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第63話
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「ああ。それについては、歩きながら話そう。式典の時間が迫っている」
「式典?」
「お前への、一級市民権の授与式典だ。一級市民とは、他国の貴族に相当する立場。そう簡単に人数を増やすものではないから、新しい一級市民を迎え入れる場合、他の一級市民を集めて、新人が一級市民に相応しい人物かどうか見極めることになっている。面倒な行事だが、大切な行事でもある。だからこうして、俺も正装しているのだ」
そう言ってマントを持ち上げ、歩き出すエリウッド。
私も彼のあとに続きながら、会話を継続する。
「なるほど。それじゃあ私も、お行儀よくしてないといけませんね」
「いつも通りでいい。お前に猫をかぶった大人しい振る舞いができるとは思えんしな」
「ひどい。まあ、その通りかもしれませんけど」
「案ずるな。誰もお前が一級市民になることに異議を唱えたりはせぬよ。お前が伝承の聖女であるという噂は、すでに彼らの間にも広まっているからな。それでも、誰かがぶつくさと文句を言ってきたら、俺が黙らせてやる。胸を張って、堂々としていろ。聖女らしくな」
「それなんですけど、私、本当にその『伝承の聖女』なんでしょうか? たまたま破壊的な超能力が使える、ただの一般人かもしれませんよ?」
「相変わらずたわけたことを言う。破壊的な超能力が使えるのなら、それはもはや一般人ではないだろう。……お前の破壊の力、あれは詳しい調査の結果、魔法とは異質の力であることが分かった。魔法というものは、使用する際、大気中のマナという物質を魔力に変換して奇跡のごとき現象を起こすことは知っているな?」
「いえ、知りませんけど……」
「ええい、それくらい知っていろ。この世界の一般常識だ。……こほん、話を戻すぞ。お前の破壊の力からは、今述べた魔力変換の反応が一切検知されなかった。つまりあれは、マナを必要としない、純粋な超能力というわけだ。調査に当たっていた魔導師たちも驚いていたよ。『この力は我々の理解を超えています』とな」
ふーむ、そういえばメリンダも、火水土風――四大元素のどれにも属さない、完全な破壊のための魔法なんてこの世に存在しないって言ってたっけ。
「我々の理解を超えた力を平然と振るう、異世界よりの来訪者。これが聖女でなくてなんとする。お前はパーミルだけではなく、人類の希望となるかもしれん。これからも期待しているぞ」
「式典?」
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「それなんですけど、私、本当にその『伝承の聖女』なんでしょうか? たまたま破壊的な超能力が使える、ただの一般人かもしれませんよ?」
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「いえ、知りませんけど……」
「ええい、それくらい知っていろ。この世界の一般常識だ。……こほん、話を戻すぞ。お前の破壊の力からは、今述べた魔力変換の反応が一切検知されなかった。つまりあれは、マナを必要としない、純粋な超能力というわけだ。調査に当たっていた魔導師たちも驚いていたよ。『この力は我々の理解を超えています』とな」
ふーむ、そういえばメリンダも、火水土風――四大元素のどれにも属さない、完全な破壊のための魔法なんてこの世に存在しないって言ってたっけ。
「我々の理解を超えた力を平然と振るう、異世界よりの来訪者。これが聖女でなくてなんとする。お前はパーミルだけではなく、人類の希望となるかもしれん。これからも期待しているぞ」
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