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第14話(ウルナイト視点)
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僕は、声を上げて笑った。
「あはっ、あはっ、あはははははははははっ! ハーディン! あなた、とうとう耄碌してしまったのですか? あんなケダモノが『神の使い』なわけないでしょう! 『悔い改めるチャンスをくれている』ですって? まったく馬鹿馬鹿しい、あなたはいつもそうですね、口を開けば諫言ばかり! 本当に堅苦しく、煩わしい男だ!」
ハーディンは厳しい目で僕を見据え、言う。
「ではお聞きしますが、魔獣が神の使いでないのなら、なぜあなたのように、大した能力のない召喚士に、大量に召喚することができたのです?」
「なんだとぉ……」
「それは、魔獣が自らの意思で、このバグマルス王国に現れたからです。『あなたに召喚された』という形でね。ウルナイト殿下。あなた、少しも疑問に思わなかったのですか? あなたの能力で召喚できるのは、せいぜいが小型の召喚獣3~4匹が限界のはず。それなのに、強力な魔獣が何百匹も呼び出せるなんて、普通なら何か妙だと疑うものです」
「だ、黙りなさい! 確かに僕は、これまで、あまり召喚士としての才能を発揮することができませんでした。それが、今になって一気に花開いただけのことです! あの魔獣は、勝手に現れたのではなく、間違いなく、僕自身の才能でこの世に呼び出したものです!」
「では、今すぐに魔獣の召喚をやめ、彼らを異世界に送り返してください」
「えっ……」
「本当に、殿下ご自身の力で魔獣を召喚したのなら、それができるはずです。さあ、やって見せてください」
「うっ、ぐっ、それは……」
たじろぎ、脂汗を垂らす僕に対し、ハーディンは憐れんだ眼差しを向け、深い深いため息を漏らした。
「……ね? できないのでしょう? それが、何よりの証拠なんですよ。あなたもかわいそうに。召喚士としての才能に恵まれなかった分、ある日突然強力な魔獣を召喚できたことで、嬉しさのあまり、正常な判断力を失ってしまったのですね」
「ぐうううぅぅぅぅぅぅ……!」
「思えば、バグマルス王国は、長い繁栄の時が続き、王族も、大臣たちも、民衆も、みんな欲にふけり、他者を顧みず、あまりにも身勝手すぎた。『召喚された魔獣』という形でこの世に顕現した『神の使い』たちは、しばらくの間、人々の動向を観察した結果、『罰を与えなければならない』と判断して、攻撃を始めたのでしょう」
僕はもう、ハーディンの言葉を半分も聞いていなかった。
へたり込み、頭を抱え、自分に言い聞かせるように、言葉を紡いでいく。
「嘘だ……僕は信じない……信じないぞ……僕は、召喚術の天才なんだ……ずっと眠っていた才能が、今やっと花開いたんだ……僕は魔術先進国であるバグマルスの第一王子だぞ……僕は落ちこぼれなんかじゃない……本当は天才なんだ……僕は……僕は……」
「あはっ、あはっ、あはははははははははっ! ハーディン! あなた、とうとう耄碌してしまったのですか? あんなケダモノが『神の使い』なわけないでしょう! 『悔い改めるチャンスをくれている』ですって? まったく馬鹿馬鹿しい、あなたはいつもそうですね、口を開けば諫言ばかり! 本当に堅苦しく、煩わしい男だ!」
ハーディンは厳しい目で僕を見据え、言う。
「ではお聞きしますが、魔獣が神の使いでないのなら、なぜあなたのように、大した能力のない召喚士に、大量に召喚することができたのです?」
「なんだとぉ……」
「それは、魔獣が自らの意思で、このバグマルス王国に現れたからです。『あなたに召喚された』という形でね。ウルナイト殿下。あなた、少しも疑問に思わなかったのですか? あなたの能力で召喚できるのは、せいぜいが小型の召喚獣3~4匹が限界のはず。それなのに、強力な魔獣が何百匹も呼び出せるなんて、普通なら何か妙だと疑うものです」
「だ、黙りなさい! 確かに僕は、これまで、あまり召喚士としての才能を発揮することができませんでした。それが、今になって一気に花開いただけのことです! あの魔獣は、勝手に現れたのではなく、間違いなく、僕自身の才能でこの世に呼び出したものです!」
「では、今すぐに魔獣の召喚をやめ、彼らを異世界に送り返してください」
「えっ……」
「本当に、殿下ご自身の力で魔獣を召喚したのなら、それができるはずです。さあ、やって見せてください」
「うっ、ぐっ、それは……」
たじろぎ、脂汗を垂らす僕に対し、ハーディンは憐れんだ眼差しを向け、深い深いため息を漏らした。
「……ね? できないのでしょう? それが、何よりの証拠なんですよ。あなたもかわいそうに。召喚士としての才能に恵まれなかった分、ある日突然強力な魔獣を召喚できたことで、嬉しさのあまり、正常な判断力を失ってしまったのですね」
「ぐうううぅぅぅぅぅぅ……!」
「思えば、バグマルス王国は、長い繁栄の時が続き、王族も、大臣たちも、民衆も、みんな欲にふけり、他者を顧みず、あまりにも身勝手すぎた。『召喚された魔獣』という形でこの世に顕現した『神の使い』たちは、しばらくの間、人々の動向を観察した結果、『罰を与えなければならない』と判断して、攻撃を始めたのでしょう」
僕はもう、ハーディンの言葉を半分も聞いていなかった。
へたり込み、頭を抱え、自分に言い聞かせるように、言葉を紡いでいく。
「嘘だ……僕は信じない……信じないぞ……僕は、召喚術の天才なんだ……ずっと眠っていた才能が、今やっと花開いたんだ……僕は魔術先進国であるバグマルスの第一王子だぞ……僕は落ちこぼれなんかじゃない……本当は天才なんだ……僕は……僕は……」
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