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第9話
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そう言うと、ルディは大きな街路樹の裏に入り、すぐに戻ってきた。なんと、彼の着ていた私服は、たった3秒ほどの間に、うちの学校の制服に変化しており、ルディの動きを見ていた数人の生徒が『えっ?』『なんで?』『手品?』などと驚きの声をあげていた。
もちろん、驚いたのは私も同じで、ちょっと上ずった声でルディに問いかける。
「ちょっ、ルディ、その制服、どうやって……」
「魔法でちょちょいっとな。こういうのは得意なんだ」
「たぶんそうだろうとは思ったけど、やるならもっと人目のないところでやってよ。ほら、皆がさっきよりこっち見て、めちゃくちゃ目立っちゃってるよ」
「人前で着替えるのははしたないと思い、ちゃんと木の裏でやったではないか。……さっき、そなたが『少し気まずい』と言ったときから思っていたのだが、加奈よ、そなたは目立つことがあまり好きではないのか?」
そう言われて、自分が無意識に人目を引くことを嫌がっているのに、今さらながら気がつく。でも、それを認めるのが恥ずかしいことのような気がして、私は歯切れ悪く、ボソボソと言う。
「べ、別にそんなこと……ないけど……」
「そうか。余の思い過ごしだったようだな。目立つのは良いことだ。そなたの父である史郎のように、特別な能力のある者はどんどん前に出て、その存在と才能を世界にアピールしていくべきだ。そなたもあの史郎の娘なのだから、さぞ楽器の才……」
突然、私の心の中にある触れられたくない部分に触れられて、カッと体が熱くなる。もちろん、ルディに悪気がないことは分かってる。だから、私はなるべく態度を変えずに、だけど強引に、この話を打ち切った。
「ほら、急がないと遅刻するよ。私は直接教室に行くけど、ルディは短期の転校生扱いになるから、一度職員室に行かなきゃいけないんでしょ?」
「ん? あ、ああ、そうだな」
「そうだよ」
「……加奈、何か怒っているか?」
「怒ってないよ。本当に、怒ってない。ごめん、なんか急に、変な感じになっちゃって」
「余が何か、癇に障ることを言ったか? 史郎の話が嫌だったわけではないな。そなたが父を嫌っているわけでないのは、昨日のことでよくわかっている。では、楽器の話が……」
「ルディ、本当にごめん。私、先に行くね」
そう言って、私はルディを置いて駆けだした。本当なら、職員室の場所なんて知らないルディをちゃんと案内してあげるべきなのに、彼を置き去りにした罪悪感で、胸がちくちくと痛む。
でも、あのまま話を続けていたら、するどいルディは私の"触れられたくない部分"の核心に触れてしまう。そうなればきっと、私、凄くみっともない姿を見せてしまう。だから、逃げるようにその場を去った。……というより、逃げた。
(別に、みっともない姿を見せたっていいじゃない。あなたはみっともない子なんだから)
自分で、自分を嘲る声が聞こえる。その通り。実際、私はみっともない子。だけど、ルディにみっともない姿を見られるのは、なんだか凄く嫌だった。
もちろん、驚いたのは私も同じで、ちょっと上ずった声でルディに問いかける。
「ちょっ、ルディ、その制服、どうやって……」
「魔法でちょちょいっとな。こういうのは得意なんだ」
「たぶんそうだろうとは思ったけど、やるならもっと人目のないところでやってよ。ほら、皆がさっきよりこっち見て、めちゃくちゃ目立っちゃってるよ」
「人前で着替えるのははしたないと思い、ちゃんと木の裏でやったではないか。……さっき、そなたが『少し気まずい』と言ったときから思っていたのだが、加奈よ、そなたは目立つことがあまり好きではないのか?」
そう言われて、自分が無意識に人目を引くことを嫌がっているのに、今さらながら気がつく。でも、それを認めるのが恥ずかしいことのような気がして、私は歯切れ悪く、ボソボソと言う。
「べ、別にそんなこと……ないけど……」
「そうか。余の思い過ごしだったようだな。目立つのは良いことだ。そなたの父である史郎のように、特別な能力のある者はどんどん前に出て、その存在と才能を世界にアピールしていくべきだ。そなたもあの史郎の娘なのだから、さぞ楽器の才……」
突然、私の心の中にある触れられたくない部分に触れられて、カッと体が熱くなる。もちろん、ルディに悪気がないことは分かってる。だから、私はなるべく態度を変えずに、だけど強引に、この話を打ち切った。
「ほら、急がないと遅刻するよ。私は直接教室に行くけど、ルディは短期の転校生扱いになるから、一度職員室に行かなきゃいけないんでしょ?」
「ん? あ、ああ、そうだな」
「そうだよ」
「……加奈、何か怒っているか?」
「怒ってないよ。本当に、怒ってない。ごめん、なんか急に、変な感じになっちゃって」
「余が何か、癇に障ることを言ったか? 史郎の話が嫌だったわけではないな。そなたが父を嫌っているわけでないのは、昨日のことでよくわかっている。では、楽器の話が……」
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でも、あのまま話を続けていたら、するどいルディは私の"触れられたくない部分"の核心に触れてしまう。そうなればきっと、私、凄くみっともない姿を見せてしまう。だから、逃げるようにその場を去った。……というより、逃げた。
(別に、みっともない姿を見せたっていいじゃない。あなたはみっともない子なんだから)
自分で、自分を嘲る声が聞こえる。その通り。実際、私はみっともない子。だけど、ルディにみっともない姿を見られるのは、なんだか凄く嫌だった。
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