7 / 11
7. ストーカー宣言かな
しおりを挟む
◇
――転移だ。
そういえば彼といれば、移動楽だったな。指をぱちりと鳴らせば、目的地に到着するとか滅茶苦茶便利だった。ぜひ現実にいて欲しいと思うくらいに。一瞬で着いてしまうからね。
ゲームの中、惜しげもなく彼は私のために魔法を使ってくれていた。君が望むならとかなえてくれた。こんなの堕落するわと思うくらいに。
幻の美貌の魔法使いラフィラエル――ただ、他の攻略対象者や男性には関わらせてくれなかったけれど。
「お待たせしたね。はい、到着。そして、消毒。僕以外の男の目に晒されていたからね」
ふわっと何か爽やかな風のような感触がした。 そういえば、ゲームの中でも消毒とか、よくそういうのされていたかも。見たら減るとか言っていた時もあったっけな? 見ただけで減ったらびっくりだ。
そんなことを思いながら色々から気をそらそうとする。
そらしきれないけれどね。夢よ、何故こんなにリアルっぽいんだ? と愚痴りながら。
そして彼は掴んでいた手を離して、腕を広げて少し屈んで私に笑いかけてくる。
私ひとりに美貌を惜しみなく垂れ流す魔法使い。
一方の私は先程までの近すぎるくらい近距離の接触の影響で、顔が赤く染まったまま。体は硬直したまま動けない。ほぼ距離ゼロで、男性からこんな接触なんて今までなかったからね。
これってさっきまで抱き締められていたのかな?
ない。感触とか、なんとかよくわからない。情報が処理出来ない。
「我が愛しの君。迎えが遅くなって悪かったね。僕の美しい君をこれ以上他の奴らに見せていたくはなかったから、転移したよ」
近い近い。怖い怖い。すっととおった鼻筋とか、形良い唇とか、目を逸らそうとしても見える。長い黒髪がさらさらと私にかかったり、さっきまで抱き締められていたのだとか思ったり、匂いを感じたり……。
夢でも無理。耐性全くないの。かたまって動けない。
物語で読んだり、ゲームをしている訳じゃない感触が妙にリアルだ。夢よ、私の夢。なんでこんなに現実味があるの。夢なのに。
今だって滅茶苦茶綺麗な顔が近いし、息触れ合いそうに近く感じる。怖いくらい近い。つい視線をそらして、気持ちを逃がそうとする。全然だめだけれど――
「ちょっと失礼。本当に君は可愛いね」
微笑まれ、ふわっと、腕をまわされ軽々抱き上げられてソファに座らされた。
柔らかくて肌触りがいい。
「僕の可愛い人。ゆっくり息をすって、吐いて。ゆっくりでいいからね。大丈夫、大丈夫だから」
そんな声をかけてくれるその声がとても優しい声色で……。ほぅと少し大きく息をついた。
動けないのは、ばればれだったのだろう。ありがたいかもしれないけれど、これはこれで恥ずかしい。
私は目をあげた。視界には落ち着いた部屋。
特に豪華に見えるものでもないが、よく見れば細工の施されたアイボリーの壁、使いやすそうな家具は凝った作りをしていた。きっと高級なのだろう。装飾を見ているだけでも楽しい。
窓には落ち着いた深緑のカーテンがかかっている。
――見たことがあるような気がする?
どこかしていたゲームでみた彼の拠点の一つの屋敷の部屋に似ている気がした。
◇
しかし、この夢、いつ覚めるのだろう? とうとう私が書いていた話の登場人物もいなくなった。
ヒーローとヒロインびっくりしているだろうな。いや、周りの人達もか。
急に私達消えただろうし。
「今度の名はエルテンシアだね? 美しい名だ。僕の愛しい人。永遠の恋人。何処へでも僕は君を追いかけて捕まえるよ。君は僕のものだからね」
彼は、私に笑みを向けてくる。
笑みは綺麗だ。声も美声だ。スタイルもいいキラキラした美貌の魔法使いだ。
――そんな彼の、私へのストーカー宣言か? ストーカーですよと本人へ高らかに公言するスタイルなのか?
私の夢! 何言わせているの?!
――転移だ。
そういえば彼といれば、移動楽だったな。指をぱちりと鳴らせば、目的地に到着するとか滅茶苦茶便利だった。ぜひ現実にいて欲しいと思うくらいに。一瞬で着いてしまうからね。
ゲームの中、惜しげもなく彼は私のために魔法を使ってくれていた。君が望むならとかなえてくれた。こんなの堕落するわと思うくらいに。
幻の美貌の魔法使いラフィラエル――ただ、他の攻略対象者や男性には関わらせてくれなかったけれど。
「お待たせしたね。はい、到着。そして、消毒。僕以外の男の目に晒されていたからね」
ふわっと何か爽やかな風のような感触がした。 そういえば、ゲームの中でも消毒とか、よくそういうのされていたかも。見たら減るとか言っていた時もあったっけな? 見ただけで減ったらびっくりだ。
そんなことを思いながら色々から気をそらそうとする。
そらしきれないけれどね。夢よ、何故こんなにリアルっぽいんだ? と愚痴りながら。
そして彼は掴んでいた手を離して、腕を広げて少し屈んで私に笑いかけてくる。
私ひとりに美貌を惜しみなく垂れ流す魔法使い。
一方の私は先程までの近すぎるくらい近距離の接触の影響で、顔が赤く染まったまま。体は硬直したまま動けない。ほぼ距離ゼロで、男性からこんな接触なんて今までなかったからね。
これってさっきまで抱き締められていたのかな?
ない。感触とか、なんとかよくわからない。情報が処理出来ない。
「我が愛しの君。迎えが遅くなって悪かったね。僕の美しい君をこれ以上他の奴らに見せていたくはなかったから、転移したよ」
近い近い。怖い怖い。すっととおった鼻筋とか、形良い唇とか、目を逸らそうとしても見える。長い黒髪がさらさらと私にかかったり、さっきまで抱き締められていたのだとか思ったり、匂いを感じたり……。
夢でも無理。耐性全くないの。かたまって動けない。
物語で読んだり、ゲームをしている訳じゃない感触が妙にリアルだ。夢よ、私の夢。なんでこんなに現実味があるの。夢なのに。
今だって滅茶苦茶綺麗な顔が近いし、息触れ合いそうに近く感じる。怖いくらい近い。つい視線をそらして、気持ちを逃がそうとする。全然だめだけれど――
「ちょっと失礼。本当に君は可愛いね」
微笑まれ、ふわっと、腕をまわされ軽々抱き上げられてソファに座らされた。
柔らかくて肌触りがいい。
「僕の可愛い人。ゆっくり息をすって、吐いて。ゆっくりでいいからね。大丈夫、大丈夫だから」
そんな声をかけてくれるその声がとても優しい声色で……。ほぅと少し大きく息をついた。
動けないのは、ばればれだったのだろう。ありがたいかもしれないけれど、これはこれで恥ずかしい。
私は目をあげた。視界には落ち着いた部屋。
特に豪華に見えるものでもないが、よく見れば細工の施されたアイボリーの壁、使いやすそうな家具は凝った作りをしていた。きっと高級なのだろう。装飾を見ているだけでも楽しい。
窓には落ち着いた深緑のカーテンがかかっている。
――見たことがあるような気がする?
どこかしていたゲームでみた彼の拠点の一つの屋敷の部屋に似ている気がした。
◇
しかし、この夢、いつ覚めるのだろう? とうとう私が書いていた話の登場人物もいなくなった。
ヒーローとヒロインびっくりしているだろうな。いや、周りの人達もか。
急に私達消えただろうし。
「今度の名はエルテンシアだね? 美しい名だ。僕の愛しい人。永遠の恋人。何処へでも僕は君を追いかけて捕まえるよ。君は僕のものだからね」
彼は、私に笑みを向けてくる。
笑みは綺麗だ。声も美声だ。スタイルもいいキラキラした美貌の魔法使いだ。
――そんな彼の、私へのストーカー宣言か? ストーカーですよと本人へ高らかに公言するスタイルなのか?
私の夢! 何言わせているの?!
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
旦那様に離婚を突きつけられて身を引きましたが妊娠していました。
ゆらゆらぎ
恋愛
ある日、平民出身である侯爵夫人カトリーナは辺境へ行って二ヶ月間会っていない夫、ランドロフから執事を通して離縁届を突きつけられる。元の身分の差を考え気持ちを残しながらも大人しく身を引いたカトリーナ。
実家に戻り、兄の隣国行きについていくことになったが隣国アスファルタ王国に向かう旅の途中、急激に体調を崩したカトリーナは医師の診察を受けることに。
6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった
白雲八鈴
恋愛
私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。
もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。
ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。
番外編
謎の少女強襲編
彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。
私が成した事への清算に行きましょう。
炎国への旅路編
望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。
え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー!
*本編は完結済みです。
*誤字脱字は程々にあります。
*なろう様にも投稿させていただいております。
おさななじみの次期公爵に「あなたを愛するつもりはない」と言われるままにしたら挙動不審です
あなはにす
恋愛
伯爵令嬢セリアは、侯爵に嫁いだ姉にマウントをとられる日々。会えなくなった幼馴染とのあたたかい日々を心に過ごしていた。ある日、婚活のための夜会に参加し、得意のピアノを披露すると、幼馴染と再会し、次の日には公爵の幼馴染に求婚されることに。しかし、幼馴染には「あなたを愛するつもりはない」と言われ、相手の提示するルーティーンをただただこなす日々が始まり……?
全部、支払っていただきますわ
あくの
恋愛
第三王子エルネストに婚約破棄を宣言された伯爵令嬢リタ。王家から衆人環視の中での婚約破棄宣言や一方的な断罪に対して相応の慰謝料が払われた。
一息ついたリタは第三王子と共に自分を断罪した男爵令嬢ロミーにも慰謝料を請求する…
※設定ゆるふわです。雰囲気です。
断罪された公爵令嬢に手を差し伸べたのは、私の婚約者でした
カレイ
恋愛
子爵令嬢に陥れられ第二王子から婚約破棄を告げられたアンジェリカ公爵令嬢。第二王子が断罪しようとするも、証拠を突きつけて見事彼女の冤罪を晴らす男が現れた。男は公爵令嬢に跪き……
「この機会絶対に逃しません。ずっと前から貴方をお慕いしていましたんです。私と婚約して下さい!」
ええっ!あなた私の婚約者ですよね!?
殿下には既に奥様がいらっしゃる様なので私は消える事にします
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のアナスタシアは、毒を盛られて3年間眠り続けていた。そして3年後目を覚ますと、婚約者で王太子のルイスは親友のマルモットと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、専属メイドのリーナだと聞かされる。
真実を知ったアナスタシアは、深いショックを受ける。追い打ちをかける様に、家族からは役立たずと罵られ、ルイスからは側室として迎える準備をしていると告げられた。
そして輿入れ前日、マルモットから恐ろしい真実を聞かされたアナスタシアは、生きる希望を失い、着の身着のまま屋敷から逃げ出したのだが…
7万文字くらいのお話です。
よろしくお願いいたしますm(__)m
【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました
紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。
ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。
ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。
貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる