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 Ⅵ 反旗

 城下街コンバット

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「士気の高い者だけで挑む方が功を奏す時もあります。
それに少数での撹乱かくらん戦法は反乱軍わたしたちの十八番でしょう?」
「いざとなったらネムが魔銃こいつをぶっ放すにゃ~!」
「ダメですよ、猫さん。
それでは城下の住民にまで被害が及んでしまいます。
目的はあくまでも二本足さんの救出です。
皆さんはGが救出を終えるまでの間、街で騒ぎを起こして兵士を引き付けてくれるだけで十分です」
「その引き付けるってのが難しいんだがな。
戦力差に加え、地の利があるのも王国軍の方だ。
かなりの奇策で上手く立ち回らなきゃ、時間稼ぎどころかあっという間に追い込まれちまうぜ」

全員が険しい表情を浮かべるなか、ネムネムは酒を一口呑んだ。

「ひっく……なるようになふにゃよ。
ささ、今夜は宴会にゃ~!」
「今夜も、だろ」

呆れながらも酒を酌み交わす一行の表情に笑顔が戻る。
月が煌々と照らす夜の向こうに、Gは囚われのユリカを想った。
きっと二本足さんは、自分の身に起きている事の真相に気付いていない。
王子様と結婚できてラッキーくらいに思っているのだろう、と。


 翌朝、ディナイの町を発った一行は、予定通りに正午を少し過ぎてコンバットの門を潜った。
マラカーンの実に二倍に及ぶ土地に石畳が敷き詰められ、城一帯をぐるりと囲む優雅な街並みとそこに流れ込むツェダ運河の景観は、大陸一の美しさと称されている。
建国より三百年。
深い塀から仰ぎ見る難攻不落の城壁は見る者を物言わず圧倒し、荘厳に聳え立つヴァルサーン六世の居城は王家による統治が今後も永劫に続く事を人々に知らしめていた。
見張りの兵士達が目を光らせるなか、G達はあらかじめ合流場所に決めてあった酒場へと向かった。
広い店内は昼間だと言うのに薄暗く、壊れた机や椅子が乱雑に放置されている。

「本当にここで間違いないんですか?」

埃っぽい店内に足を踏み入れたGは、誰もいないカウンターを見つめて呟いた。

「ランドリーフの憩いの酒場。
俺も来るのは初めてだが、この荒れようはいったい……。
リーダー、その辺りガラスが飛び散ってて危ないぜ」

トマスの注意もどこへやら、ハルナーフはカウンターの中に入ると床の一部を捲り上げる。

「なるほど、ここにも地下室があるんですね。
それにしてもこのドレスと言う服は、歩きにくくていけません。
Gは何も着ていない方が快適なのですが」
「そんなんだから変態ゴキブリとか言われるんだよ、お前は」
「お喋りしてないで、みんな入ってらっしゃい~」

床下からの声を受け、G達は地下に続く狭い階段を一列になって下りた。





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