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飯屋の娘に転生した現代人が、ただ特別な日をお祝いしたいだけのお話。
その3 わたしにできること
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そんなわけでそう、料理なのです。
今回シーちゃんの誕生日ということで真っ先に浮かんだのが、このケーキでした。やっぱり元日本人としては誕生日といったらケーキ! クリスマスといったらケーキ! というくらいにもう、切っても切り離せない仲だと思うのですよ!(あくまで個人の感想です)
というわけでケーキを作るのはすぐ決まったんですけど、地球でいうなら今日はクリスマス。せっかくだからフランスのブッシュ・ド・ノエルとかドイツのシュトレン、あとはイギリスのクリスマスプディングとか、クリスマスにちなんだものを作ってみるのもありかな~と迷ってたんですけど、ひとつ(だけじゃなかったけど)問題があったのです。そう、それは…………肝心のケーキを焼くのに適した! オーブンが! なかった! のです……。がっかりなのです!
確かにこの世界、基本焼くか煮るかしか調理法がありませんし、ウチは料理屋さんなのでオーブン、というか竈(日本人的にはピザ窯といったほうがイメージしやすいですかね)はあるんですけど、あんな感じの薪を使った火力の調整が難しい代物ばっかりなんですよね。しかも家庭用じゃなくて業務用なのでなかなかに高火力。つまり火加減がとても難しい……。
ついでにいうならタイマーもありませんので、何回か試したんですけど焼き上がりが安定せず、現代日本のスポンジケーキには程遠い出来だったのです……。悲しい。
他にも綺麗な形のスポンジケーキにするための丸い型とか、それに敷くクッキングシートとか、前世の知識はあっても道具がほとんどありませんでした……。しょんぼりです。
……しょんぼりではありますが、それで諦めるわたしではありません。
「お嬢様、こちらは『苺のケーキ』といいまして、厚く焼いたパンケーキを重ね、間にカットした苺とホイップクリームを挟み、周囲にもホイップクリームを塗り、トッピングに苺を飾り付けたスイーツになります」
そう、現代のショートケーキを再現するのではなく、今のわたしにできる、できるかもしれない調理法──フライパンを使ってスポンジケーキのようにできるだけ厚くなるよう、生地にメレンゲを混ぜてなるたけふわふわのパンケーキを焼き、上面にホイップクリーム(材料である卵や乳製品のような生鮮食品は《洗浄》魔法で滅菌済みです)を塗り、カットした苺を並べ、再びホイップクリームを塗って、その上にもう一枚のパンケーキを重ね、側面と上面にホイップクリームを塗って、あとは現代のお誕生日ケーキのように等間隔で円の形に赤い苺と白いホイップクリームをデコレーションして、はい、わたし特製『異世界風苺のケーキ』の完成で~す。
「こ、これ、パンケーキ……なの……!? じゃなくて、え、えっと……パンケーキなのですわ……?」
若干言葉使いがおかしいですけど、あわあわしつつも、興奮からかほっぺが赤く染まり、瞳がキラキラとしているシーちゃんの無邪気な笑顔が眩しいのです。ほっこりしますね。
「はい、ですがこちらは特別な、お嬢様のためにご用意させていただいたスイーツでございます」
パンケーキはシーちゃんの好きな食べ物ですからね。その好物に普段はちょっとお高いので食べられない苺(そこら辺に生っている木苺なんかはよく食べますが)に、見たことないでしょうが、なにやらとても甘そうな香りのするホイップクリームが表面を覆っていますからね。期待に胸が膨らむのも頷けま…………なぜか突然表情が固まったシーちゃんがこちらを向いてチョイチョイと手招きしているので、膝に手をついて少し屈み、椅子に座っている彼女に視線を合わせます。
……な、なんですかね…………?
今回シーちゃんの誕生日ということで真っ先に浮かんだのが、このケーキでした。やっぱり元日本人としては誕生日といったらケーキ! クリスマスといったらケーキ! というくらいにもう、切っても切り離せない仲だと思うのですよ!(あくまで個人の感想です)
というわけでケーキを作るのはすぐ決まったんですけど、地球でいうなら今日はクリスマス。せっかくだからフランスのブッシュ・ド・ノエルとかドイツのシュトレン、あとはイギリスのクリスマスプディングとか、クリスマスにちなんだものを作ってみるのもありかな~と迷ってたんですけど、ひとつ(だけじゃなかったけど)問題があったのです。そう、それは…………肝心のケーキを焼くのに適した! オーブンが! なかった! のです……。がっかりなのです!
確かにこの世界、基本焼くか煮るかしか調理法がありませんし、ウチは料理屋さんなのでオーブン、というか竈(日本人的にはピザ窯といったほうがイメージしやすいですかね)はあるんですけど、あんな感じの薪を使った火力の調整が難しい代物ばっかりなんですよね。しかも家庭用じゃなくて業務用なのでなかなかに高火力。つまり火加減がとても難しい……。
ついでにいうならタイマーもありませんので、何回か試したんですけど焼き上がりが安定せず、現代日本のスポンジケーキには程遠い出来だったのです……。悲しい。
他にも綺麗な形のスポンジケーキにするための丸い型とか、それに敷くクッキングシートとか、前世の知識はあっても道具がほとんどありませんでした……。しょんぼりです。
……しょんぼりではありますが、それで諦めるわたしではありません。
「お嬢様、こちらは『苺のケーキ』といいまして、厚く焼いたパンケーキを重ね、間にカットした苺とホイップクリームを挟み、周囲にもホイップクリームを塗り、トッピングに苺を飾り付けたスイーツになります」
そう、現代のショートケーキを再現するのではなく、今のわたしにできる、できるかもしれない調理法──フライパンを使ってスポンジケーキのようにできるだけ厚くなるよう、生地にメレンゲを混ぜてなるたけふわふわのパンケーキを焼き、上面にホイップクリーム(材料である卵や乳製品のような生鮮食品は《洗浄》魔法で滅菌済みです)を塗り、カットした苺を並べ、再びホイップクリームを塗って、その上にもう一枚のパンケーキを重ね、側面と上面にホイップクリームを塗って、あとは現代のお誕生日ケーキのように等間隔で円の形に赤い苺と白いホイップクリームをデコレーションして、はい、わたし特製『異世界風苺のケーキ』の完成で~す。
「こ、これ、パンケーキ……なの……!? じゃなくて、え、えっと……パンケーキなのですわ……?」
若干言葉使いがおかしいですけど、あわあわしつつも、興奮からかほっぺが赤く染まり、瞳がキラキラとしているシーちゃんの無邪気な笑顔が眩しいのです。ほっこりしますね。
「はい、ですがこちらは特別な、お嬢様のためにご用意させていただいたスイーツでございます」
パンケーキはシーちゃんの好きな食べ物ですからね。その好物に普段はちょっとお高いので食べられない苺(そこら辺に生っている木苺なんかはよく食べますが)に、見たことないでしょうが、なにやらとても甘そうな香りのするホイップクリームが表面を覆っていますからね。期待に胸が膨らむのも頷けま…………なぜか突然表情が固まったシーちゃんがこちらを向いてチョイチョイと手招きしているので、膝に手をついて少し屈み、椅子に座っている彼女に視線を合わせます。
……な、なんですかね…………?
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