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第5話

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 不可解な返答に、俺は首をひねった。そして、質問に答えてくれたデイモンドに敬意を表し、先程より少しだけ態度を良くして、問う。

「婚約者同士のデートに、何故、幼馴染のジェリーナさんがついて来るんですか?」

 その問いに答えたのは、ジェリーナだった。

「だって、デイモンドったら、一年前にエレーンと婚約して以来、私よりエレーンのことばかり優先するから、私、寂しいのよ。だから私、デイモンドとエレーンのデートにまぜてもらうことにしたの。そうすれば、寂しい思いをしなくて済むでしょ?」

 ジェリーナはそう言って、デイモンドの手に自分の手を重ね、二人は笑顔で見つめ合った。その様子は、どう見ても『ただの幼馴染』には見えず、仲睦まじい恋人同士としか思えなかった。

 まったくもって、おかしな話だよな。いくら寂しいからって、婚約者同士のデートに、幼馴染がくっついていくなんて話、聞いたことがない。訝しむ俺に、ジェリーナは抗議するように、言葉を続けたよ。

「ボーイさん、あなた、三人でデートなんて、変だと思ってるんでしょ。でもこれは、エレーンも認めてくれたことなのよ。エレーンはいつも、快く私の同行を許してくれるの。『そんなに、どうしてもついて来たいなら、仕方ありません、諦めます』ってね」

 おいおいおいおい。

『そんなに』
『どうしても』
『仕方ありません』
『諦めます』

 全然、快く許してないじゃないの。
 エレーンさん、めちゃくちゃ嫌がってるじゃないの。

 俺さ、そこで、なんとなくわかったんだ。
 エレーンが、どうして昼間から強い酒をあおるほど、荒れているのかを。

 怒ってるんだよ。
 そして、激しく失望してるんだ。
 馬鹿で常識のない婚約者と、彼の、図々しく無神経な幼馴染に。

 だから、強い酒でも飲まなきゃ、やってられなかったんだな。

 デイモンドがエレーンと婚約したのは一年前だって、ジェリーナが言っていただろ? ……と、言うことは、エレーンは一年間も、この馬鹿な二人組と、三人一緒にデートさせられてたってことになる。

 酷い話だよな。人を舐めるにも、ほどがあるだろ。

 なんだか、無性にエレーンがかわいそうに思えてきた俺は、デイモンドとジェリーナに対し、苦言を呈そうとしたんだ。どうせ店はクビになるに決まってるし、この馬鹿二人に、ちょっとくらい文句を言ったって、バチは当たらないだろうと思ってね。

 しかし、結局俺は、何も言えなかった。
 俺が口を開く前に、エレーンが、ずっと閉じていた口を開いたからだ。

「……私……許してなんかいない……」

 女の声とは思えないくらい、低い声だったよ。
 そして、低い割に、よく聞こえる、重たい声でもあった。
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