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第三章 誰にでも秘密はある

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 クラウスがキャスティナの格好を見て、驚いた顔をしていたが、特に何も言う事なくキャスティナを馬車に乗せた。馬車に向かい合って座った後、クラウスが今日起こった事を話し出した。

 今日は、サディアス殿下と共に町の視察に出ていた。王宮に帰る道の途中で、倒れてる女性がいた。声をかけ介抱しようとしている所を、サディアス殿下を乗せた馬車が襲われた。その場に居合わせた護衛達も、倒れていた女性に気を取られて初動が遅れ、負傷者が多数出たらしい。

 運悪く女性を助け起そうとしていたのが、エヴァンだった。矢が飛んで来たため、女性を庇いながら避けたが、背中に矢が刺さってしまったらしい。

 サディアス殿下は、傷を負いながらも近衛騎士がしっかり守ったので無事だった。

 そこまで聞いてキャスティナは、顔が真っ青になる。手が震えてしまい、拳を握り混む。キャスティナは、必死で声を出した。

「エッエヴァン様は、どうなったんですか?」

 キャスティナは、クラウスの顔を見る。

「命に別状は無いが、矢の当たり所が悪かったらしく手足に麻痺が残るかも知れないと·····」

 クラウスの表情は、冴えない。クラウス自身も対応に負われ疲労が見てとれる。それになにより、エヴァンの事を煩悶しているのがわかる。

 キャスティナは、緊迫していた気持ちを落ち着かせる為に息を吐いた。大丈夫。怪我なら私の力で何とかなる。大切な人を助ける為に、今まで頑張って来たんだ。キャスティナは、自分を奮い立たせた。

「クラウス様、大丈夫です。私を迎えに来てくれてありがとうございました」

 キャスティナは、さっきとは違うしっかりした顔でクラウスに言った。クラウスは、驚いているが説明を求めて来ない。きっと、自分が知る立場にない事がわかっているのだろうとキャスティナは思った。

 馬車が王宮に到着した。夜も遅く、人目につかない様にと言う配慮の下、裏口に馬車がつけられた。素早く馬車から降り、王宮内に入るとクラウスが、エヴァンの元に案内する。キャスティナのスーツケースは、クラウスが持って来てくれた。キャスティナは、マントのフードを被り足早にクラウスについて行く。ワンピースにペタンコ靴と言う服装の為、キャスティナは貴族令嬢としての所作を取っ払っていた。

 ある部屋の扉の前で、クラウスは足を止める。キャスティナに待っている様に告げると、ノックをして扉を開けた。

「アルヴィン隊長、キャスティナ様をお連れしました」

 クラウスが、部屋の中に向かって声をかけると足音が聞こえた。アルヴィンがキャスティナの所まで歩いて出て来た。キャスティナは、アルヴィンの姿を見るとアルヴィンに飛び付いた。

「アルヴィン隊長。私を信じてくれて、呼んでくれてありがとう」

 キャスティナは、涙目でアルヴィンの顔を見た。アルヴィンは、キャスティナを見て一瞬驚いた顔をしたがすぐに真剣な顔に戻し小声でキャスティナに話しかける。

「キャスティナ、中にサディアス殿下がいるんだ。退出するように促してるんだが、出てくれそうにない」

 キャスティナは、それを聞きイラッとした。サディアス殿下か·····。厄介な人だ。一国の王子であるのはわかっているが、キャスティナにとって邪魔でしかなかった。関わり合いになりたくないのに、仕方ないな·····。キャスティナは、覚悟を決めた。力強い目で扉を見据える。

「わかりました。では、アルヴィン隊長とクラウス様はここで待機でお願いします。他の人をこの部屋に入れないで下さい」

 アルヴィンは、戸惑った様な顔をしている。

「だが·····大丈夫なのか?」

「大丈夫です。サディアス殿下とエヴァン様以外にこの部屋に、誰かいますか?」

「いや、先ほど二人以外は下がらせた」

「ありがとうございます。では、後は任せて下さい」

 キャスティナは、扉をノックする。
 コンコン。

「入れ」サディアスの声が聞こえた。

 部屋に入ると、ベッドが正面にありエヴァンが俯せに横になってるのが見えた。ベッドの横の椅子にサディアス殿下が座っていた。

「失礼いたします。キャスティナ・クラーク・エジャートンです」

 サディアスに向かってお辞儀をした。
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