104 / 107
第三章 王国軍の改革
作戦会議です
しおりを挟む
「ところで、アルバレスト自由軍の作戦会議、してもいいですか?」
「お、おう。突然だな」
「いいですね、そういうの!」
俺が切り出すと、おとなしかったカールが急に身を乗り出してきた。
気弱そうだが、意外と根は図太いのかもしれない。
「お前……急に元気になったな」
アントンが少し呆れたようにぼやくと、カールは心外だとばかりに上司に反論する。
「だって、やっとお天道様に顔向けできる任務ですよ。隊長だって王女様の誘拐なんて嫌だってぼやいてたじゃないすか」
「まぁ……それはそうだが」
「そうですよ!正義は我にあり、ってやつです」
「じゃあ、まずは目標を決めましょうか」
「先ほど少し話のあった、メルセデス王女を守り、ここエル・アジル王国を守ること、ではないのか?」
「はい、それはそうなんですが……それは大公殿下と王国軍の目標です。今決めたいのは、アルバレスト自由軍の目標ですね」
「同じではないと?」
「もちろん道のりが重なる部分も多いでしょう。でもまったく同じではないと思うんですよ」
「…むむ?そうなのか?」
「はい、大公殿下はいい方だと思いますが、エル・アジル王国の全てを掌握しているわけではありませんし、国王陛下の意思はまた違うかもしれません」
「なるほど……」
「メルを守り、エル・アジルを守る……その先にどうするか、どうしたいのか。まぁ、結論はもちろんメルがいないと出せないんですが、メルに話す前に俺たちの間である程度共有しておければと」
「確かに、そうだ。アルバレストの未来に関わることでもあるものな」
「俺は、メルセデス王女にアルバレスト王になってもらいたいです」
カールが目を輝かせて言う。
実に率直で、わかりやすい意見だ。
「しかし……王女様はあまり乗り気ではなかったな」
「そうですね……突然そんなことを言われても戸惑うでしょう。ただ、メルがアルバレストに戻った方がいいとは思います」
「それはなぜだ?」
「王位につかずに市井の民として生きるにしても、アルバレストという国、そしてそこに暮らす人々と向き合ってから決めた方がいいかなって」
「なるほど……判断するには早計だと」
王が背負う責任は、きっと俺の想像以上に大きい物だろう。
国の未来、民の行く末……大勢の人々に多大な影響を与えるようなことを、いっときの事情や感情に基づいて判断することが正しいとは思えない。
「メルは望んで王女になったわけじゃないと言ってました。それは確かにそうだ。でも、アルバレストの人間であることは変えられないし、彼女を慕う人たちがいることも確かでしょう」
「……確かに、大勢の民が王女の帰還を願っている」
「その事実と向き合わないまま判断して欲しくないな、と思ってます。俺なんかが偉そうにいうことじゃないってことは重々承知していますが」
「いや、サコン君の意見はもっともだと思う」
「……わたしも……そう思う」
「だから、まずはアルバレストに平穏を取り戻し、メルが戻れるようにすること。その上で、どうするか判断してもらうこと、が俺たちの当面の目標だと考えています」
俺の意見に、アントンもカールも頷いてくれた。
メルがどう思うかはまだ分からないが、戻ったら改めて話してみることにする。
が、俺にできることは、俺たちなりの考えを伝えることだけだ。
ああしろ、こうしろという意見を押し付けたいわけではない。
「お、おう。突然だな」
「いいですね、そういうの!」
俺が切り出すと、おとなしかったカールが急に身を乗り出してきた。
気弱そうだが、意外と根は図太いのかもしれない。
「お前……急に元気になったな」
アントンが少し呆れたようにぼやくと、カールは心外だとばかりに上司に反論する。
「だって、やっとお天道様に顔向けできる任務ですよ。隊長だって王女様の誘拐なんて嫌だってぼやいてたじゃないすか」
「まぁ……それはそうだが」
「そうですよ!正義は我にあり、ってやつです」
「じゃあ、まずは目標を決めましょうか」
「先ほど少し話のあった、メルセデス王女を守り、ここエル・アジル王国を守ること、ではないのか?」
「はい、それはそうなんですが……それは大公殿下と王国軍の目標です。今決めたいのは、アルバレスト自由軍の目標ですね」
「同じではないと?」
「もちろん道のりが重なる部分も多いでしょう。でもまったく同じではないと思うんですよ」
「…むむ?そうなのか?」
「はい、大公殿下はいい方だと思いますが、エル・アジル王国の全てを掌握しているわけではありませんし、国王陛下の意思はまた違うかもしれません」
「なるほど……」
「メルを守り、エル・アジルを守る……その先にどうするか、どうしたいのか。まぁ、結論はもちろんメルがいないと出せないんですが、メルに話す前に俺たちの間である程度共有しておければと」
「確かに、そうだ。アルバレストの未来に関わることでもあるものな」
「俺は、メルセデス王女にアルバレスト王になってもらいたいです」
カールが目を輝かせて言う。
実に率直で、わかりやすい意見だ。
「しかし……王女様はあまり乗り気ではなかったな」
「そうですね……突然そんなことを言われても戸惑うでしょう。ただ、メルがアルバレストに戻った方がいいとは思います」
「それはなぜだ?」
「王位につかずに市井の民として生きるにしても、アルバレストという国、そしてそこに暮らす人々と向き合ってから決めた方がいいかなって」
「なるほど……判断するには早計だと」
王が背負う責任は、きっと俺の想像以上に大きい物だろう。
国の未来、民の行く末……大勢の人々に多大な影響を与えるようなことを、いっときの事情や感情に基づいて判断することが正しいとは思えない。
「メルは望んで王女になったわけじゃないと言ってました。それは確かにそうだ。でも、アルバレストの人間であることは変えられないし、彼女を慕う人たちがいることも確かでしょう」
「……確かに、大勢の民が王女の帰還を願っている」
「その事実と向き合わないまま判断して欲しくないな、と思ってます。俺なんかが偉そうにいうことじゃないってことは重々承知していますが」
「いや、サコン君の意見はもっともだと思う」
「……わたしも……そう思う」
「だから、まずはアルバレストに平穏を取り戻し、メルが戻れるようにすること。その上で、どうするか判断してもらうこと、が俺たちの当面の目標だと考えています」
俺の意見に、アントンもカールも頷いてくれた。
メルがどう思うかはまだ分からないが、戻ったら改めて話してみることにする。
が、俺にできることは、俺たちなりの考えを伝えることだけだ。
ああしろ、こうしろという意見を押し付けたいわけではない。
0
お気に入りに追加
918
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
生前SEやってた俺は異世界で…
大樹寺(だいじゅうじ) ひばごん
ファンタジー
旧タイトル 前世の職業で異世界無双~生前SEやってた俺は、異世界で天才魔道士と呼ばれています~
※書籍化に伴い、タイトル変更しました。
書籍化情報 イラストレーター SamuraiG さん
第一巻発売日 2017/02/21 ※場所によっては2、3日のずれがあるそうです。
職業・SE(システム・エンジニア)。年齢38歳。独身。
死因、過労と不摂生による急性心不全……
そうあの日、俺は確かに会社で倒れて死んだはずだった……
なのに、気が付けば何故か中世ヨーロッパ風の異世界で文字通り第二の人生を歩んでいた。
俺は一念発起し、あくせく働く事の無い今度こそゆったりした人生を生きるのだと決意した!!
忙しさのあまり過労死してしまったおっさんの、異世界まったりライフファンタジーです。
※2017/02/06
書籍化に伴い、該当部分(プロローグから17話まで)の掲載を取り下げました。
該当部分に関しましては、後日ダイジェストという形で再掲載を予定しています。
2017/02/07
書籍一巻該当部分のダイジェストを公開しました。
2017/03/18
「前世の職業で異世界無双~生前SEやってた俺は、異世界で天才魔道士と呼ばれています~」の原文を撤去。
新しく別ページにて管理しています。http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/258103414/
気になる方がいましたら、作者のwebコンテンツからどうぞ。
読んで下っている方々にはご迷惑を掛けると思いますが、ご了承下さい。
異世界転移した……さてどうしよう。
桜アリス
恋愛
日本に住んでいる平凡な女子高校生の凜莉(りり)。
しかし彼女には誰にも言えない秘密がある……。
それは、平凡な彼女の非凡な部分。異世界からの転生者であるということ。
そんな彼女は友達と遊びに行って帰っていると、突然眩しい光があふれとっさに目を瞑るり、光が収まってから目を開くとそこはさっきまでいた場所とは全く違う場所だった。
そう、彼女は異世界転移したのである。
そこで彼女が目にしたもの、出会った人は……!
ーーーーーー
チートあり、恋愛ありな、(きっと、たぶん)彼女のスローライフ?かもしれない物語。
【完結】ゲーム転生、死んだ彼女がそこにいた〜死亡フラグから救えるのは俺しかいない〜
たけのこ
ファンタジー
恋人だったミナエが死んでしまった。葬式から部屋に戻ると、俺はすぐにシミュレーションRPG「ハッピーロード」の電源を入れた。このゲーム、なぜかヒロインのローラ姫が絶対に死ぬストーリーになっている。世界中のゲーマーがローラ姫の死なない道を見つけようとしているが、未だそれを達成したものはいない。そんなゲームに、気がつけば俺は転生していた。しかも、生まれ変わった俺の姿は、盗賊団の下っ端ゴブリンだった。俺は、ゲームの運命に抗いながら、なんとかこの世界で生き延び、死の運命にあるローラ姫を救おうとする。

異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!


平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる