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第12話(ウルナイト視点)

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「まだ聖女は戻ってこないのですか! 大小問わず、この大陸にあるすべての新聞社に通知を出すように頼んでから、もう4日も経つんですよ!? そろそろ来なければおかしいでしょう!?」

 崩れた王宮のすぐそば。
 突貫工事で作られた簡易的な砦の中で、僕は声を荒げた。

 近衛兵の一人が、負傷した肩を押さえながら言う。

「聖女が国を出てからもう半年以上たっていますから、もしかしたら彼女は、新聞も届かないような、はるか辺境にまで行ってしまったのかもしれません。あるいは……」

「あるいは? あるいは、なんだと言うんです?」

 近衛兵は、ほんの少し黙った後、弱々しく目をそらし、口を開いた。

「何もかもを知っていて、その上で、このバグマルス王国にもう戻ってくる気がないのかもしれません……聖女を追い出す際、我々は彼女を嘲笑い、かなり冷たい仕打ちをしましたから……」

「ぐっ、うっ、ぐううぅぅぅ……っ!」

 まるで殴られたかのような声を出し、僕は唸った。薄々、僕自身もそうではないかと思っていたが、改めて他人の口から告げられると、やはりショックだった。

 くそっ。
 ラスティーナめ。
 なんて薄情な女だ。

 ちょっと冷たい仕打ちを受けたくらい、何だと言うんですか。自分の故郷が崩壊の危機なんですよ? 慌てて戻って来るのが普通でしょう。まったく、『聖女』が聞いて呆れますね。

 ……まあいいです。
 戻ってこない聖女のことなど、もうどうでもいい。

 僕にはまだ、『切り札』があります。
 それはもうすぐ、到着するはずですからね。

 そう思い、椅子に腰かけ、腕を組んで待っていると、待ちわびた『切り札』はやって来た。……その『切り札』とは、かつて、王族に対する不敬罪で国外追放した、衛兵隊のトップ、ハーディン隊長である。ハーディンは以前と変わらぬ鋭い眼光で僕を見て、小さく頭を下げた。

「おひさしぶりです、ウルナイト殿下。大変なことになりましたな」

 僕は立ち上がり、ハーディンを歓迎した。こういう、いかにも武人的な男は苦手だが、このハーディンなら、生き残った衛兵隊を指揮し、魔獣を退けることができるに違いない。

「おお、ハーディン。良く来てくれました。さあ、話している時間が惜しい、さっそく衛兵隊を指揮し、魔獣どもを皆殺しにしてください」

「その前に、国王陛下にお目通り願いたいのですが」

「……父上は、死にました。父上も、この砦に避難しようとしたのですが、過度な美食で太った体では、満足に駆けることもできず、背後から魔獣の牙で首を断たれ、即死でした」

「そうですか、お気の毒に。……この砦には、あなたと衛兵しかいないようですが、大臣たちは?」
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