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5年生6月
学校うさぎのトキくんがいない!?(上)
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木曜日までの学校は、何も起こりませんでした。
テトリちゃんもとっても大人しくしててくれたもんね。
家にはおじいちゃん達がいてくれるし、学校にはテトリちゃんが付いてきてくれる毎日。
わたしが魔法を使えなくても、平和でした。
そんなふうにみんなに見守ってもらえていて、幸せだったよ。
ただ火曜日から木曜日まで、毎日すごい雨が降っていました。
まるで空からじょうろでお水をかけているみたいです。
魔法が使えても、毎日歩きだったね。
この雨のせいで、金曜日のお昼休みに大変なことが起きました。
飼育委員の彩ちゃんは、この日お当番でした。
中庭のチャボさん、うさぎさん達にご飯をあげに行きます。
その彩ちゃんが慌てて戻ってきました。
その時わたしは、のんびりと教室にいました。
今日は雲半分のいい青空。
お昼休みだから、遊びに行っていた子も多かったです。
彩ちゃんは教室のドアを開けると、入り口からいいました。
「大変なことになっちゃったよ。誰か一緒に来て。
みかんちゃんはお願い!」
その彩ちゃんの様子に、みんなはなんだかわからなくてもうなずきました。
「ぼくも行くよ」
「わたしも」
「おれも」
お昼休みなので、テトリちゃんは机の上に乗ってみんなとお話していました。
いきなりのそんな雰囲気にきょろきょろし始めます。
わたしはそんなテトリちゃんにいいました。
「わたしも行ってくるね!テトリちゃんは待ってて」
そうして5人で彩ちゃんに付いていきます。
彩ちゃんがみんなを案内したのは、今来たばかりのはずの中庭でした。
ここで何があったのかな?
彩ちゃんはうさぎ小屋の前に走っていきます。
するとその前の地面に穴が空いていました。
今までに見たことのない穴です。大きさは直径が10cmくらいあります。
そして彩ちゃんは小屋の中を指差しました。
「見て!1番小さいトキくんがいないの」
そういわれて見てみると、いつもは5匹いるうさぎさんが4匹しかいません。
今この雪湖小学校には、1家族のうさぎさんがいます。
お母さんのナラちゃん、お父さんのミキくん、そして子ども達がアスくん、ミサちゃん、トキくんです。
子うさぎちゃん達は、人でいうとわたし達より少し小さいくらいです。
わたしも時々会いに来て、お話していました。
トキくんはやんちゃで、穴掘りが大好きな子でした。
高志くんは真面目な顔で分析します。
「ずっと雨で、地面がかなりやわらかくなってたもんな。
だからこんな穴が掘れたんだ」
みゆきちゃんは困った顔でいいます。
「だからあの好奇心いっぱいのトキくんは、外に飛び出しちゃったんだね」
そして彩ちゃんは、とっても不安そうな顔です。
「どうしよう?早く探さないと」
わたしの感覚だと、トキくんはもう中庭にはいそうにありません。
「トキはまだ小さいし、外に出るなんて危ないよ」
その港くんの言葉で、わたしはこの状況が本当に心配になりました。
そこで早速始めます。
こういう時こそ、わたしの力を使わなくちゃね。
いつものようにペンダントを外します。
「まずはナラちゃん達や、チャボさん達に話を聞いてみよう!
ミラクル…」
そう呪文を唱え始めます。
すると、みゆきちゃんが慌てて止めてくれました。
「みかんちゃん!」
「え?」
呼ばれたわたしは、上げていた手を下ろしました。
みゆきちゃんは、その理由をすぐに教えてくれます。
「魔法のお休み中は、呪文を唱えるのもいけないんだったよね?」
そう聞いて、やっと思い出しました。
「あ、そうだった。わたし、今は魔法使えないんだったね」
この出来事にびっくりして、忘れていました。
みゆきちゃんのいう通り、お休み中は呪文を唱えるのもだめなんです。
ペンダントはいつも通りだから、呪文を聞いて魔法の種が働かないことに驚くんだそうです。
そう魔法が使えないことに気付いたわたしは慌てます。
彩ちゃんに呼ばれた時から、魔法があるから大丈夫と思っていたからです。
「じゃあどうしよう?
みんなからの話が聞けないと、ヒントが全然ないよ」
でもすぐに、動物とお話のできるテトリちゃんがこの学校にいることを思い出しました。
「そうだ!テトリちゃんに通訳してもらえる」
そう思い付いて、わたしは立ち直ります。
すると高志くんが心配して聞きます。
「テトリに来てもらう途中で先生に見つかったりしたら、大変じゃないのか?」
テトリちゃんが学校に来ているのは、先生達には内緒にしているもんね。
見つかったりしたら、すごく叱られそうです。
そう確かに危ないけれど、今はそういうことをいっていられません。
わたしは決めました。
「なんとか見つからないように来てもらうよ。待ってて!」
そういうと、わたしは急いで教室に戻りました。
「テトリちゃん、通訳してほしいの。一緒に来て!」
急いでいるわたしは、さっきの彩ちゃんのように、理由を説明する前にそう頼みました。
でもテトリちゃんは、すぐにうなずいてくれました。
「はい!」
そんなわたしに、教室にいたみんなが聞きます。
「みかんちゃん、どうしたの?」
「彩ちゃんの大変なことって?」
急いでいるわたしはテトリちゃんを抱いて、駆け出しながら答えます。
「子うさぎのトキくんがいなくなっちゃったんだよ。
それでテトリちゃんに、他のうさぎさん達から詳しい話を聞いてもらうの」
テトリちゃんもとっても大人しくしててくれたもんね。
家にはおじいちゃん達がいてくれるし、学校にはテトリちゃんが付いてきてくれる毎日。
わたしが魔法を使えなくても、平和でした。
そんなふうにみんなに見守ってもらえていて、幸せだったよ。
ただ火曜日から木曜日まで、毎日すごい雨が降っていました。
まるで空からじょうろでお水をかけているみたいです。
魔法が使えても、毎日歩きだったね。
この雨のせいで、金曜日のお昼休みに大変なことが起きました。
飼育委員の彩ちゃんは、この日お当番でした。
中庭のチャボさん、うさぎさん達にご飯をあげに行きます。
その彩ちゃんが慌てて戻ってきました。
その時わたしは、のんびりと教室にいました。
今日は雲半分のいい青空。
お昼休みだから、遊びに行っていた子も多かったです。
彩ちゃんは教室のドアを開けると、入り口からいいました。
「大変なことになっちゃったよ。誰か一緒に来て。
みかんちゃんはお願い!」
その彩ちゃんの様子に、みんなはなんだかわからなくてもうなずきました。
「ぼくも行くよ」
「わたしも」
「おれも」
お昼休みなので、テトリちゃんは机の上に乗ってみんなとお話していました。
いきなりのそんな雰囲気にきょろきょろし始めます。
わたしはそんなテトリちゃんにいいました。
「わたしも行ってくるね!テトリちゃんは待ってて」
そうして5人で彩ちゃんに付いていきます。
彩ちゃんがみんなを案内したのは、今来たばかりのはずの中庭でした。
ここで何があったのかな?
彩ちゃんはうさぎ小屋の前に走っていきます。
するとその前の地面に穴が空いていました。
今までに見たことのない穴です。大きさは直径が10cmくらいあります。
そして彩ちゃんは小屋の中を指差しました。
「見て!1番小さいトキくんがいないの」
そういわれて見てみると、いつもは5匹いるうさぎさんが4匹しかいません。
今この雪湖小学校には、1家族のうさぎさんがいます。
お母さんのナラちゃん、お父さんのミキくん、そして子ども達がアスくん、ミサちゃん、トキくんです。
子うさぎちゃん達は、人でいうとわたし達より少し小さいくらいです。
わたしも時々会いに来て、お話していました。
トキくんはやんちゃで、穴掘りが大好きな子でした。
高志くんは真面目な顔で分析します。
「ずっと雨で、地面がかなりやわらかくなってたもんな。
だからこんな穴が掘れたんだ」
みゆきちゃんは困った顔でいいます。
「だからあの好奇心いっぱいのトキくんは、外に飛び出しちゃったんだね」
そして彩ちゃんは、とっても不安そうな顔です。
「どうしよう?早く探さないと」
わたしの感覚だと、トキくんはもう中庭にはいそうにありません。
「トキはまだ小さいし、外に出るなんて危ないよ」
その港くんの言葉で、わたしはこの状況が本当に心配になりました。
そこで早速始めます。
こういう時こそ、わたしの力を使わなくちゃね。
いつものようにペンダントを外します。
「まずはナラちゃん達や、チャボさん達に話を聞いてみよう!
ミラクル…」
そう呪文を唱え始めます。
すると、みゆきちゃんが慌てて止めてくれました。
「みかんちゃん!」
「え?」
呼ばれたわたしは、上げていた手を下ろしました。
みゆきちゃんは、その理由をすぐに教えてくれます。
「魔法のお休み中は、呪文を唱えるのもいけないんだったよね?」
そう聞いて、やっと思い出しました。
「あ、そうだった。わたし、今は魔法使えないんだったね」
この出来事にびっくりして、忘れていました。
みゆきちゃんのいう通り、お休み中は呪文を唱えるのもだめなんです。
ペンダントはいつも通りだから、呪文を聞いて魔法の種が働かないことに驚くんだそうです。
そう魔法が使えないことに気付いたわたしは慌てます。
彩ちゃんに呼ばれた時から、魔法があるから大丈夫と思っていたからです。
「じゃあどうしよう?
みんなからの話が聞けないと、ヒントが全然ないよ」
でもすぐに、動物とお話のできるテトリちゃんがこの学校にいることを思い出しました。
「そうだ!テトリちゃんに通訳してもらえる」
そう思い付いて、わたしは立ち直ります。
すると高志くんが心配して聞きます。
「テトリに来てもらう途中で先生に見つかったりしたら、大変じゃないのか?」
テトリちゃんが学校に来ているのは、先生達には内緒にしているもんね。
見つかったりしたら、すごく叱られそうです。
そう確かに危ないけれど、今はそういうことをいっていられません。
わたしは決めました。
「なんとか見つからないように来てもらうよ。待ってて!」
そういうと、わたしは急いで教室に戻りました。
「テトリちゃん、通訳してほしいの。一緒に来て!」
急いでいるわたしは、さっきの彩ちゃんのように、理由を説明する前にそう頼みました。
でもテトリちゃんは、すぐにうなずいてくれました。
「はい!」
そんなわたしに、教室にいたみんなが聞きます。
「みかんちゃん、どうしたの?」
「彩ちゃんの大変なことって?」
急いでいるわたしはテトリちゃんを抱いて、駆け出しながら答えます。
「子うさぎのトキくんがいなくなっちゃったんだよ。
それでテトリちゃんに、他のうさぎさん達から詳しい話を聞いてもらうの」
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