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第36話

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 そう言うわけで、魔物退治のため、私はエリウッドと共に立派な馬車に乗り、パーミルから少し離れたところにある洞窟に向かっている。

 さすがは王室用の馬車というべきか、車輪の回転は実に滑らかで、ほとんど振動もない。私は窓から流れゆく景色を眺めながら、エリウッドに問う。

「あの、ちょっと疑問に思ったんですけど、魔物は街道に出没してるのに、なんで洞窟に行くんですか?」

 魔物退治用の、凛々しい甲冑姿に着替えたエリウッドが、頬杖を突きながら言う。

「マリヤ、お前、パーミルにつく前に、街道でヘルハウンドと遭遇したと言っていたが、ヘルハウンドが出現する瞬間は、見たか?」

「えっ? あっ、どうだったかな……たぶん、見てないです。嫌な臭いがして、周囲が暗くなって、それで、気がついたらいきなり、ヘルハウンドがいたって感じでしたから」

「そう、いきなりだ。魔物はいつも、何もないところから、いきなり現れる。だから、街道をパトロールしていても、いつ現れるか分からないし、時間の無駄だ。それに、一匹や二匹倒したところで、根本的解決にはならない。重要なのは、『魔物たちを呼び出している存在』を直接叩くことだ」

「魔物たちを呼び出している存在って……そんなのがいるんですか?」

 エリウッドは、頷いた。

「魔物たちの間にも、知能による序列のようなものがあってな、人に似た、高い知能を持つ『魔人』が、ヘルハウンドのように、戦闘力は高いが知能の低い『魔獣』を異空間から呼び出し、人間を襲わせているのだ」

「へえ……何のために、そんなことを?」

「こっちが知りたいよ。魔物の考えなど、わかるはずがない」

「でも、その『魔人』って、高い知能を持ってるんでしょ? なら、意思の疎通も可能なんじゃ……」

「マリヤ、お前は魔人を見たことがないから、そんなことが言えるんだ。確かに、奴らの知能は高いし、人間の言語や文化も理解している。しかし、決して分かり合うことはできない。……これから実際に相対すれば、俺の言っていることがすぐにわかるだろう」

「…………」

「魔人の潜伏場所を特定するのに時間がかかってしまい、すでに何人もの旅人が命を落としている。彼らの犠牲に報いるためにも、確実に魔人を仕留めなければならない。期待しているぞ、マリヤ」

 何人もの旅人が命を落としている、か。

 昨日、私と偶然出会わなければ、あの親切な行商人――ホランドさんも、ヘルハウンドの餌食になっていたかもしれない。そう思うと、確かに魔人とやらを放置しておくわけにはいかない。私は気を引き締め、頷いた。
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