怪物王子と偽物王女

K:火炎瓶

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プロローグ

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 舞台にあがる、たったそれだけで私は何者にでもなれた。
 ある日は商人だった。
 ある日は盗賊だった。
 ある日は軍警だった。
 ある日は異国の姫だった。
 ある日は使用人だった。
 ある日は狂った科学者だった。
 ある日は法の番人だった。
 ある日は殺人鬼だった。
 ある日は神官だった。
 ある日は死人だった。
 私ではない何かになるその瞬間、私は誰よりも幸福だった。
 けれども同じくらい絶望した。
 舞台を降りれば、私は私でしかなかったから。
 私は私ではない誰かになりたかった。
 私でいることが許せなかった。
 だから、だと思う。
 私は前代未聞、世間に知れれば首が飛ぶだろう大犯罪の片棒を担いだ。
 トタリア王国第三王女、リーゼロッテに成り代わり、隣国の王子の元に嫁ぐという、大犯罪。
 リスクもリターンも私の頭にはない。
 私はただ、私ではない何者かになりたかった。
 それだけなのだ。

 そうしたら、救われるような気がして。
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