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第二章 貴族としての生活

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 それから1ヶ月間程、お義母様やお義姉様の都合が良い日は、礼儀作法の講義・ダンスレッスン・夜会でのマナー・お茶会でのマナー・貴族的な話し方など実に様々な事を学んだ。キャスティナは、元々学ぶ事が好きで素直な性格なのでそこまで苦労する事なく、仕草や動作が磨きあげられて行った。問題は、貴族的な話し方や臨機応変に対応しなければならない、男性や他の令嬢へのあしらい方だ。

 シンシアとアイリーンは、キャスティナがエヴァンの婚約者として夜会に出席するようになれば、他の男性から目に止まる様になるだろうと予想している。質の悪い人に当たったときに、キャスティナが自分で対処できるのか些か不安だ。また他の令嬢からのやっかみも凄いだろう。エヴァンを狙っていた令嬢は、本当に多い。そして割と質が悪い。それをキャスティナは、上手く躱せるのか?それが一番の悩みの種となっている。二人は相談して、外堀を埋めようと言う事になった。

 シンシアやアイリーンの仲の良い友達を、お茶会に呼びキャスティナを紹介する。お茶会の練習も出来るし、キャスティナよりも上の世代に好印象を持ってもらう事により、キャスティナを助けてくれる目を増やそうと言う話になった。シンシアやアイリーンの友達ともなると、それなりの地位の方ばかりだ。きっと力になってくれるはず。

 そうして、開かれたお茶会。まずはシンシアの友達に次男の婚約者として紹介する。皆さん、招待状を送ると興味津々で長らく独身を貫いて来たエヴァンの婚約者がどんな人なのか楽しみにしていたようだ。しかも今まで、迫ってくる令嬢を冷たくあしらっていたのに婚約したとたんに、早く家に帰るようになりいったいどんな方なのかと夜会で話題にのぼっている。

 お茶会当日、キャスティナはそれはそれは緊張していた。緊張が伝わって、シンシアまで久しぶりに緊張してしまったものだ。でも、あの屈託ない笑顔で綺麗なカーテシーを決めたキャスティナは、お客様の心を一瞬で掴んだ。付き添いとして遠目から見ていたアイリーンによると、お義母様まで一緒に緊張していて、お客様達にも緊張が伝わり、自然とみんなが応援してしまいたくなる雰囲気だったそう。そこで、あの笑顔ときれいなカーテシーでお客様の心を射抜いたらしい。

 その後も、キャスティナのあの尊敬の眼差しで見つめられたり、楽しく話をしたり、なんと言ってもキャスティナが何かあるとお義母様を頼って相談してる姿が本当に微笑ましかったらしい。結果、素敵なお嫁さんで羨ましいわとなった。お茶会に参加した方々が、家に帰って旦那様に話をしたり、他のお茶会や夜会で素敵なお嬢様だったわと広めてくれた。

 アイリーンのお茶会では、お義母様とのお茶会での評判が回った後だったので、皆さん自然とキャスティナを受け入れてくれた。ここでも、義姉を慕うキャスティナの様子が可愛らしくアイリーンの友達も妹分として認めてくれた。

 そして何より、一緒に連れて来た子供達から受けが良かった。キャスティナはクリアとすっかり仲良くなっていたため、そのお友達とも仲良く遊んだ。子供達の方が大人を見る目は、正直だ。これだけ子供達がなつくなら間違いないだろうと、アイリーンの友達たちは感心した。アイリーンのお茶会に参加した方々も、他のお茶会や夜会で可愛らしいお嬢さんよっと広めてくれた。

 キャスティナは、夕食の席でその話を知る。お義母様とお義姉様の思惑通りに、事が運んで二人は喜んでいた。しかも、一週間後の王宮の夜会にエヴァンと一緒に出席するよう言われる。そこで、エヴァンの仕事仲間や第一王子に紹介されるらしい。エヴァン曰く、話題になってる婚約者に早く会わせろとエヴァンの周りがうるさいらしい。

 えっ?話題になってるって?素敵な婚約者って?盛りすぎなんじゃ……。しかも、ほとんど初めてと言ってもいいくらいの夜会で、王子に挨拶って……。ハードル高すぎでしょうが‼とキャスティナは、心の中で叫んだ。

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