97 / 107
第三章 王国軍の改革
猛き戦狼だったようです
しおりを挟む
「あなたがいなくても、大丈夫そうね」
「そうですね。俺はたまたまきっかけを提供しただけですから」
「ご謙遜。そのきっかけを生み出せる人間は、少ないものよ」
「そうでしょうか……」
「ほら、挨拶してらっしゃいな」
店の奥からアレクじいさんとリーシャが顔を覗かせ、ものものしい具足に身を固めたヴァルキリー隊の面々を見て目を白黒させていた。
「あ、どうも……ちょっとフォルトゥナ大公殿下にスカウトされまして……いろいろあって、この国を守る戦いに力を貸そうと考えています」
「大公殿下に……そうか」
ざっくりとではあるが、メルのこと、事件のこと、軍のことなどを説明する。
うんうんと話を聞くアレクじいさんは、時折眉をピクリと動かすもののそれだけで、特段驚いた様子もない。
ローグさんと違って落ち着いたアレクじいさんの反応は意外だった。
一通り説明し終えたところで、大公がアレクじいさんに親しげに話しかける。
「久しいわね、アレク。エル・アジルの猛き戦狼と呼ばれたあなたも、ずいぶん老け込んだようね」
「ふぉふぉふぉ……もうとうの昔のことですわい」
「え……ええっ?!たけきせんろう…?!ひょっとしてアレクさん、すごいひとだったんです?」
「あら、聞いていなかったの?」
「てっきりずっと武器屋さんだとばかり思ってました……」
「にしては商売が下手でしょ」
「まぁ、そう言われるとたしかに」
「これはこれは大公殿下、この老骨にずいぶんと手厳しいですなぁ」
「ふふ……どう、武器屋はちょっとお休みにして、あなたも我が軍の顧問にならない?サコンくんと一緒に」
「いまさらこの老いぼれが出張るのはあまり見栄えのするものではありますまい。なぁに、このサコンがいるならば大丈夫でしょう」
「残念ね。わずか数十の手勢で血路を切り開き、若き先王陛下を救った英雄の力、ぜひ発揮して欲しかったのだけれど」
「ふぉふぉふぉ……なに、そんな状況を作り出してしまった時点で誇れるものではありませんわい」
「その謙虚なところも買っているのだけれど」
「サコンのこと、わしからもよろしくたのみます」
「任されてよ。というよりもむしろ、わたしが力を乞う立場なのだけれど」
「いいえ、まさに将に将たる器でいらっしゃる大公殿下の元でこそ、サコンの力も存分に発揮されましょう」
「将に将たる器ねぇ……そんなんだから離婚されちゃったのかしら?」
「誠に失礼ながら、大公殿下の元夫殿は器量が十分ではありませんでしたな」
「そうねぇ。わたしに脅えてたのか、指一本触れられないまま追い出されちゃったわ」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください。さっきからさりげなくいろんな事実が暴露されてて頭がついていってないんですが」
「どのあたりが?」
「アレクさんがなんかすごい戦功を立てたとか、大公殿下が指一本触れられずに離婚されてるとか?」
「あら、わたしに触れたいの?」
「あ、いやそういうわけではげふぅ!?」
いつの間にか背後にリーシャがいて、するどい手刀が脳天に突き刺さっていた。
「サコン……鼻の下……伸びてた」
「え、冤罪ですって」
「あらぁ、かわいい女の子じゃない。サコンの恋人か何かかしら?」
「い、いえ、そういうわけでは」
「あのねぇ、そこはせめて曖昧に赤面して俯く、ぐらいにしなさいな」
大公殿下がやれやれ、というようにわざとらしくため息をついた。
それからリーシャの前につかつかと進み、右手を差し出す。
「あなたがアレクのお孫さん……リーシャさんね。どうぞよろしく」
大公殿下、さっきはリーシャの素性を知っていながら素知らぬ顔でからかってきたのか……
「そうですね。俺はたまたまきっかけを提供しただけですから」
「ご謙遜。そのきっかけを生み出せる人間は、少ないものよ」
「そうでしょうか……」
「ほら、挨拶してらっしゃいな」
店の奥からアレクじいさんとリーシャが顔を覗かせ、ものものしい具足に身を固めたヴァルキリー隊の面々を見て目を白黒させていた。
「あ、どうも……ちょっとフォルトゥナ大公殿下にスカウトされまして……いろいろあって、この国を守る戦いに力を貸そうと考えています」
「大公殿下に……そうか」
ざっくりとではあるが、メルのこと、事件のこと、軍のことなどを説明する。
うんうんと話を聞くアレクじいさんは、時折眉をピクリと動かすもののそれだけで、特段驚いた様子もない。
ローグさんと違って落ち着いたアレクじいさんの反応は意外だった。
一通り説明し終えたところで、大公がアレクじいさんに親しげに話しかける。
「久しいわね、アレク。エル・アジルの猛き戦狼と呼ばれたあなたも、ずいぶん老け込んだようね」
「ふぉふぉふぉ……もうとうの昔のことですわい」
「え……ええっ?!たけきせんろう…?!ひょっとしてアレクさん、すごいひとだったんです?」
「あら、聞いていなかったの?」
「てっきりずっと武器屋さんだとばかり思ってました……」
「にしては商売が下手でしょ」
「まぁ、そう言われるとたしかに」
「これはこれは大公殿下、この老骨にずいぶんと手厳しいですなぁ」
「ふふ……どう、武器屋はちょっとお休みにして、あなたも我が軍の顧問にならない?サコンくんと一緒に」
「いまさらこの老いぼれが出張るのはあまり見栄えのするものではありますまい。なぁに、このサコンがいるならば大丈夫でしょう」
「残念ね。わずか数十の手勢で血路を切り開き、若き先王陛下を救った英雄の力、ぜひ発揮して欲しかったのだけれど」
「ふぉふぉふぉ……なに、そんな状況を作り出してしまった時点で誇れるものではありませんわい」
「その謙虚なところも買っているのだけれど」
「サコンのこと、わしからもよろしくたのみます」
「任されてよ。というよりもむしろ、わたしが力を乞う立場なのだけれど」
「いいえ、まさに将に将たる器でいらっしゃる大公殿下の元でこそ、サコンの力も存分に発揮されましょう」
「将に将たる器ねぇ……そんなんだから離婚されちゃったのかしら?」
「誠に失礼ながら、大公殿下の元夫殿は器量が十分ではありませんでしたな」
「そうねぇ。わたしに脅えてたのか、指一本触れられないまま追い出されちゃったわ」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください。さっきからさりげなくいろんな事実が暴露されてて頭がついていってないんですが」
「どのあたりが?」
「アレクさんがなんかすごい戦功を立てたとか、大公殿下が指一本触れられずに離婚されてるとか?」
「あら、わたしに触れたいの?」
「あ、いやそういうわけではげふぅ!?」
いつの間にか背後にリーシャがいて、するどい手刀が脳天に突き刺さっていた。
「サコン……鼻の下……伸びてた」
「え、冤罪ですって」
「あらぁ、かわいい女の子じゃない。サコンの恋人か何かかしら?」
「い、いえ、そういうわけでは」
「あのねぇ、そこはせめて曖昧に赤面して俯く、ぐらいにしなさいな」
大公殿下がやれやれ、というようにわざとらしくため息をついた。
それからリーシャの前につかつかと進み、右手を差し出す。
「あなたがアレクのお孫さん……リーシャさんね。どうぞよろしく」
大公殿下、さっきはリーシャの素性を知っていながら素知らぬ顔でからかってきたのか……
0
お気に入りに追加
919
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜
あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。
そんな世界に唯一現れた白髪の少年。
その少年とは神様に転生させられた日本人だった。
その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。
⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。
⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~
結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は
気が付くと真っ白い空間にいた
自称神という男性によると
部下によるミスが原因だった
元の世界に戻れないので
異世界に行って生きる事を決めました!
異世界に行って、自由気ままに、生きていきます
~☆~☆~☆~☆~☆
誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります!
また、感想を頂けると大喜びします
気が向いたら書き込んでやって下さい
~☆~☆~☆~☆~☆
カクヨム・小説家になろうでも公開しています
もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~>
もし、よろしければ読んであげて下さい
異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる