上 下
4 / 11

第4話

しおりを挟む
『ジェリーナとデイモンドのデート』の、間違いじゃないの?

 ……っていうかさ。
 エレーンとデイモンドが婚約者で、これが二人のデートだって言うなら、ジェリーナ、あんた、いったいなんなのよ?

 そこでさ。
 俺、とうとう我慢できなくなって、聞いちゃったのよ。……「エレーン様とデイモンド様が婚約しておられるのなら、ジェリーナ様、あなたはいったい、どういうお立場の方なのですか?」って。

 図々しいって?
 失礼すぎるって?

 俺も、そう思うよ。

 でも、目の前で訳の分からない状況が続いてさ、どうしても、好奇心を抑えきれなくなったんだ。案の定、ジェリーナは不愉快そうな顔になったが、それでも無視はしなかった。彼女は、俺に唾でも吐きかけるような勢いで、こう言ったんだ。

「私はデイモンドの幼馴染よ。それが何か? ボーイさん、あなたには関係ないでしょ?」

 いやいやいやいやいやいや!
 わけわかんねーよ!

 婚約者であるエレーンとデイモンドにとって、関係ないのはあんたの方だろ!?

 一度俺の頭に浮かんだ疑問符はどんどんと膨れ上がり、俺はもう、自分の行動を止められなかった。変な話だけど、仕事をクビになってもいいから、この三人組の『奇妙な三角関係』について、詳しく知りたいと思ってしまったんだ。

 だから俺は、尋ねた。

「あの、大変失礼ですが、あなたたちはいつも、三人でデートをしているのですか?」

 本当に失礼な質問だと、自分でも思う。
 デイモンドは明らかにムッとした様子で、答えた。

「さっきからなんなんだきみは! このラウンジは、どうしてこんな無礼な男を雇っているんだ! 店長を呼んでくれ! 抗議させてもらう!」

 ああ~。
 やっちまった。
 これで、確実にクビだな。

 そう思ったよ。

 で、逆に覚悟が決まった。
 俺はしつこく、デイモンドに食い下がった。

「わかりました。今、店長を呼んできます。……その前に、できれば俺の質問に、答えてもらいたいんだけどね。どうせ俺はクビになるんだ。ならせめて、疑問を解消してから、店を辞めたいんでね。答えてくれたら、もう、何も言わないよ。なんなら、あんたたちに、土下座して謝ってもいいよ」

 俺の口調が、丁寧なものから、粗野なものに、変わっていた。
 まあ、これが地だからね。育ちだって、良いわけじゃないし。

 態度が変わった俺に少々怯んだのか、デイモンドは意外にも素直に、質問に答えてくれた。

「……いつも、と言うか、まあ、ほとんどの場合、三人でデートしているな。だって、仕方ないだろう。ジェリーナが、僕とエレーンのデートに、ついて来たがるんだから」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私の妹を皆溺愛するけど、え? そんなに可愛いかしら?

かのん
恋愛
 わぁい!ホットランキング50位だぁ(●´∀`●)ありがとうごさいます!  私の妹は皆に溺愛される。そして私の物を全て奪っていく小悪魔だ。けれど私はいつもそんな妹を見つめながら思うのだ。  妹。そんなに可愛い?えぇ?本当に?  ゆるふわ設定です。それでもいいよ♪という優しい方は頭空っぽにしてお読みください。  全13話完結で、3月18日より毎日更新していきます。少しでも楽しんでもらえたら幸いです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

旦那様はチョロい方でした

白野佑奈
恋愛
転生先はすでに何年も前にハーレムエンドしたゲームの中。 そしてモブの私に紹介されたのは、ヒロインに惚れまくりの攻略者の一人。 ええ…嫌なんですけど。 嫌々一緒になった二人だけど、意外と旦那様は話せばわかる方…というか、いつの間にか溺愛って色々チョロすぎません? ※完結しましたので、他サイトにも掲載しております

妹ばかりを優先する無神経な婚約者にはもううんざりです。お別れしましょう、永久に。【完結】

小平ニコ
恋愛
主人公クリスタのストレスは限界だった。 婚約者であるエリックとのデートに、彼の妹であるキャロルが毎回ついて来るのだ。可愛げのある義妹ならともかく、キャロルの性格は最悪であり、クリスタはうんざりしていた。 最近では、エリック自身のデリカシーのなさを感じることも多くなり、ある決定的な事件をきっかけに、クリスタはとうとう婚約の破棄を決意する。 その後、美しく誠実な青年ブライスと出会い、互いに愛をはぐくんでいくのだが、エリックとキャロルは公然と婚約破棄を言い渡してきたクリスタを逆恨みし、彼女と彼女の家に対して嫌がらせを開始した。 エリックの家には力があり、クリスタの家は窮地に陥る。だが最後には、すべての悪事が明るみに出て、エリックとキャロルは断罪されるのだった……

【完結】妹に婚約者を奪われた私は、悪女を目指します。ただ、悪女ってよくわかりません。

かのん
恋愛
 婚約者を妹に奪われたルチアーナは、金の為に、父親に売られるように年上の男性と舞踏会中に二人きりにさせられてしまう。そんな彼女の貞操の危機を救ったのは、戦場の悪魔と呼ばれるレバノン公爵であった。  これは、悪女をめざし(?)ながらも、悪女というもの自体そもそも分かっていないルチアーナの、幸せになるまでの物語。  完結済みの短めの小説ですので安心してお読みください。一日一話毎朝7時に更新していきます。ご都合主義の小説ですので、それでもよろしければ暇つぶし程度にお読みください。 ※ 作者の小説を読んで下さる人が増えて嬉しいです。コメントもありがとうございます。返信はなかなか出来ないのですが、頂いたコメントは全て読んでおります。励みになります。ありがとうございます。

【完結】婚約破棄した私は王弟殿下に狙われてる!?

かのん
恋愛
 王子であり婚約者であったウィリアムは他の令嬢の事を好きになってしまい、ルルティアは自分の気持ちを押し殺して、婚約破棄をする。  けれど、ルルティアはウィリアムを愛していた。ずっと好きだったのである。  それを知った、この国で最も精霊に愛される王弟フィリップは大激怒。 「私のルルティアを傷付けたのは、誰だ。」  これはルルティアの気持ちを大事にしかつては身を引いた王弟フィリップと、ウィリアムの為に身を引いたルルティアの恋愛劇。

【完結】私の愛しの魔王様

かのん
恋愛
 貴族界では悪役令嬢と呼ばれる公爵家令嬢フィオーナ・リビアは婚約破棄直後に魔王へと生贄の為に捧げられることが決定される。  フィオーナは激怒する。 「生贄として大切に育てられた清らかな聖女様に手を出したボンクラ殿下なんてこっちから願い下げですわ!」  これは、生贄として捧げられたフィオーナが魔王様を溺愛する物語。  完結済みの短めの投稿となりますので、ご安心してお読みください。  一日一話更新していきます。

【完結】妊娠中のお姉様の夫に迫られて、濡れ衣を着せられた

かのん
恋愛
 年の近いショーンは、姉のロザリーか妹のライカ、どちらかの婚約者になるだろうと言われていた。  ライカはそんなショーンのことが好きだったけれど、ショーンが好きだったのはロザリーであり自分の恋心を封印して二人を応援するようになる。そして、二人が婚約、その後妊娠が発覚して結婚。  二人を祝福し、自分も前に進もうと思っていたのに、ショーンに迫られその現場を姉に発見されてしまう。  ライカは無実を訴えたが、姉の夫を誘惑したとして濡れ衣を着せられ男爵家へと送られてしまうのだった。  完結済の全21話です。毎日更新していきます。最後まで読んでいただけたら幸いです。 作者かのん

処理中です...