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第三章 誰にでも秘密はある

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「王族が嫌いか·····デビュタントの時にそれを感じたか·····。キャスティナの凄さを感じるよ」

 アルヴィンが、呟いた。

「そうじゃな。まぁー、キャスティナの場合、色々な経験をしてるからのー。普通の令嬢と比べられんよ。それで、何で姿を消したんじゃ?」

 デズモンドが、キャスティナに尋ねる。

「貴族社会から逃げたくなって。サディアス殿下に対して、怒りが収まらなくて。エヴァン様にも、どこまで説明すればいいかわからなかったし。ただのティナになって考えたかったんです。考えて少し充電したら、ちゃんと戻るつもりでしたよ」

 キャスティナは、三人の顔を気まずそうに見る。

「そうか·····。貴族社会か·····。逃げる先まで用意があって、私やコーンフォレス家が探し出せなかったんだからキャスティナには、負けるよ」

 アルヴィンが、呆れているのか笑っている。

「あの場所は、キャスティナにとって特別な場所じゃからな。迎えに行った時の顔が、スッキリした良い顔じゃったよ」

「はい。ゆっくり考えられましたし。デズモンドお祖父様に会えましたから。皆さんに心配させて申し訳なかったですが·····私としては収まる所に収まりました」

 キャスティナが、にっこり笑顔になる。

「あの、私はもう少し癒し系魔法について聞きたいんだけど、いいかな?」

 ローレンスが尋ねる。

「はい。話せる事なら」

「大怪我を治す程の魔法を、どうやって習得したんだい?流石に、何もせずって訳ではないと思うんだが」

 キャスティナは、神妙な顔つきに変わる。

「ローレンス様のおっしゃる通りです。母を亡くしてから、独学で学んで練習しました」

 キャスティナは、 途切れ途切れ、当時を思い出しながら話し出した。

 母を亡くしてから少しして、もう大切な人を亡くしたくない。守りたいって強く思うようになった。母を亡くした時に、折角癒し系魔法が使えるのに何も役に立てなかった自分にがっかりした。こんなんじゃダメだって思って、この国で一番大きな図書館に行って魔法について調べた。調べるだけでは、実践で使えないから、どこかに練習出来る場所がないか考えた。

 考えた結果、この王都にいくつかある診療所に行く事にした。貴族が使う様な立派な所ではなくて、お金がない人が使う最低限の医療しか受けれないような所を選んで。

 患者が運ばれて来るのを見ると、一人になる隙をついて魔法をかけて練習した。最初の頃は、上手く行かない事だらけだった。重症患者の多くは、助けられなくて命を落として行った。

「私·····、たくさんの人の死に立ち会いました。最初の頃は、今考えると魔力の量が足りてなかったんだと思います。人の死を見送る度に、もう止めようって何回も思ったんだけど、どうしても止められなくて。半年、一年と続けるうちにようやっと成功するようになったんです」

 キャスティナは、当時を思い出して目頭が熱くなっていた。

 話を聞いていた三人は、それぞれ言葉を失っていた。内容があまりに予想外で、当時まだ13歳か14歳だったはずの女の子が今聞いた内容の事をやってのけた事実に驚愕していた。

「私は、大切な誰かを守る為に頑張ったんです。国が戦う為になんか何で使わなきゃいけないのかって、冗談じゃないって。サディアス殿下には、怒りしかないです」

 キャスティナは、目を真っ赤にしてローレンスに向かって厳しい目付きを向けた。

 キャスティナは言わなかったが、この時に記憶を抜き取る魔法も合わせて練習していた。だから、治療した患者は死亡した者以外は、誰もキャスティナの事を覚えていなかった。

「そうか·····。キャスティナ嬢、話してくれてありがとう。君の言い分はよくわかるよ。君は、決して間違ってない」

 ローレンスが優しくキャスティナに語りかける。

「ああ。全くだ。キャスティナは、流石私の妹分だけの事はある。素晴らしいな」

 アルヴィンは、しきりに感心していた。

「キャスティナ、よく君の秘密を話してくれた。君が言う様に、とてつもなく慎重に扱わなくてはいけない内容だ。サディアス殿下の事、と言うより王族の事について、君には話しておいた方がいいと私は思う。四大公爵家には、王族に関する秘密があるんだ。この事は、限られた人間しか知らない事だ」

 デズモンドが、ローレンスとアルヴィンに目配せをする。二人とも了承を示すように頷いた。

「ただ、今日はもう早くコーンフォレス家に帰った方がいい。みんな首を長くして待ってるから。この話は、後日改めてゆっくり話そう。悪いが、どちらか送って行ってくれ」
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