島送りとなってしまう。
島から出られない呪いを受けてから、転移魔法で私は孤島に飛ばさていた。
その後――孤島で新しい生活を楽しんでいると、アールド国の惨状を知る。
私の罪が捏造だと判明して国王は苦しんでいるようだけど、戻る気はなかった。
聖女なんて御免です
章槻雅希
ファンタジー
「聖女様」
「聖女ではありません! 回復術師ですわ!!」
辺境の地ではそんな会話が繰り返されている。治癒・回復術師のアルセリナは聖女と呼ばれるたびに否定し訂正する。そう、何度も何十度も何百度も何千度も。
聖女断罪ものを読んでて思いついた小ネタ。
軽度のざまぁというか、自業自得の没落があります。
『小説家になろう』様・『Pixiv』様に重複投稿。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる