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第1話
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近頃、全国の学校で、ひとクラスがまるごと消えてしまう事件が多発していた。
いわゆる『集団異世界転移』ってやつだ。
まあ、多発と言っても、全国に5000以上ある高校のうち、集団転移が発生したのは5校。さらにその中の1クラスずつにすぎないので、俺が巻き込まれる確率は、宝くじに当たるよりも低いと思っていた。
……しかし、その大当たりを、今日引いてしまったらしい。
二時限目の終了後、授業を終えた数学教師が教室を出た途端、目の前が暗転した。気がつけば俺と他の生徒たちは、いかにも異世界っぽいお城の、いかにも王の間っぽいところにいた。
当然、皆大混乱になったのだが、異世界人たちは随分と手馴れたもので、俺たちを整列させる。それから、一人一人の名前を確認した後、王様っぽい人が何かを調べて、それぞれに話しかける。
「ふむ、そなたのスキルは『移動力1・5倍』だな。そっちのそなたは『薬毒耐性』。えーっと、そなたは『万能解錠能力』か。おお~、よいではないか。これはレアスキルだぞ。どんな宝箱や扉だって開けられるからな」
王様の説明によると、現代日本から召喚された少年少女は、皆『スキル』という特殊能力を持っているそうで、今、その確認をしているらしい。
……なんでも、この世界は今危機的状況で、その危機を打破するため、強力なスキルを持った者を召喚するのが異世界人の目的だそうだ。
ちょっとワクワクしてきた俺は、今か今かと自分の番を待つ。
そして王様が、俺の前に来た。
「さて、そなたの名前は聖川サトシだな。そなたのスキルは……ん? 『ゾンビが切れる剣』だって? なんだこれは? こんなの初めてだぞ」
王様は腕を組んで首をひねる。
俺も同じように首をひねって、自分のスキルについて考えてみた。
……『ゾンビが切れる剣』ってことは、アンデッド特効の能力ってことだろうか? さっき聞いた『移動力1・5倍』とか『万能解錠能力』の方が汎用性は高そうだけど、まあ、特定の種族に効果絶大な能力ってのも悪くない。不満は言わずに、満足しておこう。
そんなことを思っていると、王様は不思議そうな顔で、俺に問いかけた。
「おい、サトシよ。……そもそもゾンビとはなんだ?」
えっ、この人、ゾンビ知らないの?
俺は、何と説明すべきか一瞬迷ったが、思いつくままにゾンビについて解説した。
「えっと、あれですよ、ほら、死人が生き返って、こう、フラフラッと歩きながら、襲って来る奴です。で、ゾンビに噛まれると、噛まれた人もだいたいゾンビになっちゃうんですよ」
「ぬう……なんと面妖な……」
「あの、この世界には、ゾンビっていないんですか?」
「うむ。だから、そなたの言う『ゾンビ』なる存在のイメージがいまいちつかめぬ。そなたは今『死人が生き返る』と述べたが、見た目はどんな感じになるのだ?」
「う~ん……だいたいグチャグチャのボロボロっていうか、グロい感じですね」
「わかった、もういい。とにかくゾンビとは、おぞましい存在なのだな」
「あの、すいません。この世界にも、ゾンビに似てるというか、アンデッドモンスターみたいなのは、いるんですよね。動き回る死体的な……」
「そんなものいるわけがなかろう。そなたはアホなのか? どんな生き物も死んだら動かない。世界の常識だろう?」
ア、アホとは失礼な。だいたい、非常識な方法でクラス丸ごと異世界転移させた人たちに世界の常識なんて語られたくないぞ。しかし、ちょっと待てよ。ゾンビどころか、アンデッドモンスターがいないのなら、俺のスキル『ゾンビが切れる剣』って、完全なはずれスキルなのでは……?
いわゆる『集団異世界転移』ってやつだ。
まあ、多発と言っても、全国に5000以上ある高校のうち、集団転移が発生したのは5校。さらにその中の1クラスずつにすぎないので、俺が巻き込まれる確率は、宝くじに当たるよりも低いと思っていた。
……しかし、その大当たりを、今日引いてしまったらしい。
二時限目の終了後、授業を終えた数学教師が教室を出た途端、目の前が暗転した。気がつけば俺と他の生徒たちは、いかにも異世界っぽいお城の、いかにも王の間っぽいところにいた。
当然、皆大混乱になったのだが、異世界人たちは随分と手馴れたもので、俺たちを整列させる。それから、一人一人の名前を確認した後、王様っぽい人が何かを調べて、それぞれに話しかける。
「ふむ、そなたのスキルは『移動力1・5倍』だな。そっちのそなたは『薬毒耐性』。えーっと、そなたは『万能解錠能力』か。おお~、よいではないか。これはレアスキルだぞ。どんな宝箱や扉だって開けられるからな」
王様の説明によると、現代日本から召喚された少年少女は、皆『スキル』という特殊能力を持っているそうで、今、その確認をしているらしい。
……なんでも、この世界は今危機的状況で、その危機を打破するため、強力なスキルを持った者を召喚するのが異世界人の目的だそうだ。
ちょっとワクワクしてきた俺は、今か今かと自分の番を待つ。
そして王様が、俺の前に来た。
「さて、そなたの名前は聖川サトシだな。そなたのスキルは……ん? 『ゾンビが切れる剣』だって? なんだこれは? こんなの初めてだぞ」
王様は腕を組んで首をひねる。
俺も同じように首をひねって、自分のスキルについて考えてみた。
……『ゾンビが切れる剣』ってことは、アンデッド特効の能力ってことだろうか? さっき聞いた『移動力1・5倍』とか『万能解錠能力』の方が汎用性は高そうだけど、まあ、特定の種族に効果絶大な能力ってのも悪くない。不満は言わずに、満足しておこう。
そんなことを思っていると、王様は不思議そうな顔で、俺に問いかけた。
「おい、サトシよ。……そもそもゾンビとはなんだ?」
えっ、この人、ゾンビ知らないの?
俺は、何と説明すべきか一瞬迷ったが、思いつくままにゾンビについて解説した。
「えっと、あれですよ、ほら、死人が生き返って、こう、フラフラッと歩きながら、襲って来る奴です。で、ゾンビに噛まれると、噛まれた人もだいたいゾンビになっちゃうんですよ」
「ぬう……なんと面妖な……」
「あの、この世界には、ゾンビっていないんですか?」
「うむ。だから、そなたの言う『ゾンビ』なる存在のイメージがいまいちつかめぬ。そなたは今『死人が生き返る』と述べたが、見た目はどんな感じになるのだ?」
「う~ん……だいたいグチャグチャのボロボロっていうか、グロい感じですね」
「わかった、もういい。とにかくゾンビとは、おぞましい存在なのだな」
「あの、すいません。この世界にも、ゾンビに似てるというか、アンデッドモンスターみたいなのは、いるんですよね。動き回る死体的な……」
「そんなものいるわけがなかろう。そなたはアホなのか? どんな生き物も死んだら動かない。世界の常識だろう?」
ア、アホとは失礼な。だいたい、非常識な方法でクラス丸ごと異世界転移させた人たちに世界の常識なんて語られたくないぞ。しかし、ちょっと待てよ。ゾンビどころか、アンデッドモンスターがいないのなら、俺のスキル『ゾンビが切れる剣』って、完全なはずれスキルなのでは……?
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