40 / 63
第40話
しおりを挟む
正直に言えば、千佳ちゃんが私のことを本当の友達ではなく、学校での休憩所だと思っていたことはショックだった。でも……
「それでもいいよ。私といることで、少しでも千佳ちゃんの心が休まることができたなら、私はそれでいい。……それに、私だって千佳ちゃんを責められるほど立派じゃない。自分から積極的に皆と関わろうとせず、何もしなくても向こうから話しかけに来てくれる千佳ちゃんを、便利な友達代わりにしてたところ、あるから」
そういう意味では、私たち二人とも、どこか歪んでいる。居心地の悪い学校で楽に過ごすために、お互いがお互いを利用していたところもあるのかもしれない。
でも、それだけじゃない。確かに『本当の友達』じゃないかもしれないけど、まったく嘘っぱちの友達ってわけでもないはず。私は千佳ちゃんが話しかけてくれるのが楽しみで、彼女といると救われたし、千佳ちゃんも、少しは私に友情を感じてくれていたとは思う。
そうでなければ、うじうじしていた私が広瀬さんに絡まれた時に、自分で自分を悪く言ってまで私を庇ってはくれなかったと思うし、さっきガレスが尋ねた『稲葉加奈は、お前にとって友ではないのか?』という問いに、『どうかな……』なんて、中途半端な回答はしなかったはずだ。
だから千佳ちゃんが何と言おうと、彼女はやっぱり、私にとっては友達だ。私は気がつくと、今思った通りのことを言葉にし、無我夢中でガレスにまくしたてていた。その行動に何の意味があるのかと問われると返答に困るが、それでも、言わずにはいられなかった。
きっと、さっきから言いたい放題のガレスに、少しでも反論したかったのだろう。だがガレスは、相変わらず人を小ばかにしたような顔で、さらに私と千佳ちゃんを嘲笑してくる。
「くくく、なるほどなるほど。貴様の言いたいことはよくわかった。つまり、利害関係さえ一致していれば"友人契約"が成立すると言うのだな。なんとまあ、いびつな友情もあったものだ。お前たちは二人とも弱者だ! 『裏心の術』の力がなければ本心もさらけ出せず、無様に互いの傷を舐めあう情けない弱者! はははははっ!」
その言い草に、私の中で何かがプツンと切れてしまった。もはやガレスに恐怖心を感じる余裕もなく、目と鼻の距離まで近づいて、泥団子でも投げつけるように言う。
「それでも、あなたよりはマシだよ。卑怯者」
「ん? 聞き間違いか? 今、卑怯者と聞こえたが。くくく、聞き間違いか、そうでなければ言い間違いだな。魔界でも勇猛果敢で知られるこの俺が卑怯者などと……」
ぺちゃくちゃと喋り続けようとするガレスの言葉を、私は遮った。
「驚いた。あなた、卑怯者の自覚がないの? クラスの皆は、ほんの少しルディと関わっただけなのに、こんな陰湿な方法でネチネチと嫌がらせして、卑劣すぎるよ。あっ、そうか。この場合、卑怯者っていうか、卑劣者って言った方がしっくりくるのかな」
この場を支配し、余裕たっぷりだったガレスだが、プライドの高そうな彼にとって『卑劣者』よばわりされるのはそうとうにムッとすることらしく、ギロリと私を睨みつけてくる。
「おい。今言ったこと、取り消せ。弱者の分際で、この俺を侮辱すると許さんぞ」
ガレス自身の背の高さに、彼の立っている教壇の高さもプラスされて凄い威圧感だが、私は負けずに下から睨み返し、思いのたけをすべてぶつけた。
「取り消さない! 人の心の弱い部分を暴き立てて、笑いものにしてる卑劣なあなたに比べれば、弱者の方がずっとマシだって、何度でも言うよ! さらに付け加えるなら、あなたみたいに粗暴で器の小さい人が、次の魔王になんてなれるはずない!」
「それでもいいよ。私といることで、少しでも千佳ちゃんの心が休まることができたなら、私はそれでいい。……それに、私だって千佳ちゃんを責められるほど立派じゃない。自分から積極的に皆と関わろうとせず、何もしなくても向こうから話しかけに来てくれる千佳ちゃんを、便利な友達代わりにしてたところ、あるから」
そういう意味では、私たち二人とも、どこか歪んでいる。居心地の悪い学校で楽に過ごすために、お互いがお互いを利用していたところもあるのかもしれない。
でも、それだけじゃない。確かに『本当の友達』じゃないかもしれないけど、まったく嘘っぱちの友達ってわけでもないはず。私は千佳ちゃんが話しかけてくれるのが楽しみで、彼女といると救われたし、千佳ちゃんも、少しは私に友情を感じてくれていたとは思う。
そうでなければ、うじうじしていた私が広瀬さんに絡まれた時に、自分で自分を悪く言ってまで私を庇ってはくれなかったと思うし、さっきガレスが尋ねた『稲葉加奈は、お前にとって友ではないのか?』という問いに、『どうかな……』なんて、中途半端な回答はしなかったはずだ。
だから千佳ちゃんが何と言おうと、彼女はやっぱり、私にとっては友達だ。私は気がつくと、今思った通りのことを言葉にし、無我夢中でガレスにまくしたてていた。その行動に何の意味があるのかと問われると返答に困るが、それでも、言わずにはいられなかった。
きっと、さっきから言いたい放題のガレスに、少しでも反論したかったのだろう。だがガレスは、相変わらず人を小ばかにしたような顔で、さらに私と千佳ちゃんを嘲笑してくる。
「くくく、なるほどなるほど。貴様の言いたいことはよくわかった。つまり、利害関係さえ一致していれば"友人契約"が成立すると言うのだな。なんとまあ、いびつな友情もあったものだ。お前たちは二人とも弱者だ! 『裏心の術』の力がなければ本心もさらけ出せず、無様に互いの傷を舐めあう情けない弱者! はははははっ!」
その言い草に、私の中で何かがプツンと切れてしまった。もはやガレスに恐怖心を感じる余裕もなく、目と鼻の距離まで近づいて、泥団子でも投げつけるように言う。
「それでも、あなたよりはマシだよ。卑怯者」
「ん? 聞き間違いか? 今、卑怯者と聞こえたが。くくく、聞き間違いか、そうでなければ言い間違いだな。魔界でも勇猛果敢で知られるこの俺が卑怯者などと……」
ぺちゃくちゃと喋り続けようとするガレスの言葉を、私は遮った。
「驚いた。あなた、卑怯者の自覚がないの? クラスの皆は、ほんの少しルディと関わっただけなのに、こんな陰湿な方法でネチネチと嫌がらせして、卑劣すぎるよ。あっ、そうか。この場合、卑怯者っていうか、卑劣者って言った方がしっくりくるのかな」
この場を支配し、余裕たっぷりだったガレスだが、プライドの高そうな彼にとって『卑劣者』よばわりされるのはそうとうにムッとすることらしく、ギロリと私を睨みつけてくる。
「おい。今言ったこと、取り消せ。弱者の分際で、この俺を侮辱すると許さんぞ」
ガレス自身の背の高さに、彼の立っている教壇の高さもプラスされて凄い威圧感だが、私は負けずに下から睨み返し、思いのたけをすべてぶつけた。
「取り消さない! 人の心の弱い部分を暴き立てて、笑いものにしてる卑劣なあなたに比べれば、弱者の方がずっとマシだって、何度でも言うよ! さらに付け加えるなら、あなたみたいに粗暴で器の小さい人が、次の魔王になんてなれるはずない!」
10
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
トウシューズにはキャラメルひとつぶ
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
児童書・童話
白鳥 莉瀬(しらとり りぜ)はバレエが大好きな中学一年生。
小学四年生からバレエを習いはじめたのでほかの子よりずいぶん遅いスタートであったが、持ち前の前向きさと努力で同い年の子たちより下のクラスであるものの、着実に実力をつけていっている。
あるとき、ひょんなことからバレエ教室の先生である、乙津(おつ)先生の息子で中学二年生の乙津 隼斗(おつ はやと)と知り合いになる。
隼斗は陸上部に所属しており、一位を取ることより自分の実力を磨くことのほうが好きな性格。
莉瀬は自分と似ている部分を見いだして、隼斗と仲良くなると共に、だんだん惹かれていく。
バレエと陸上、打ちこむことは違っても、頑張る姿が好きだから。
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
へいこう日誌
神山小夜
児童書・童話
超ド田舎にある姫乃森中学校。
たった三人の同級生、夏希と千秋、冬美は、中学三年生の春を迎えた。
始業式の日、担任から告げられたのは、まさかの閉校!?
ドタバタ三人組の、最後の一年間が始まる。
『空気は読めないボクだけど』空気が読めず失敗続きのボクは、小六の夏休みに漫画の神様から『人の感情が漫画のように見える』能力をさずけられて……
弓屋 晶都
児童書・童話
「空気は読めないけど、ボク、漫画読むのは早い方だよ」
そんな、ちょっとのんびりやで癒し系の小学六年の少年、佐々田京也(ささだきょうや)が、音楽発表会や学習発表会で大忙しの二学期を、漫画の神様にもらった特別な力で乗り切るドタバタ爽快学園物語です。
コメディー色と恋愛色の強めなお話で、初めての彼女に振り回される親友を応援したり、主人公自身が初めての体験や感情をたくさん見つけてゆきます。
---------- あらすじ ----------
空気が読めず失敗ばかりだった主人公の京也は、小六の夏休みに漫画の神様から『人の感情が漫画のように見える』能力をさずけられる。
この能力があれば、『喋らない少女』の清音さんとも、無口な少年の内藤くんとも話しができるかも……?
(2023ポプラキミノベル小説大賞最終候補作)
スペクターズ・ガーデンにようこそ
一花カナウ
児童書・童話
結衣には【スペクター】と呼ばれる奇妙な隣人たちの姿が見えている。
そんな秘密をきっかけに友だちになった葉子は結衣にとって一番の親友で、とっても大好きで憧れの存在だ。
しかし、中学二年に上がりクラスが分かれてしまったのをきっかけに、二人の関係が変わり始める……。
なお、当作品はhttps://ncode.syosetu.com/n2504t/ を大幅に改稿したものになります。
改稿版はアルファポリスでの公開後にカクヨム、ノベルアップ+でも公開します。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
こちら第二編集部!
月芝
児童書・童話
かつては全国でも有数の生徒数を誇ったマンモス小学校も、
いまや少子化の波に押されて、かつての勢いはない。
生徒数も全盛期の三分の一にまで減ってしまった。
そんな小学校には、ふたつの校内新聞がある。
第一編集部が発行している「パンダ通信」
第二編集部が発行している「エリマキトカゲ通信」
片やカジュアルでおしゃれで今時のトレンドにも敏感にて、
主に女生徒たちから絶大な支持をえている。
片や手堅い紙面造りが仇となり、保護者らと一部のマニアには
熱烈に支持されているものの、もはや風前の灯……。
編集部の規模、人員、発行部数も人気も雲泥の差にて、このままでは廃刊もありうる。
この危機的状況を打破すべく、第二編集部は起死回生の企画を立ち上げた。
それは――
廃刊の危機を回避すべく、立ち上がった弱小第二編集部の面々。
これは企画を押しつけ……げふんげふん、もといまかされた女子部員たちが、
取材絡みでちょっと不思議なことを体験する物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる