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第35話

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「それはもちろん、構いませんけど……あの……」

「なんだ?」

「私の市民権って、どうなるんでしょう?」

「ん? ああ、そうか。まだ市民登録が済んでいなかったのか。案ずるな、すぐに何とかする」

 やった。

 色々あったが、どうにかパーミル王国の国民となることができそうで、ホッと一安心である。ぎゅっと両こぶしを握り締め、ガッツポーズをとる私に、エリウッドは事も無げに言う。

「お前には『伝承の聖女』として、これから活躍してもらわなければならないからな。そのためにも、それなりの地位についてもらわなければ困る。よし、まずは一級市民になってもらうとするか」

「えっ? 一級市民って、確か、他の国の貴族に相当する立場……ですよね? 私、二級市民ですらないんですけど、そんないきなり、簡単に一級市民にしちゃっていいんですか?」

「何を言う、別に簡単ではないぞ。二級市民権付与とは違い、一級市民になるためには、『パーミル全国民のためになる偉大なことをした』という実績が必要だからな」

「私、そんな実績なんかないんですけど……」

「わかっている。だが、大した問題ではない。実績がないなら、作ればいいのだ。正々堂々とな。……と言うわけで、今から魔物を退治に行くぞ」

「今から!? いきなりすぎません!?」

「いや、討伐自体は、数日前から計画していたのだ。最近、魔物たちの行動が妙に活発になっていて、街道を行く人々が困っているからな。王族と協力し、たぐいまれな破壊の力で魔物を退治したとなれば、お前の評判は一気に高まり、一級市民権を付与したとしても、誰も文句は言うまい」

「は、はぁ……そんなにうまくいきますかね……魔物をやっつけたくらいで」

「ふむ。マリヤ、どうやらお前、魔物を倒すということが、どれだけ大変なことか、よく分かっていないようだな」

「えっ? あっ、はい。まあ、それはそうかも……」

 確か昨日、メリンダにも同じようなことを言われたなぁ。私が一瞬で消し去ったヘルハウンドだって、普通なら倒すのにもの凄く苦労するって話だもんね。

「魔物は、強い。圧倒的な攻撃能力と俊敏さに加え、自己再生能力まで持ち合わせており、とどめを刺さなければ、腕の一本や二本……いや、体の半分が無くなっていても、しばらく経てば復活してしまう。だから、存在そのものを跡形も無く消滅させられるお前の力は、恐ろしく貴重であり、得難いものなのだ」

 な、なるほど……

 魔物って聞くと、ゲームとかのイメージが大きいから、ちょっと攻撃したら消えちゃうように思ってたけど、体が半分になっても復活しちゃうなんて、そりゃ厄介ね。この世界の魔物は皆強力で、『雑魚モンスター』なんてものは存在しないようだ。
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