82 / 121
第82話
しおりを挟む
少々生意気なお説教ではあるが、まあ、こちらとしても非常に危ない目に遭ったのだから、これくらい言う権利はあるだろう。エリウッドは顔を伏せて黙っているので、私はなおも言葉を続ける。
「私の破壊の力にも、限界があります。グラディスさんがうまくハッタリをきかせてくれなかったら、今頃どうなっていたことか……」
エリウッドは、やはり何も返事をしない。もしかして酔いつぶれて寝ているのかと思い、少々憤慨して顔を覗き込むと、意外にも、酷く反省したエリウッドの面持ちが目に入り、私は思わず黙ってしまった。
沈黙してしまった私の代わりに、エリウッドがぽつ、ぽつと言葉を紡いでいく。
「すまん……返す言葉もない……俺の軽率な行動で、皆の命を危険にさらしてしまった……」
痛々しいほど、力のない言葉だった。
本当に、心の底から申し訳ないという感情のこもった言葉でもあった。
エリウッドは少しだけ顔を上げ、私の目を見て話し続ける。
「酒が入っていたせいもあるが、あんな下劣な男に、パーミル王国を軽んじられ、誰よりも誠実であった父上を侮辱され、挙句の果てに、出たくもない会談にわざわざ出てくれたお前のことを、目の前で徹底的にコケにされて、完全に理性を失ってしまった……」
「私のために、怒ってくれたんですか?」
「綺麗な言い方をすればそういうことになるかもしれんが、結局のところ、俺は自分の感情を抑えられなかっただけだ……重ねて謝罪する……すまん……」
私は何と言葉を返していいか分からず、黙り込む。
……エリウッドのとった行動は軽率だったと思うが、それでも、少しだけ嬉しい気持ちが、自分の中にある。だって私自身も、オルソン聖王国の王子にこれ以上ないほどの侮辱を受け、我慢の限界だったから。
あそこでエリウッドが怒ってくれなかったら、私は逆上して、オルソン聖王国の王子に対し、破壊の力を使っていたかもしれない。
もしもそうなっていたら、今とは比べ物にならないほどまずい状況になっていただろう。さすがに、王子を殺した私をそう簡単に逃がしはしないと思うし、私自身も、殺人者となってしまうところだった。あんな最低の男を消し飛ばして、一生人殺しの十字架を背負って生きていくのは嫌である。
そう考えると、私のために怒ってくれたエリウッドに対し、改めて感謝の気持ちが込み上げてくる。さっきは『少しだけ嬉しい』という控えめな表現をしたが、実際のところは、私は彼の行動をとてもありがたく思っているのだろう。
「私の破壊の力にも、限界があります。グラディスさんがうまくハッタリをきかせてくれなかったら、今頃どうなっていたことか……」
エリウッドは、やはり何も返事をしない。もしかして酔いつぶれて寝ているのかと思い、少々憤慨して顔を覗き込むと、意外にも、酷く反省したエリウッドの面持ちが目に入り、私は思わず黙ってしまった。
沈黙してしまった私の代わりに、エリウッドがぽつ、ぽつと言葉を紡いでいく。
「すまん……返す言葉もない……俺の軽率な行動で、皆の命を危険にさらしてしまった……」
痛々しいほど、力のない言葉だった。
本当に、心の底から申し訳ないという感情のこもった言葉でもあった。
エリウッドは少しだけ顔を上げ、私の目を見て話し続ける。
「酒が入っていたせいもあるが、あんな下劣な男に、パーミル王国を軽んじられ、誰よりも誠実であった父上を侮辱され、挙句の果てに、出たくもない会談にわざわざ出てくれたお前のことを、目の前で徹底的にコケにされて、完全に理性を失ってしまった……」
「私のために、怒ってくれたんですか?」
「綺麗な言い方をすればそういうことになるかもしれんが、結局のところ、俺は自分の感情を抑えられなかっただけだ……重ねて謝罪する……すまん……」
私は何と言葉を返していいか分からず、黙り込む。
……エリウッドのとった行動は軽率だったと思うが、それでも、少しだけ嬉しい気持ちが、自分の中にある。だって私自身も、オルソン聖王国の王子にこれ以上ないほどの侮辱を受け、我慢の限界だったから。
あそこでエリウッドが怒ってくれなかったら、私は逆上して、オルソン聖王国の王子に対し、破壊の力を使っていたかもしれない。
もしもそうなっていたら、今とは比べ物にならないほどまずい状況になっていただろう。さすがに、王子を殺した私をそう簡単に逃がしはしないと思うし、私自身も、殺人者となってしまうところだった。あんな最低の男を消し飛ばして、一生人殺しの十字架を背負って生きていくのは嫌である。
そう考えると、私のために怒ってくれたエリウッドに対し、改めて感謝の気持ちが込み上げてくる。さっきは『少しだけ嬉しい』という控えめな表現をしたが、実際のところは、私は彼の行動をとてもありがたく思っているのだろう。
7
お気に入りに追加
1,179
あなたにおすすめの小説
《完結》国を追放された【聖女】は、隣国で天才【錬金術師】として暮らしていくようです
黄舞
恋愛
精霊に愛された少女は聖女として崇められる。私の住む国で古くからある習わしだ。
驚いたことに私も聖女だと、村の皆の期待を背に王都マーベラに迎えられた。
それなのに……。
「この者が聖女なはずはない! 穢らわしい!」
私よりも何年も前から聖女として称えられているローザ様の一言で、私は国を追放されることになってしまった。
「もし良かったら同行してくれないか?」
隣国に向かう途中で命を救ったやり手の商人アベルに色々と助けてもらうことに。
その隣国では精霊の力を利用する技術を使う者は【錬金術師】と呼ばれていて……。
第五元素エーテルの精霊に愛された私は、生まれた国を追放されたけれど、隣国で天才錬金術師として暮らしていくようです!!
この物語は、国を追放された聖女と、助けたやり手商人との恋愛話です。
追放ものなので、最初の方で3話毎にざまぁ描写があります。
薬の効果を示すためにたまに人が怪我をしますがグロ描写はありません。
作者が化学好きなので、少し趣味が出ますがファンタジー風味を壊すことは無いように気を使っています。
他サイトでも投稿しています。
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~
岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。
本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。
別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい!
そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!
隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。
※三章からバトル多めです。
聖女として全力を尽くしてまいりました。しかし、好色王子に婚約破棄された挙句に国を追放されました。国がどうなるか分かっていますか?
宮城 晟峰
ファンタジー
代々、受け継がれてきた聖女の力。
それは、神との誓約のもと、決して誰にも漏らしてはいけない秘密だった。
そんな事とは知らないバカな王子に、聖女アティアは追放されてしまう。
アティアは葛藤の中、国を去り、不毛の地と言われた隣国を豊穣な地へと変えていく。
その話を聞きつけ、王子、もといい王となっていた青年は、彼女のもとを訪れるのだが……。
※完結いたしました。お読みいただきありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる