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041 試験結果
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それから毎日、時間が許す限りリリーは勉強をしていた。ダニエルから、家庭教師を雇ってもいいと言われたが、それは丁重に断った。
ただでさえ、自分を滞在させてくれているだけでもお金がかかっているはずだ。その上、家庭教師までなんてとてもじゃないが受け入れられない。
だからリリーは、マーティン家の図書室で一人で勉強をした。ある程度は、自分もフローレス家にいた時に家庭教師から習っている。
学問を今まで使ったことがなかったので、すっかり忘れているが本を読みながら復習していけば何とかわかる。
ただ、リリーが狙うのは学費の無料枠に入ること。それを狙う為には、良い成績で合格しなければいけない。
バーバラやアレンのことが常に頭の片隅にはあったが、ダニエルが心配することはないと言ってくれた。試験が終わって落ち着いたら、バーバラに手紙を書けばいいと。
バーバラにもリリーの状況は報告しているので、彼女も安心しているそう。バーバラとこんなに長いこと離れて暮らすのは初めてだから、そのことが聞けてとてもホッとした。
リリーは試験までの数週間、がむしゃらに勉強をした。どうしても分からないところはダニエルに聞いた。ダニエルは、伯爵家の子息だけあってどの教科も熟知している。
学園に通っていた時の成績を聞くと、いつも上位20番内にはいたらしい。勉強は昔から嫌いではなく苦ではなかったのだそう。それを聞いてとても羨ましく思った。
リリーは、学園に行くこともなく領地で家庭教師に習っていたので、自分に学問が必要になることがあるのか疑問だった。だからか、やる気になれず全く身に入らなかったのだ。
最低限のことだけ理解すればいいとその程度の感覚だった。今になって、あの時にもっと真剣に勉強しておけば良かったと後悔する。
それでもリリーは、自分の今までを取り戻すように必死に頑張った。人生で、こんなに一生懸命取り組んだのは初めてだ。
いつも自分はどっかで、どうせ何をやっても仕方がないと諦めていたことに気づく。
リリーは、両親にも兄姉にも可愛がられていたし、何かに苦労したこともなかったが毎日が平坦だった。
自分には何か特別なことが起こる訳でも、何かを成し得ることもないと勝手に決めつけていた。今まで、自分のことを振り返ることなんてしてこなかったが……。グレンに嵌ってしまった原因は、こんなところにもあるのかもしれないと反省した。
◇◇◇
そして迎えた試験当日、ダニエルを始めとするマーティン家のみんなに見送られて会場へと足を運んだ。
リリーにとって、初めてのチャレンジだったこともありとても緊張した。試験会場には、身分に関係なくどの人も平等に扱われている。
ヴォリック国には、こういった施設は存在しない。学びたいと思う人に、平等に機会を与えるこの国は素晴らしい。
リリーは、マーティン家の応援があり万全の体制で試験に挑むことができた。準備期間は短かったけれど、試験の手ごたえもよくリリーが初めて充実感を得られた体験だった。
試験を終えて、マーティン家に戻るとダニエルが心配していたのか屋敷でリリーの帰りを待っていてくれた。
「ダニエル様、ただいま帰りました」
リリーは、なんだか家族にでもなったかのような錯覚を覚える。すっかり、マーティン家にいることが当たり前になってしまった。
「ああ、おかえり。試験の手ごたえはどうだった?」
ダニエルは、待ちきれないかのように訊ねる。
「一生懸命、勉強した甲斐あって自分でもかなり良くできたと思います。でも、油断しちゃ駄目なのでまだわかりません」
リリーは、正直な自分の感想を述べる。大丈夫だとは思うけれど、でも絶対なんてことは言えない。
「そうか。手ごたえがあったなら良かった。本当に頑張っていたから」
ダニエルが、笑顔で安心したように言う。そんな顔を見ていると、応援してくれるダニエルの為にも、絶対に合格したいとリリーは思った。
そして合格発表の日、リリーに付いてダニエルも一緒に来てくれた。学園の門を通ってすぐの掲示板に、自分の受験番号を確認する。
リリーの胸は、はち切れそうなほどドキドキしていた。もし、落ちていたらヴォリック国に帰る約束を両親としている。自分は何も変わらにまま、自国に戻りたくはなかった。
(どうか合格していますように……)
リリーは、心の中で祈る。隣を歩く、ダニエルも緊張しているようだった。二人で、掲示板まで並んで歩いた。ダニエルにも、リリーの受験番号は教えている。
掲示板の前には、人が群がっていて涙を流して喜ぶ人や表情を失くして落ち込んでいる人と様々だった。
リリーは、人の群れの一番後ろから掲示板を見る。少し距離があり、人の頭が邪魔でよく見えない。すると、隣で立って見ていたダニエルが突然大きな声を上げた。
「あった!! リリー、あったよ!」
ダニエルが、自分のことのように喜んでガッツポーズをしている。リリーは、自分の目で確かめるまではと人波を押しのけて掲示板が見える場所に移動した。
そして、自分の番号を確認する。ダニエルに言われたように、本当に自分の番号があった。
「あった! 良かったー」
リリーは、ホッとして力が抜ける。ダニエルも、リリーの隣まで人波を押しのけて来てくれた。
「ダニエル様、ありました! 私、合格していました!」
リリーは、満面の笑みでダニエルに報告する。
「うん。良かった。本当に良かった! さあ、早く帰ってみんなに報告しよう。リリーの両親もうちの両親も、あと姉も心配していたから」
ダニエルが、ニカっと歯を見せて笑う。
(クリスタル様まで、心配してくれていたなんて……)
リリーは、胸がじーんと温かくなる。こんな風にみんなに心配して貰えて物凄く嬉しい。自分には何もないと思っていたけれど、頑張ればちゃんと合格できた。リリーの中で、小さな若葉が芽生えた瞬間だった。
ただでさえ、自分を滞在させてくれているだけでもお金がかかっているはずだ。その上、家庭教師までなんてとてもじゃないが受け入れられない。
だからリリーは、マーティン家の図書室で一人で勉強をした。ある程度は、自分もフローレス家にいた時に家庭教師から習っている。
学問を今まで使ったことがなかったので、すっかり忘れているが本を読みながら復習していけば何とかわかる。
ただ、リリーが狙うのは学費の無料枠に入ること。それを狙う為には、良い成績で合格しなければいけない。
バーバラやアレンのことが常に頭の片隅にはあったが、ダニエルが心配することはないと言ってくれた。試験が終わって落ち着いたら、バーバラに手紙を書けばいいと。
バーバラにもリリーの状況は報告しているので、彼女も安心しているそう。バーバラとこんなに長いこと離れて暮らすのは初めてだから、そのことが聞けてとてもホッとした。
リリーは試験までの数週間、がむしゃらに勉強をした。どうしても分からないところはダニエルに聞いた。ダニエルは、伯爵家の子息だけあってどの教科も熟知している。
学園に通っていた時の成績を聞くと、いつも上位20番内にはいたらしい。勉強は昔から嫌いではなく苦ではなかったのだそう。それを聞いてとても羨ましく思った。
リリーは、学園に行くこともなく領地で家庭教師に習っていたので、自分に学問が必要になることがあるのか疑問だった。だからか、やる気になれず全く身に入らなかったのだ。
最低限のことだけ理解すればいいとその程度の感覚だった。今になって、あの時にもっと真剣に勉強しておけば良かったと後悔する。
それでもリリーは、自分の今までを取り戻すように必死に頑張った。人生で、こんなに一生懸命取り組んだのは初めてだ。
いつも自分はどっかで、どうせ何をやっても仕方がないと諦めていたことに気づく。
リリーは、両親にも兄姉にも可愛がられていたし、何かに苦労したこともなかったが毎日が平坦だった。
自分には何か特別なことが起こる訳でも、何かを成し得ることもないと勝手に決めつけていた。今まで、自分のことを振り返ることなんてしてこなかったが……。グレンに嵌ってしまった原因は、こんなところにもあるのかもしれないと反省した。
◇◇◇
そして迎えた試験当日、ダニエルを始めとするマーティン家のみんなに見送られて会場へと足を運んだ。
リリーにとって、初めてのチャレンジだったこともありとても緊張した。試験会場には、身分に関係なくどの人も平等に扱われている。
ヴォリック国には、こういった施設は存在しない。学びたいと思う人に、平等に機会を与えるこの国は素晴らしい。
リリーは、マーティン家の応援があり万全の体制で試験に挑むことができた。準備期間は短かったけれど、試験の手ごたえもよくリリーが初めて充実感を得られた体験だった。
試験を終えて、マーティン家に戻るとダニエルが心配していたのか屋敷でリリーの帰りを待っていてくれた。
「ダニエル様、ただいま帰りました」
リリーは、なんだか家族にでもなったかのような錯覚を覚える。すっかり、マーティン家にいることが当たり前になってしまった。
「ああ、おかえり。試験の手ごたえはどうだった?」
ダニエルは、待ちきれないかのように訊ねる。
「一生懸命、勉強した甲斐あって自分でもかなり良くできたと思います。でも、油断しちゃ駄目なのでまだわかりません」
リリーは、正直な自分の感想を述べる。大丈夫だとは思うけれど、でも絶対なんてことは言えない。
「そうか。手ごたえがあったなら良かった。本当に頑張っていたから」
ダニエルが、笑顔で安心したように言う。そんな顔を見ていると、応援してくれるダニエルの為にも、絶対に合格したいとリリーは思った。
そして合格発表の日、リリーに付いてダニエルも一緒に来てくれた。学園の門を通ってすぐの掲示板に、自分の受験番号を確認する。
リリーの胸は、はち切れそうなほどドキドキしていた。もし、落ちていたらヴォリック国に帰る約束を両親としている。自分は何も変わらにまま、自国に戻りたくはなかった。
(どうか合格していますように……)
リリーは、心の中で祈る。隣を歩く、ダニエルも緊張しているようだった。二人で、掲示板まで並んで歩いた。ダニエルにも、リリーの受験番号は教えている。
掲示板の前には、人が群がっていて涙を流して喜ぶ人や表情を失くして落ち込んでいる人と様々だった。
リリーは、人の群れの一番後ろから掲示板を見る。少し距離があり、人の頭が邪魔でよく見えない。すると、隣で立って見ていたダニエルが突然大きな声を上げた。
「あった!! リリー、あったよ!」
ダニエルが、自分のことのように喜んでガッツポーズをしている。リリーは、自分の目で確かめるまではと人波を押しのけて掲示板が見える場所に移動した。
そして、自分の番号を確認する。ダニエルに言われたように、本当に自分の番号があった。
「あった! 良かったー」
リリーは、ホッとして力が抜ける。ダニエルも、リリーの隣まで人波を押しのけて来てくれた。
「ダニエル様、ありました! 私、合格していました!」
リリーは、満面の笑みでダニエルに報告する。
「うん。良かった。本当に良かった! さあ、早く帰ってみんなに報告しよう。リリーの両親もうちの両親も、あと姉も心配していたから」
ダニエルが、ニカっと歯を見せて笑う。
(クリスタル様まで、心配してくれていたなんて……)
リリーは、胸がじーんと温かくなる。こんな風にみんなに心配して貰えて物凄く嬉しい。自分には何もないと思っていたけれど、頑張ればちゃんと合格できた。リリーの中で、小さな若葉が芽生えた瞬間だった。
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