上 下
11 / 11

第11話【完結】

しおりを挟む
 で、裁判所のお偉方が出した結論は、こうだ。

 エレーンは、罰金刑。

 ジャスティンは、二週間刑務所に収監された後、面倒な手続きなんて無しで、すぐに釈放されたよ。

 どちらも、暴力絡みの事件としては、極端に軽い刑罰だ。俺、裁判所って、堅苦しいイメージで苦手だったけど、ちゃんと、色々なことを考慮して判決を出してくれるんだなって知って、ちょっと見直したよ。

 えっ?

 それでも、無罪にはならなかったわけだから、エレーンとジャスティンの今後の生活には、色々と影響が出るんじゃないかって?

 あんた、心配性だねえ。

 大丈夫だよ。罪にはなったが、俺みたいに口の軽い奴が、ペラペラと噂を広めてるせいで、大衆はみんな、『なぜそうなったのか』って理由を知ってるからね。

 エレーンには同情の声が多数寄せられたし、ジャスティンの名誉が失墜することもなかった。それどころか、男気のある彼の行動は、むしろ皆の尊敬を集めたくらいさ。俺だって、『大した男だ』って思ったよ。

 それで今は、傷ついたエレーンの心を癒すために、ジャスティンがそっと寄り添って、日々を過ごしているらしい。噂では、二人はなかなか良い感じらしくてな。最近は、エレーンの顔にも笑顔が戻ってきたそうだ。

 これは俺の勘だけどな。
 あの二人、そう遠くないうちに、一緒になると思うぜ。
 ふふ、俺さ、そういうの、わかるんだよ。

 まっ、これで、めでたしめでたしってわけだ。

 エレーンにとっては、苦しい一年だっただろうが、最低の男と縁が切れて、今度こそ、本当に自分を愛してくれる男と出会えたんだから、まあ、長い苦しみにも、ちゃんと意味があったってことだな。いや、良かったよ、本当に。人間、意味もなく苦しい思いをするのが、一番きついからね。

 えっ?
 なにっ?

 俺?

 俺は、ラウンジをクビになってから、何の仕事をしているのかって?

 残念ながら、求職中さ。
 でも、嫌な気分じゃないよ。

 エレーンやジャスティンみたいに、良い人間が報われて、デイモンドやジェリーナのように、間違った人間は、それなりの罰を受ける。……世の中、捨てたもんじゃないなって、分かったからね。俺もいつか、報われるはずさ。

 えっ? 『聞かれたことをペラペラと喋ってしまうような口の軽い人間は、良い人間とは言えないのでは?』だって?

 あんた、嫌なこと言うねえ。

 いいんだよ。多少は口の軽い人間がいないと、嫌な奴の悪い噂は広まらないし、善人の良い噂も、広まらないんだから。もちろん、適当な憶測を言いふらしたり、嘘の噂を流すのは、いけないけどね。



終わり。



――――――――――――――――――――――――――――――――

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

 現在、ファンタジー作品二つと、恋愛作品一つを連載しています。
 よろしければ、そちらも見てもらえると嬉しいです!
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(25件)

もにこ
2023.12.17 もにこ

またこの感じのシリーズ読みたいです!

解除
せち
2022.05.12 せち

ブハッて吹き出しちゃった🤣

解除
hiyo
2021.11.05 hiyo

一つのお話を傍らで見ていた人が語ると、この様なお話になるのですね~
とても楽しく読ませて頂きました。有難うございました。

解除

あなたにおすすめの小説

幼馴染みに婚約者を奪われ、妹や両親は私の財産を奪うつもりのようです。皆さん、報いを受ける覚悟をしておいてくださいね?

水上
恋愛
「僕は幼馴染みのベラと結婚して、幸せになるつもりだ」 結婚して幸せになる……、結構なことである。 祝福の言葉をかける場面なのだろうけれど、そんなことは不可能だった。 なぜなら、彼は幼馴染み以外の人物と婚約していて、その婚約者というのが、この私だからである。 伯爵令嬢である私、キャサリン・クローフォドは、婚約者であるジャック・ブリガムの言葉を、受け入れられなかった。 しかし、彼は勝手に話を進め、私は婚約破棄を言い渡された。 幼馴染みに婚約者を奪われ、私はショックを受けた。 そして、私の悲劇はそれだけではなかった。 なんと、私の妹であるジーナと両親が、私の財産を奪おうと動き始めたのである。 私の周りには、身勝手な人物が多すぎる。 しかし、私にも一人だけ味方がいた。 彼は、不適な笑みを浮かべる。 私から何もかも奪うなんて、あなたたちは少々やり過ぎました。 私は、やられたままで終わるつもりはないので、皆さん、報いを受ける覚悟をしておいてくださいね?

虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~

***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」 妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。 「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」 元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。 両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません! あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。 他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては! 「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか? あなたにはもう関係のない話ですが? 妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!! ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね? 私、いろいろ調べさせていただいたんですよ? あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか? ・・・××しますよ?

幼馴染の親友のために婚約破棄になりました。裏切り者同士お幸せに

hikari
恋愛
侯爵令嬢アントニーナは王太子ジョルジョ7世に婚約破棄される。王太子の新しい婚約相手はなんと幼馴染の親友だった公爵令嬢のマルタだった。 二人は幼い時から王立学校で仲良しだった。アントニーナがいじめられていた時は身を張って守ってくれた。しかし、そんな友情にある日亀裂が入る。

妹に醜くなったと婚約者を押し付けられたのに、今さら返せと言われても

亜綺羅もも
恋愛
クリスティーナ・デロリアスは妹のエルリーン・デロリアスに辛い目に遭わされ続けてきた。 両親もエルリーンに同調し、クリスティーナをぞんざいな扱いをしてきた。 ある日、エルリーンの婚約者であるヴァンニール・ルズウェアーが大火傷を負い、醜い姿となってしまったらしく、エルリーンはその事実に彼を捨てることを決める。 代わりにクリスティーナを押し付ける形で婚約を無かったことにしようとする。 そしてクリスティーナとヴァンニールは出逢い、お互いに惹かれていくのであった。

婚約破棄が成立したので遠慮はやめます

カレイ
恋愛
 婚約破棄を喰らった侯爵令嬢が、それを逆手に遠慮をやめ、思ったことをそのまま口に出していく話。

せっかく家の借金を返したのに、妹に婚約者を奪われて追放されました。でも、気にしなくていいみたいです。私には頼れる公爵様がいらっしゃいますから

甘海そら
恋愛
ヤルス伯爵家の長女、セリアには商才があった。 であれば、ヤルス家の借金を見事に返済し、いよいよ婚礼を間近にする。 だが、 「セリア。君には悪いと思っているが、私は運命の人を見つけたのだよ」  婚約者であるはずのクワイフからそう告げられる。  そのクワイフの隣には、妹であるヨカが目を細めて笑っていた。    気がつけば、セリアは全てを失っていた。  今までの功績は何故か妹のものになり、婚約者もまた妹のものとなった。  さらには、あらぬ悪名を着せられ、屋敷から追放される憂き目にも会う。  失意のどん底に陥ることになる。  ただ、そんな時だった。  セリアの目の前に、かつての親友が現れた。    大国シュリナの雄。  ユーガルド公爵家が当主、ケネス・トルゴー。  彼が仏頂面で手を差し伸べてくれば、彼女の運命は大きく変化していく。

【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。 (さて、さっさと逃げ出すわよ) 公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。 リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。 どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。 結婚を申し込まれても・・ 「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」 「「はあ? そこ?」」 ーーーーーー 設定かなりゆるゆる? 第一章完結

妹しか興味がない両親と欲しがりな妹は、我が家が没落することを知らないようです

香木あかり
恋愛
伯爵令嬢のサラは、妹ティナにしか興味がない両親と欲しがりな妹に嫌気がさしていた。 ある日、ティナがサラの婚約者を奪おうとしていることを知り、我慢の限界に達する。 ようやくこの家を出られると思っていましたのに……。またティナに奪われるのかしら? ……なんてね、奪われるのも計画通りなんですけれど。 財産も婚約者も全てティナに差し上げます。 もうすぐこの家は没落するのだから。 ※複数サイトで掲載中です

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。