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1日目

村編3 元気少女!メミリー(前)

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「優志く―ん」
透が隣の優志の部屋のドアを開けると、優志はベットに横になっていた。
「優志くん、これから絵を描きにいこうと思うんだけど、一緒に行こうよ」
透は明るく誘ったが、優志は向こうを向いたまま1言言っただけだった。
「…俺はまだ疲れてるんだ」
そっか。
「じゃあ、待ってるから疲れが取れたら来てね」
透は納得して自分の部屋へと戻って行った。
「………………」
優志はしばらくゴロゴロしていたが、思い直した。
行きたくね―けど、行くか。
あのじいさん、確かここにいるのはスケッチブックがいっぱいになるまでとか言ってたし、描かないで俺だけ帰れなくても困るしな。
優志は起き上がると、スケッチブックを持って透達の部屋へ行った。
ドアは半分開いていたので、完全に開けて中にいた透と鈴良に言った。
「俺はもう行けるぞ」
しっかり準備している優志を見て、透はうれしくなった。
「!じゃあ、行こっか。鈴良ちゃん」
透は素早く反応すると、スケッチブックを持って立ち上がった。
鈴良も続いた。
「うん」

「じゃあ、行ってきます!」
サ―ラにそう元気に手を振り、村へと繰り出した透達。
とりあえず迷う心配のない、さっき通ったメインストリ―トを歩いていると、建物の前に立っていた人に声をかけられた。
その人は兄さんという感じの若い男の人で、離れたまま手を振りながら話しかけてきた。
「やあ。君達だろ?絵描き旅行者は」

3人は突然話しかけられて驚き、思わず立ち止まった。
「ダンに聞いたよ。じゃあこれからよろしくな」
その人はそう言って、すぐその建物の中に引っ込んだ。
急だったので、3人は何も返事ができなかった。
ちょっとびっくりしたが、また歩き出した透達は、今度は自分達よりちょっと上(高校生くらい)の女の子に声をかけられた。
「ねえねえ、あなた達でしょ?絵描きさんは」
前から走りよってきたその子は、3人にそう質問した。
「はい、そうですけど…」
鈴良がそう答えると、その子は瞳を輝かせた。
「すっご―い!うれしい。本を読んで憧れていた旅人さんに会えるなんて」
本?確かサ―ラも同じことを…。
鈴良がそう考えている間にもその子の話は続いている。
「私はメミリ―っていうの。ねえ、絵を描くなら最初はメインストリ―トを描いてくれない?」
「メインストリ―ト?」
透が聞き返す。透はこの通りがメインストリ―トだと知らなかったのだった。
メミリ―は張り切って説明する。
「私達が今いるこの通りのこと。この村の人みんながここに住んでるのよ」
そしてメミリ―は透達の後ろを指差した。3人は振り返る。
「あっちに森があってね。村の人みんなが遊びに行ったり、食料がたくさんあるとってもきれいなところもあるんだけど、最初はやっぱりこの通りを描いてほしいの。ね、お願い。
 描きやすいところに案内するから」
メミリ―のお願いに透は笑ってうなずいた。
「うん。いいよ。ね、いいよね?」
2人に聞くと、鈴良は笑って、優志は黙ってうなずいた。
「ちょうど今から絵を描こうと思ってたところなんです。じゃあ今から案内してもらえます?」
鈴良が聞くと、メミリ―は元気にうなずいた。
「もちろん」

メミリ―に着いて行くと、3人がついさっき入ってきたばかりの村の入り口で止まった。
「ちょっとここで待ってて」
そう言うとメミリ―は、右側で入り口から1番目の建物に入っていった。
その建物はログハウスで床が半階分高くなっており、家の正面に階段があった。
建物の右端には蛇口が備え付けてあった。
『トロルおじさん。イスを3脚貸して』
待ってる透達に中からメミリ―の声がかすかに聞こえてくる。
やがてメミリ―は小さなイスを3つ運び出してきた。
「さ、これに座って下さいな。おじさんが絵を描くにはこのイスが1番いいって」
そう言って、村の門の手前にイスを並べた。
「わざわざありがとう」
透がそうお礼を言うと、メミリ―はうれしそうに言った。
「こっちこそ、お願いを聞いてもらってるんだもの。本当にありがとう。」
3人はイスに座って、メミリ―はそれを満足そうに見ながらはっと思い出した。
「あ!そういえば、名前聞いてなかったわね」
3人も思い出した。
そういえばメミリ―のお願いの方に話が移ってしまい、自分達は名乗っていなかった。
「わたしは真坂透です」
「私は夢里鈴良です」
「俺は野村優志」
今度は優志もちゃんと名乗った。
「カト―ル、スズラ、ユ―ジ、ありがとう。また後でね!」
メミリ―は元気に駆け去って行った。
3人はそんなメミリ―を見送った。
「メミリ―って元気なお姉さんだね」
透のその言葉に鈴良と優志も同感だった。
なんとなく明里先輩に似てるわね。
あの積極的なところがそっくりだよな。
2人は内心そう思っていた。
「じゃあ、描こっか」
透がそう言って、3人は気持ちを切り替えてスケッチブックを開いた。
…と、優志が気が付いた。
「そういえば俺達、描くもの持ってないんじゃね―か?」
そう言われ、透と鈴良もはっとした。
「あ…………」
「………………」
黙る3人。
その中、鈴良は思いついた。
「そういえば、おじいさんにリュックもらったわよね。あの中に入ってるのかもしれないわ」
「ああ」
「なるほど」
透と優志は納得した。
「でも…、みんな部屋に置いてきちゃったわね」
鈴良が残念そうに言う。
3人ともスケッチブックしか持ってきていなかった。
「じゃあ、わたしがみんなのリュック持ってくるよ!」
透が張り切って立ち上がった。
「すぐ行ってくるから待ってて」
そんな透を見て、優志が声をかけた。
「あ、おい。1人で大丈夫かよ」
しかし、透は余裕の笑顔でうなずいた。
「平気、平気!わたし走るのは結構速いの」
そう言って、サ―ラの宿へと走っていった透。
優志はどちらかというと、1人で荷物を運ぶことを心配したのだが、透が駆けていく様子を見て感心した。
本当に早い。
そんな優志に、透と同じクラスでよく知ってる鈴良は説明した。
「透ちゃん、クラスで2番目に走るの速いのよ。それに美術部に入ってるけど、体力もちゃんとあるし」
「へえ」
優志はさらに感心した。
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