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第一章 武器屋の経営改善
人材コンサルティングはじめました
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「俺たち3人の目指すところは一致してるはずです」
「…というと?」
「まずガンテスさん、あなたには後継者が必要です。自分が受け継いだ技を誰かに託せるなら託したい、そう思いませんか?」
しぶしぶといった様子で頷く。
あれほどの匠の技だ。自負もあるにちがいない。
となれば、誰かに伝えたいと願うのは当然のことだろう。
せっかくの技術が絶えることは、ガンテスにとっても辛いことのはずだから。
「そしてアイク。ちょっと扱いづらい部分もあるかもしれませんが、少なくとも投げ出さずに頑張っています!…それに」
ちょっと感情が高ぶりすぎたので、1回だけ深呼吸して落ち着く。
寂しそうに銀行を去った田中と、アイクがだぶって見えているからかもしれない。
「…それに、アイクは言ってました。自分の作ったもので人に喜んでもらいたいと。その言葉に嘘はないと思いました」
「…フン」
明確に返事こそしないものの、少しガンテスの表情がほぐれたようだった。
ひょっとしたら、ガンテスもアイクと同じような想いを抱いたこともあるのかもしれなかった。
「そして俺は、あなたやあなたの精神を受け継いだ人にこそ、武器を作ってもらいたいのです」
つまり、俺たちの目標は、アイクを立派な後継者に育て上げることで一致していることになる。
どんなプロジェクトを成功させるためにも必要な条件。
それは、メンバー全員で目標やビジョンを共有できていること。
それがぶれていては、プロジェクトがまとまりを欠き、目標達成まで遠回りすることになってしまう。
だからこそ、目的がしっかりと共有できていることを言葉にして確認しておく必要がある。
以心伝心…というのは甘えだ。夫婦ならそれでもいいかもしれない。
でも、大切なことは言葉にしてきちんと伝えるのがプロの社会人というものだ。
「俺たちには共通の目的がある…だから、お手伝いさせてください。正直、俺も人を育てたことはありません…でも、その為の知識は持っています。だからお願いします」
そう言って深々と頭をさげる。
すでに言葉は尽くした。
後はこの思いが通じるかどうかだ。
ゆっくり頭を上げると、ガンテスが腕組みしたままじっと黙っているのが目に入った。
それからやおら立ち上がると、外に向かって大股で歩いていってしまう。
慌ててついていくと、ガンテスはアイクの元へと向かっているようだった。
懸命に薪割りに励むアイクが、何事かと驚いたようにびくびくしならが俺たちを見た。
「お前…本気でワシの後を継ぐつもりはあるか?」
アイクはすぐさま何度も頷いた。
「俺…不器用だけど…もの作るの…好きです…」
絞り出すような声で、でもだからこそ、その言葉に嘘はないとわかる。
ガンテスは満足したように頷くと、俺の方を見た。
「アイツの力も借りていい。…俺もやり方が悪かったかもしれん。…改めて、ワシについてきてくれるか?」
「…はい…はい…!」
何度も頷くアイクの眦には、きらりと光るものがあった。
ガンテスの言葉が、よほど嬉しかったのだろう。
二人のやりとりを見て、俺の胸にも熱いものがこみ上げてきた。
俺には田中を救ってやれなかったけれど、今回は違う。
全身全霊を以って、二人の助けになりたいと切に思う。
「そういうわけだ。サコン、言い出しっぺのお前には期待させてもらうぞ。まずどうしたらいいと思う?」
「…というと?」
「まずガンテスさん、あなたには後継者が必要です。自分が受け継いだ技を誰かに託せるなら託したい、そう思いませんか?」
しぶしぶといった様子で頷く。
あれほどの匠の技だ。自負もあるにちがいない。
となれば、誰かに伝えたいと願うのは当然のことだろう。
せっかくの技術が絶えることは、ガンテスにとっても辛いことのはずだから。
「そしてアイク。ちょっと扱いづらい部分もあるかもしれませんが、少なくとも投げ出さずに頑張っています!…それに」
ちょっと感情が高ぶりすぎたので、1回だけ深呼吸して落ち着く。
寂しそうに銀行を去った田中と、アイクがだぶって見えているからかもしれない。
「…それに、アイクは言ってました。自分の作ったもので人に喜んでもらいたいと。その言葉に嘘はないと思いました」
「…フン」
明確に返事こそしないものの、少しガンテスの表情がほぐれたようだった。
ひょっとしたら、ガンテスもアイクと同じような想いを抱いたこともあるのかもしれなかった。
「そして俺は、あなたやあなたの精神を受け継いだ人にこそ、武器を作ってもらいたいのです」
つまり、俺たちの目標は、アイクを立派な後継者に育て上げることで一致していることになる。
どんなプロジェクトを成功させるためにも必要な条件。
それは、メンバー全員で目標やビジョンを共有できていること。
それがぶれていては、プロジェクトがまとまりを欠き、目標達成まで遠回りすることになってしまう。
だからこそ、目的がしっかりと共有できていることを言葉にして確認しておく必要がある。
以心伝心…というのは甘えだ。夫婦ならそれでもいいかもしれない。
でも、大切なことは言葉にしてきちんと伝えるのがプロの社会人というものだ。
「俺たちには共通の目的がある…だから、お手伝いさせてください。正直、俺も人を育てたことはありません…でも、その為の知識は持っています。だからお願いします」
そう言って深々と頭をさげる。
すでに言葉は尽くした。
後はこの思いが通じるかどうかだ。
ゆっくり頭を上げると、ガンテスが腕組みしたままじっと黙っているのが目に入った。
それからやおら立ち上がると、外に向かって大股で歩いていってしまう。
慌ててついていくと、ガンテスはアイクの元へと向かっているようだった。
懸命に薪割りに励むアイクが、何事かと驚いたようにびくびくしならが俺たちを見た。
「お前…本気でワシの後を継ぐつもりはあるか?」
アイクはすぐさま何度も頷いた。
「俺…不器用だけど…もの作るの…好きです…」
絞り出すような声で、でもだからこそ、その言葉に嘘はないとわかる。
ガンテスは満足したように頷くと、俺の方を見た。
「アイツの力も借りていい。…俺もやり方が悪かったかもしれん。…改めて、ワシについてきてくれるか?」
「…はい…はい…!」
何度も頷くアイクの眦には、きらりと光るものがあった。
ガンテスの言葉が、よほど嬉しかったのだろう。
二人のやりとりを見て、俺の胸にも熱いものがこみ上げてきた。
俺には田中を救ってやれなかったけれど、今回は違う。
全身全霊を以って、二人の助けになりたいと切に思う。
「そういうわけだ。サコン、言い出しっぺのお前には期待させてもらうぞ。まずどうしたらいいと思う?」
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