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第二章 宿屋の経営改善
賃料を設定します
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「ましてや、ここは『居抜き』だ。今の設備をそのまま使えますから、開業する人がほとんど資金がなくても営業を開始できる」
「居抜き出店」とは、主として飲食業において、前のお店の設備を流用することで新規開業のコストを抑えることを意味する。
今回の場合は、食堂をそのまま食堂として使い続け、要はオーナーが交代するだけなので、ほとんど手を加える必要はないだろう。
内装や什器なんかは趣味に合わせて変えることもあるだろうが、新規で全部用意するよりは遥かに安上がりで済む。
「なるほど…食堂は他の人に任せるのじゃな。そういう発想はなかったなぁ」
「はい、もちろん対価はいただきますけどね。家賃という形で、月々の売り上げから一定の割合をいただくのがいいんじゃないでしょうか」
賃料の取り方にはいくつかあるが、代表的なのは一定の金額を固定でもらうやり方だ。
他方、売り上げに比例してそこから一定の割合で徴収する歩合制もある。
「ミストラル」の食堂の現状は芳しいとは言えないので、テナントを募集してもそれほど強気には出られない。
とはいえ、立地的には悪くないのだから、「売り上げが上がれば比例して賃料も多くなり、さほどでもなければ賃料負担も少ない」という歩合制がいいだろう。
確かデパートやショッピングモールの歩合賃料は平均して売り上げの2割ぐらいだったという記憶がある。
「賃料を決めるにも、まずは売り上げの想定をしたいところですね…」
飲食店の売り上げ指標として「坪単価」という概念がある。
月の売上を、お店の広さで割り算するのだ。
その前提として、飲食店の売上を考えるにあたって大切なのは「客単価」と「回転率」である。
客単価とはすなわち、一人のお客さんがいくら使うのか。
回転率とは、営業時間内にどれだけのお客さんをさばけるか、である。
両方あげるのが理想だが、実際にはどちらか一方に焦点を当てるのが現実的だ。
客単価を上げる方向に舵をとるのであれば、いわゆる高級店路線となる。
当たり前だが、高級店はゆっくりと食事を楽しめることに大きな価値が置かれる。
となれば、1組あたりの滞在時間は長くなり、回転率は下がることになる。
他方、回転率を上げるならば、大衆店路線になる。
「早い、安い、うまい」の三拍子とよく言われるが、一番大事なのは「早い」である。
客単価が低い分、早く出して早く食ってもらい早くお帰りいただくことで売上を稼ぐのだ。
単価が低い店でゆっくりされたら商売あがったりなのである。
この点、カフェの経営が難しいと言われるのは、単価が低い割に回転率も良くないからだ。
いずれにしても客単価か回転率を上げることで坪単価は上昇する。
お店の面積に対していくら稼いだか、という坪単価は飲食店の繁盛具合をチェックする大切な指標である。
「ミストラル」の食堂は、ざっと見るに、おおむね20坪あるかないかぐらいの面積だ。
1坪とはおよそ3.3平方メートルで、おおよそ畳2枚分の広さである。
だから20坪なら、ちょうど小さめのコンビニエンスストアぐらいの広さといっていいだろう。
20坪ぐらいまでの飲食店で、そこそこ成功しているところの平均年商は2,000万円ほどと言われている。
当面の目標は、この2,000万円の線に乗れるかどうかだろう。
この世界の暦は元の世界ほとんど同じだったはずだから、1月平均30日と考え、定休日も考慮し、営業日を25日と設定してみよう。
2,000万÷12÷25日を計算すると、1日あたりおよそ67,000円の売上が必要になる。
「定食の値段ってどれぐらいでしたっけ?」
「3ファザール(300円)だねぇ」
300円…設定としてはまずまず妥当なところだろう。
現代日本の感覚からすると安い気もするが、物価や需給も考えるとこんなものか。
ザ・大衆食堂路線で、大切なのは回転率ということになる。
「居抜き出店」とは、主として飲食業において、前のお店の設備を流用することで新規開業のコストを抑えることを意味する。
今回の場合は、食堂をそのまま食堂として使い続け、要はオーナーが交代するだけなので、ほとんど手を加える必要はないだろう。
内装や什器なんかは趣味に合わせて変えることもあるだろうが、新規で全部用意するよりは遥かに安上がりで済む。
「なるほど…食堂は他の人に任せるのじゃな。そういう発想はなかったなぁ」
「はい、もちろん対価はいただきますけどね。家賃という形で、月々の売り上げから一定の割合をいただくのがいいんじゃないでしょうか」
賃料の取り方にはいくつかあるが、代表的なのは一定の金額を固定でもらうやり方だ。
他方、売り上げに比例してそこから一定の割合で徴収する歩合制もある。
「ミストラル」の食堂の現状は芳しいとは言えないので、テナントを募集してもそれほど強気には出られない。
とはいえ、立地的には悪くないのだから、「売り上げが上がれば比例して賃料も多くなり、さほどでもなければ賃料負担も少ない」という歩合制がいいだろう。
確かデパートやショッピングモールの歩合賃料は平均して売り上げの2割ぐらいだったという記憶がある。
「賃料を決めるにも、まずは売り上げの想定をしたいところですね…」
飲食店の売り上げ指標として「坪単価」という概念がある。
月の売上を、お店の広さで割り算するのだ。
その前提として、飲食店の売上を考えるにあたって大切なのは「客単価」と「回転率」である。
客単価とはすなわち、一人のお客さんがいくら使うのか。
回転率とは、営業時間内にどれだけのお客さんをさばけるか、である。
両方あげるのが理想だが、実際にはどちらか一方に焦点を当てるのが現実的だ。
客単価を上げる方向に舵をとるのであれば、いわゆる高級店路線となる。
当たり前だが、高級店はゆっくりと食事を楽しめることに大きな価値が置かれる。
となれば、1組あたりの滞在時間は長くなり、回転率は下がることになる。
他方、回転率を上げるならば、大衆店路線になる。
「早い、安い、うまい」の三拍子とよく言われるが、一番大事なのは「早い」である。
客単価が低い分、早く出して早く食ってもらい早くお帰りいただくことで売上を稼ぐのだ。
単価が低い店でゆっくりされたら商売あがったりなのである。
この点、カフェの経営が難しいと言われるのは、単価が低い割に回転率も良くないからだ。
いずれにしても客単価か回転率を上げることで坪単価は上昇する。
お店の面積に対していくら稼いだか、という坪単価は飲食店の繁盛具合をチェックする大切な指標である。
「ミストラル」の食堂は、ざっと見るに、おおむね20坪あるかないかぐらいの面積だ。
1坪とはおよそ3.3平方メートルで、おおよそ畳2枚分の広さである。
だから20坪なら、ちょうど小さめのコンビニエンスストアぐらいの広さといっていいだろう。
20坪ぐらいまでの飲食店で、そこそこ成功しているところの平均年商は2,000万円ほどと言われている。
当面の目標は、この2,000万円の線に乗れるかどうかだろう。
この世界の暦は元の世界ほとんど同じだったはずだから、1月平均30日と考え、定休日も考慮し、営業日を25日と設定してみよう。
2,000万÷12÷25日を計算すると、1日あたりおよそ67,000円の売上が必要になる。
「定食の値段ってどれぐらいでしたっけ?」
「3ファザール(300円)だねぇ」
300円…設定としてはまずまず妥当なところだろう。
現代日本の感覚からすると安い気もするが、物価や需給も考えるとこんなものか。
ザ・大衆食堂路線で、大切なのは回転率ということになる。
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