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第8話

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「うーん、魔力の発動に、何か条件があるのかもね」

「魔法って、そういうものなんですか?」

「そういうものらしいよ。僕は魔法が使えないけど、何人か魔法使いの知り合いがいるから、少しは詳しいんだ。彼らが言うには、強力な魔法ほど、発動させるためには複雑な条件が必要だから、きみの『黒い光』も、そんな感じなのかもしれない」

「複雑な条件かぁ……私、さっき、何か変わったことやったかなぁ? はぁ、パーミルに着いても、その条件が分からないままで、魔法が全然使えなかったらどうしよう」

「まあまあ、そんなに気を落とさないで。一度はできたんだから、そのうち、自由自在に使いこなせるようになるさ」

 何の根拠もない励ましではあるが、その気遣いが嬉しかった。
 さっきも言ったが、このホランドさんに出会えて、本当に良かった。

 食料を貰えて嬉しいとか、パーミルまで馬車で連れて行ってくれて助かるとか、そういう単純なメリットの話だけではなく(もちろんそれらもありがたいのだが)、異世界人にも親切で温厚な人がいると知れたことが、私にとっては、とても大きな収穫だった。

 何せ、最初に会った異世界人たちが最悪すぎたので、もしかして、どこに行ってもあんな感じの人間ばかりかもしれないと思い、ずっと不安だったのだ。でも、ホランドさんみたいに優しい人もいるとわかったし、たぶん私、この世界でも、なんとか頑張っていける……と思う。

 捨てる神あれば拾う神あり――

 見てなさいよ、オルソン聖王国の差別主義者ども。すぐにあの『黒い光』の魔法を使いこなして、パーミル王国で成り上がってみせるんだから。

 青空の向こう。
 まだ見ぬ新天地に思いを馳せ、私はグッとこぶしを握り締めるのだった。





 それから、およそ6時間。
 私たちはとうとうパーミル王国に到着した。

 街道は途中から、きちんと舗装された道路になり、それまでの倍のスピードで馬車を走らせることができたのに、こんなに時間がかかってしまうとは……。徒歩だったら、ここにたどり着くまでに、いったいどれだけの時間が必要だったか、想像もしたくない。

 いや、時間がどうこう以前に、水も食糧も持っていなかった私は、ホランドさんに助けてもらわなかったら、野垂れ死にしていてもおかしくなかっただろう。パーミル王国の門前にて、私は改めてホランドさんに感謝の言葉を述べる。

「ホランドさん、ここまで乗せてきてもらって、本当にありがとうございました」
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