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第三章 王国軍の改革

猛き戦狼だったようです

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「あなたがいなくても、大丈夫そうね」

「そうですね。俺はたまたまきっかけを提供しただけですから」

「ご謙遜。そのきっかけを生み出せる人間は、少ないものよ」

「そうでしょうか……」

「ほら、挨拶してらっしゃいな」

店の奥からアレクじいさんとリーシャが顔を覗かせ、ものものしい具足に身を固めたヴァルキリー隊の面々を見て目を白黒させていた。

「あ、どうも……ちょっとフォルトゥナ大公殿下にスカウトされまして……いろいろあって、この国を守る戦いに力を貸そうと考えています」

「大公殿下に……そうか」

ざっくりとではあるが、メルのこと、事件のこと、軍のことなどを説明する。
うんうんと話を聞くアレクじいさんは、時折眉をピクリと動かすもののそれだけで、特段驚いた様子もない。
ローグさんと違って落ち着いたアレクじいさんの反応は意外だった。
一通り説明し終えたところで、大公がアレクじいさんに親しげに話しかける。

「久しいわね、アレク。エル・アジルの猛き戦狼と呼ばれたあなたも、ずいぶん老け込んだようね」

「ふぉふぉふぉ……もうとうの昔のことですわい」

「え……ええっ?!たけきせんろう…?!ひょっとしてアレクさん、すごいひとだったんです?」

「あら、聞いていなかったの?」

「てっきりずっと武器屋さんだとばかり思ってました……」

「にしては商売が下手でしょ」

「まぁ、そう言われるとたしかに」

「これはこれは大公殿下、この老骨にずいぶんと手厳しいですなぁ」

「ふふ……どう、武器屋はちょっとお休みにして、あなたも我が軍の顧問にならない?サコンくんと一緒に」

「いまさらこの老いぼれが出張るのはあまり見栄えのするものではありますまい。なぁに、このサコンがいるならば大丈夫でしょう」

「残念ね。わずか数十の手勢で血路を切り開き、若き先王陛下を救った英雄の力、ぜひ発揮して欲しかったのだけれど」

「ふぉふぉふぉ……なに、そんな状況を作り出してしまった時点で誇れるものではありませんわい」

「その謙虚なところも買っているのだけれど」

「サコンのこと、わしからもよろしくたのみます」

「任されてよ。というよりもむしろ、わたしが力を乞う立場なのだけれど」

「いいえ、まさに将に将たる器でいらっしゃる大公殿下の元でこそ、サコンの力も存分に発揮されましょう」

「将に将たる器ねぇ……そんなんだから離婚されちゃったのかしら?」

「誠に失礼ながら、大公殿下の元夫殿は器量が十分ではありませんでしたな」

「そうねぇ。わたしに脅えてたのか、指一本触れられないまま追い出されちゃったわ」

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください。さっきからさりげなくいろんな事実が暴露されてて頭がついていってないんですが」

「どのあたりが?」

「アレクさんがなんかすごい戦功を立てたとか、大公殿下が指一本触れられずに離婚されてるとか?」

「あら、わたしに触れたいの?」

「あ、いやそういうわけではげふぅ!?」

いつの間にか背後にリーシャがいて、するどい手刀が脳天に突き刺さっていた。

「サコン……鼻の下……伸びてた」

「え、冤罪ですって」

「あらぁ、かわいい女の子じゃない。サコンの恋人か何かかしら?」

「い、いえ、そういうわけでは」

「あのねぇ、そこはせめて曖昧に赤面して俯く、ぐらいにしなさいな」

大公殿下がやれやれ、というようにわざとらしくため息をついた。
それからリーシャの前につかつかと進み、右手を差し出す。

「あなたがアレクのお孫さん……リーシャさんね。どうぞよろしく」

大公殿下、さっきはリーシャの素性を知っていながら素知らぬ顔でからかってきたのか……
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