運命と運命の人【完結】

第1章

5

公爵家の使用人たちは、何が起こっているのか理解できなかった。

見知らぬ男を抱え、誰にも渡さないとばかりに、周囲を威嚇して歩く公爵家の嫡男。

その圧迫感に耐えきれず、倒れてしまう者たちもいた。

「公爵様！奥様！大変です！ラ、ラグアル様が！」

いつも落ち着いて、冷静な家令が慌てた様子で夫妻の元へやってきた。

「どうした？騒々しい。ラグアルに何かあったか？」

夫人も首をかしげて、飲んでいた紅茶のカップをソーサーに戻す。

「ラ、ラグアル様が、見知らぬ男を抱え、自室にこもってしまったと、使用人たちから報告が。あまりもの威圧に倒れてしまう者たちまで出ております!」

公爵は嫌な予感がした。

我が子であることの贔屓目を抜きにしても
ラグアルは次期公爵として、申し分なく、これまで何一つ問題を起こしたことはない。

ユアンをこよなく愛し、婚姻の儀を何よりも待ち望んでいたのはラグアル本人だ。

ユアン以外の者に興味も関心も示したことはない。

そんな、ラグアルが、、、

「まさか、いや、そんな、運命、なのか？」

「あなた、何を仰るの？ユアンさんをあんなに愛しているあの子に、運命？そんな、ありえない‥…」

「いや、万が一のためにも。侯爵家に急ぎ連絡を！ユアン君なら、止められるかもしれん。」

青ざめた家令に命じ、公爵夫妻は急いで息子の部屋へと向かった。