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第120話

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 あの和解の夜から、どれだけの時間が流れたのだろう。

 エリウッドの治世は安定し、パーミル王国は最盛の時を迎えていた。

 一般的な考えからすれば信じがたいことだが、エリウッドは、ジェロームも、ジェロームのクーデターに加担した重臣と将校も、処罰しなかった。それどころか、此度の混乱はすべて自分の至らなさが原因だと、謝罪すらした。

 普通なら、甘い王だと侮られそうなものだが、エリウッドの真摯な態度は、反王政派の心を大きく動かし、また、新しい王のもとで権力闘争に明け暮れていた現王政派も、自分たちが対抗勢力を追い落としたことで、それが反乱へとつながったことを深く後悔した。

 かくして、現王政派と反王政派は手を取り合い、共にエリウッドを盛り立てていくことになったのである。もう一度言うが、普通なら、まずこんなことにはならないだろう。エリウッドの天性の魅力が皆の心を惹きつけ、すべてを丸く収めさせたのか、あるいは、リザベルトが言うところの『天運』が、そうさせたのか……

 とにもかくにも、少々の混乱を経て、パーミルはますます良い国となった。

 それでもジェロームは、『国を乱そうとした自分が、軍部のトップにいるわけにはいかない』と言い、参謀総長の地位を退いた。その後はエリウッドの強い意向により、相談役として、陰に日向にエリウッドを補佐している。言葉を交わす二人の姿に、もう過去のしこりはない。長い時を経て、やっと、昔の二人に戻れたのだろう。

 太后リザベルトは王宮を去り、離宮にて、一人穏やかな時間を過ごしている。国が安定した今、もはや自分が暗躍する必要はないと判断してのことだった。私やエリウッド、そしてジェロームが顔を見せに行くと、嬉しそうに出迎えてくれる。その屈託のない姿が、パーミルを守るという妄執から離れた、彼女本来の姿なのだと思う

 あのオルソン聖王国は、パーミル王国とラング王国の強固な同盟関係を警戒し、今は貝のようにおとなしくなってしまった。国王の体調が思わしくなく、跡を継ぐ予定の第二王子が『ことなかれ主義』であることも、大きく影響しているのだろう。

 ラング王国の国王は、勢いの弱まったオルソン聖王国の領土を一気に獲得したいと鼻息を荒くしているそうだが、それでもオルソンは大国。全面戦争はまだまだ時期尚早と、グラディスが諫めているらしい。猛々しいラング王も、最愛の妻であるグラディスの言うことは素直に聞くそうであり、二人の仲はどうやら上手くいっているようだ。
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